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星野 聖子 text by Seiko Hoshino 
[2015.05.11]
From Nagoya -名古屋-

技術力・表現力に優れたダンサーたちが盛り上げたフレッシュバレエコンサート

川口節子バレエ団
「フレッシュバレエコンサート2015」

名古屋を代表するバレエ団の一つ、川口節子バレエ団が「フレッシュバレエコンサート2015」を上演した。第1部・2部を合わせて古典バレエが38作品、創作が2作品というプログラム。出演者は小学生のジュニアダンサーからベテランのシニアダンサーまでの総勢39名。1998年に第1回「フレッシュバレエコンサート」が開催されて以来、今回で18回目である。
川口バレエ団の公演には毎回必ずどこかで観客の心を打つ演出や場面があり、非常に個性豊かだ。今回の「バレエコンサート」でも、やはり記憶に残る場面に出会うことができた。

nagoya1505a_05.jpg 「見上げてごらん夜空の星を」
撮影:杉原一馬(すべて)

オープニングでは1部・2部の出演者たちが爽やかに登場。春にふさわしく活力に溢れ、快活なステップでコンサートの始まりを告げた。第1部は、『ドン・キホーテ』よりキューピットのヴァリエーションを踊る岩瀬茉那でスタート。彼女はまだジュニア世代のダンサーの一人だ。一番初めの出演者ということで緊張もしたと思うが、踊りは最初から最後まで安定しており、演技は堂々としたもの。初々しい笑顔が印象的だった。また、『ドン・キホーテ』の第1幕よりキトリを踊った太田沙樹は情熱的な演技で観客の心を掴んだ。颯爽としたステップ、スピード感のある回転、しなやかなジャンプ、いずれも丁寧で正確だった。第1部では他にも『ジゼル』や『白鳥の湖』『眠りの森の美女』などのソロヴァリエーションが披露され、ラストの演目は『ドン・キホーテ』第3幕のボレロ。安藤可織・中弥智博(松岡伶子バレエ団)ペアが踊った。二人は落ち着きのある、麗しいボレロを展開。安藤の身のこなしは柔らかく、優雅だった。中弥は洗練された動きで場を引き締めた。第1部で発表された創作作品は川口節子振付の『見上げてごらん夜の星を』。歌は坂本九。出演者は加藤秀隆、小竹志和、佐藤玲、佐古流綺の4人のジュニアたち。彼らは坂本九の歌声に乗せて、ステージの上を穏やかに駆け回った。そして立ち止まったかと思うと、まるで本当に星を眺めて祈るかのような仕草をする。その様子が微笑ましく、ほろりとさせられた。希望を持って生きることの大切さを思い出させてくれる作品だった。

nagoya1505a_01.jpg 「ドン・キホーテ」よりキューピット nagoya1505a_02.jpg 「ドン・キホーテ」よりキトリ nagoya1505a_06.jpg 「ドン・キホーテ」よりボレロ
nagoya1505a_03.jpg Part 1 フィナーレ 撮影:杉原一馬

第2部でも『コッペリア』『パリの炎』『ダイアナとアクティオン』を含む古典ヴァリエーションが披露された。
14番目に登場した野黒美拓夢が挑んだのは『海賊』の男性ヴァリエーション。跳躍力があり、技術レベルも高い。彼の動きから訓練を積み重ねているのが伝わった。『コッペリア』第1幕のスワニルダに扮したのは藤井くるみ。めりはりの効いたステップとバランスの取れた回転が印象深い。表情も豊かで可愛らしいスワニルダだった。この部の最後を飾ったのは野黒美茉夢・中弥智博ペアの『グラン・パ・クラシック』パ・ド・ドゥ。野黒美にとってパ・ド・ドゥを踊るのは今回が初めて。中弥の紳士的なサポートを受けながら、若さと気品に満ちたバレエを踊った。彼女はすでに基礎をしっかりと身につけた素晴らしいダンサーだが、今後さらに練習と経験を積むことで、ますます深みのあるダンサーに成長しそうだ。

nagoya1505a_07.jpg 「海賊」 nagoya1505a_08.jpg 「コッペリア」よりスワニルダ nagoya1505a_10.jpg 「グラン・パ・クラシック」
nagoya1505a_09.jpg 「パストラル ダンス」

第2部の創作作品は松村一葉(団員講師)振付の『パストラル ダンス』。曲はヴィヴァルディ。ヴェテランの女性ダンサーたち、安藤可織、中谷友香、太田沙樹、川瀬莉奈、宮本佳奈の5人が登場した。衣装は、上がベージュとグレーを合わせたような色のタートルネックで、下は春らしいパステルカラーのチュール。一瞬、ふんわりとゆったりした踊りのイメージを抱いたのだが、実は活発に動く場面が多かった。フェミニンな印象を与えつつもダイナミックに踊るという予想外の振付は、見ていて楽しいものだった。

技術力と表現力を兼ね備えたダンサーたちが数多く存在する川口節子バレエ団。出演者たちはバレエ経験の長短にかかわらず、皆自信を持ち、バレエを通して精一杯自分を表現する。「フレッシュバレエコンサート」は、ジュニアクラスの生徒たちもソロの古典ヴァリエーションに挑戦できる貴重な場だ。彼らの踊りから、本公演に向けて大きな目的意識を持って努力しているのがわかった。実は、本公演のためには松村一葉主導の特別なプロジェクトチームまで組まれたとのこと。生徒たちは、上級団員から熱心な個人指導を受けることができたという。リハーサルを何度も繰り返し、相当に練習したのだろう。その過程で指導者と生徒の間に絆が深まり、精神的にも成長し、結果としてダンサーとしてのレベルアップにつながったのではないだろうか。本公演を観て、心からそう感じた。
(2015年4月5日  長久手文化の家 森のホール)

nagoya1505a_04.jpg Part 2 フィナーレ 撮影:杉原一馬(すべて)