ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2009.04.10]
From Osaka -大阪-

新作『葵上』と好評だった『game』再演──石井潤ダンス・パフォーマンス

石井潤 演出・振付『葵上』『game=遊戯・楽しみ・戯れ』
石井潤ダンス・パフォーマンス
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今回の石井潤の新作は『葵上』。紫式部の『源氏物語』を現代に改作した三島由紀夫の戯曲(『近代能楽集』)をもとにした20分程度の作品。女(六条)を寺田みさこ、男の妻(葵)を中村美佳、男(光)を中田一史、昭和初期を思わせるロングスカートの看護婦を植木明日香、石井千春、夏目美和子が踊った。
大きな斜めのベッド──病室だ。病に苦しむ妻(葵)と、どこからともなく現れる妖艶な女(六条)。その間で苦悩する男(光)。それぞれのダンサーの存在感も素晴らしく見応えのあるダンスだった。ただ、現代の服装で踊られることもあり、これを『葵上』と聞かずに観たら、男と病の妻と、誘惑し嫉妬する第2の女……というだけに受け取ってしまったかもしれない。源氏物語に描かれた物語がそれだけ現代にも通じる普遍的なシュチュエーションだとも言えるが、この作品としてはそれでよかったのだろうか? 何かちょっとしたポイントが変わるだけで、演劇などでは出しにくいダンスだからこそ出せる形で、“生身の浮気相手”ではなく“生き霊”としての〈六条〉がこの振付者、このダンサーならもっと描けるのではないかという気がした。

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後半は'07年に初演された『game=遊戯・楽しみ・戯れ』の再演。さまざまなシーンを繋ぐオムニバス作品だ。最初、安田孝が舞台上のベンチに座り、(おそらく本物の)舞台監督さんが、袖にひっぱていく時に「今日は自由席って……」などというところから、楽しいペースで引き込んでくれる舞台。全員、セーラー服で自己紹介したり、男性2人が急にシリアスに“御前試合”をはじめたり、風船を体じゅうにつけて踊ったり、美しいロングドレスの女性たちと紳士たちの優雅なノスタルジックなシーンがあったり、庭のお風呂で泡を派手に飛ばしながら入浴する明るいシーンがあったり。
“男と女と男”という中村美佳と桑田充と北村俊介3人のシーンでは、女が男に背中の後ろで手を組まされ、男に許されるまでそれを離さずに踊る。後ろ手で組んだまま踊る中村美佳の踊りの迫力も素晴らしく、「そんなことあるよね、世の中には」と心で呟きながら強くひきこまれた。不条理でも従ってしまうこと──それは、悲しいけれど今も世界にたくさんあるのだろう。
最後のシーンでは、全員で舞台中にろうそくをおいて、争いのない、愛にあふれた、平和な世界を願う。脈絡がないように見えて、この作品のシーンすべては、“争い”か“愛”どちらかに関係していたのか?──そしてすべては愛にあふれた平和を願う思いに繋がっていたのか、そんな気がした。
(2009年3月5日 京都府立府民ホールアルティ)

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