ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2009.01.13]
From Osaka -大阪-

2日間違った演出での上演──貞松・浜田バレエ『くるみ割り人形』

貞松・浜田バレエ『くるみ割り人形』二つの演出

  神戸の街の12月の恒例行事、貞松・浜田バレエの『くるみ割り人形』、2日間の公演両方を観た。この『くるみ割り人形』を両日観たくなるのには訳がある。 それぞれ演出が違うのだ。20日は、長年上演され続けているクララが金平糖のグラン・パ・ド・ドゥまでを踊る “お菓子の国ヴァージョン”、21日は、今回4度目の上演になる、クララと王子をお伽の国の女王と王が迎える “お伽の国ヴァージョン”。それぞれ、お菓子の国、お伽の国の設定に合わせて細かな工夫が凝らされている。また今年は、主要な役に初役のダンサーが多く、 そこにも興味をそそられた。
 

 20日の “お菓子の国ヴァージョン”、昨年までは上村未香&貞松正一郎で上演されてきたのだが、今年は正木志保と武藤天華。2人とも、大きな舞台の主役を何度も経 験しているダンサー、初役とは言え、さすがに安心して観ることができた。正木のクララは、嬉しさいっぱいの溌剌としたものを感じさせる存在、武藤の王子は マイムの表情の変化が素直で若々しい印象。2人とも元気でフレッシュな爽やかさを感じさせて良かった。この日の花のワルツの中心、花の王女と花の王子は、 上村未香と芦内雄二郎、柔らかくて優しい雰囲気の良いシーンに仕上がっていた。

  21日のクララは安原梨乃、チャーミングで表情豊か、お伽の国を旅するクララにぴったり、彼女にとても適した役だと感じた。ちょっと気の弱いフリッツとい う設定で踊った水城卓哉も安原と良く合っていた。王子は弓場亮太、彼のことは他の舞台でも良く目にするのだが、ここ数年成長著しいダンサー、今回は若干失 敗もあったものの、大役を良くこなしていたと思う。

  そして雪のシーン、20日も感じたことだが、このバレエ団の雪のシーンはとてもレベルが高い。コール・ド・バレエの隅々まで良いダンサーが揃ってスピー ディに創り上げる雪の世界。20日は何度も踊っている山口益加がベテランらしく川村康二とともに雪の女王&王を、この21日は初役の廣岡奈美が川村と踊 り、廣岡の伸びやかな美しいジュテが目に焼きつく素晴らしいシーンに仕上がっていた。

 グラン・パ・ドゥ・ドゥは、お伽の国の女王 と王、竹中優花とアンドリュー・エルフィンストン。華やかで優雅な品の良い踊りをする2人、クラシック・バレエの主役として申し分がないように思える。竹 中の金平糖のヴァリエーションは、あの音をそのまま体現したような“ゆらぎ”の魅力とでも言えばいいだろうか?──そんな魅力まで感じさせたし、アンド リューは王らしくありながらも終始優しい笑顔を絶やさない踊りに好感が持てた。

 次はどんな組み合わせのキャストで舞台を観せてもらえるのだろう、とワクワクする。ソリストたちの充実をつくづく感じた。
(2008年12月20日、21日 神戸文化ホール・大ホール)