ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2009.01.13]
From Nagoya -名古屋-

「れっつ高校だんさーず 年末ダンスパフォーマンス公演」
~ダンスライフフェスティバル in TAJIMI

 ダンスライフフェスティバル2008の一貫として、岐阜県多治見市にて「れっつ高校だんさーず」公演が開催された。ダンスを限られた人々のための 特別なアートとして考えるのではなく、すべての人々にとって開かれたものとしてとらえ、ダンスと社会の関係を考えてみようという新たな取り組みだ。
そもそも、現代社会の様々な問題の中で、特に重要視されている「コミュニケーション力」「創造力」などの能力は、コミュニティアートの先進国である英国 では、ダンスを体験するプロセスのなかでこそ最も有効であると認識されているという。日本でも、障害のある方へのダンスでのアプローチや更正施設での取り 組みなど、ダンスを取り入れたアートセラピー的な試みはこれまでにも津々浦々の方々の地道な活動として行われてきている。しかしここまで全国的な規模で行 われたのははじめてではないだろうか。

  今回のダンスライフフェスティバル2008は、全国各地の老若男女、様々な方々を対象にして各地で開催されているが、多治見市が取り組んだのは、高校生と 一緒にダンスを創造することだ。コンテンポラリー・ダンスの2人の振付家、山田うんとKENTAROが、総勢44名の高校生たちと数回のワークショップを 重ねて、作品を創り上げた。
山田うんが名古屋市内の高校ダンス部の女子学生たちと取り組んだ作品は『ワルツノバラ』。ゆっくりとした音楽の中、セーラー服姿の21名が整列してい る。ちょっとパラパラを想像させるようなユニークな手の動きが印象的な幕明けだ。音楽のテンポが上がると、5~6名ごとのユニゾンで中央に走り出ては、ミ ニスカートをものともせずに床に転がって走り去る。エネルギッシュで溌剌した笑顔が弾ける最初のシーンから一転すると、放課後のきっといつもの風景だろう と想像させるのんびりとした時間が描かれていく。ゆっくりと歩いたり、座ったり、そこには時折、思春期特有のアンニュイ表情を見せる高校生の日常が描かれ ているようだ。ピアノ版『野ばら』の音楽が流れるラストシーン。指揮者の真似をしたり、リズムに呼応したり、音楽と戯れるような動きで、体と遊ぶ面白さを 体験させていく。一見、組み体操を想起させるような群舞から、個性的なアンサンブルまで、山田は多様な構成、そして、ユニークな動きで、女子高生の様々な 表情を引き出すことに成功した。

撮影:菱川浩二

  次に、山田うんと今回の作品でアシスタントを務めた伊藤知奈美による新作デュオ『ソツギョウ』。無音の中、舞台上手に斜めに並行に座るワンピース姿の2 人。いったん掃けたダンサーたちは『シャボン玉』の歌詞が流れるのに合わせて、両袖から登場。それぞれが鍛えられた身体で丁寧な踊りを見せる。柔軟性に富 んだ背中のバネを生かした山田の動きは、空間に強い緊張感をもたらしていく。危ういオフバランスの動きが連なる。バランスをとるかどうかのギリギリの動き が、繊細な少女の心象を表現しているようだ。伊藤もすらりと伸びた肢体を生かし、空間に動きの軌跡を強く刻み付けた。つかず離れずの2人の微妙な関係が、 印象的な良質なデュオだった。

 続いて、KENTAROと多治見の高校生とで取り組んだ作品『現在進行 KEY  WORD』が上演された。山田の作品が、個人差はあれ、ダンス経験のある学生により、より完成度の高い作品づくりに挑戦したものだとしたら、こちらは、地 域の高校生の個性を生かすことに重きを置いているようだ。元々ストリート・ダンサーであったKENTAROの周りに集まってきた、ヒップホップなどに関心 の高い自由な高校生たちが、思い思いの服装で舞台に立っている。ダンスミュージックに合わせて、元気に楽しくヒップホップを踊る。一列に整列した生徒たち の間では、交代に短くてもオリジナルのソロダンスが披露される。KENTAROはこの作品で、かならず全員のソロを入れようと試みたとのこと。逆光に反射 して浮かびあがる彼らのシルエットが印象的だ。ストリート的な動きと創作ダンス的な動きをほどよくミックスして、今時の高校生らしい作品を創り上げた。

  最後は、KENTARO自身のソロ『恋愛inprovisation』。様々な音楽をコラージュして、その間に自らのダンスを滑り込ませていく。ストリー ト・ダンスのように音楽のリズムに乗るだけではなく、ヒップホップやコンテンポラリーと、その動きは自由自在、音楽の新しい解釈を見ているかのような音の 外し方が絶妙で痛快。そんな中でも、とにかく「これでもか」とヒップホップの技を執拗に見せていく場面も作り、振付けられた学生たちは彼の動きに目が釘付 け。振付の先生のプロフェッショナルな踊りに、あらためて驚いている学生たち。一筋縄にはいかない個性的な高校生たちが数日間の作品創作を通して得ること ができたものは、決して少なくない。いや彼らの将来に大きな影響を与えるに違いない、そう思えるステージだった。
(2008年12月6日 多治見市文化会館大ホール)