ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2012.04.10]
From Nagoya -名古屋-

新しく咲いた3つの花、モダンダンスで描く歴史上の女性たち

「花より華らしく・・・芸術に生きた女・女・女」
振付:近藤夕希代『夢追花』、振付:倉知可英『Ma Sad Yacco~ 凛として咲くが如く~』、振付:服部由香里『未完の花』 

東海地方で活動する世代の異なる3人の女性振付家が、地元にゆかりのある著名な3人の女性をテーマに創作したモダンダンス公演が、名古屋市文化振興事業団と(社)現代舞踊協会中部支部の共催事業として開催された。

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テーマに選ばれた3人の女性から、それぞれ「花」をイメージして30分ほどの作品に振付けることで、混乱期を激しく強く生き抜けた女性たちの生き様を表現しようとしたという。
3人の女性像から自由にイメージを膨らませると共に、どこまで今日的な解釈や手法を付加することができるか、それにより古今が融合したどのような女性像が提示されているか、その点に注目して観賞した。
ヨーロッパへ渡った舞台女優の「花子」をテーマに「うめ」をイメージしたのは、ヒデ・ダンス・ラボ所属の近藤夕希代。『夢追花』と題した作品は、全体を花幻、夢の中へ、梅一輪、ふるさとの4キーワードで構成し、近藤のソロと5人のアンサンブルを中心に展開。円や幾何学的なフォーメーションをスピーディーに組み合せることで、ヨーロッパで生きた花子の揺れる心情を表現した。ダンサーたちの柔軟性を生かしたポーズや、舞台美術の盾板の後ろから顔を突き出したり、体を屈曲させて身体と美術をオーバーラップさせて見せるフォルム等が、ロダンのモデルを務めたこともある花子の造形との関係を示唆しているかのようで効果的であった。

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日本で最初の女優である「川上貞奴」をテーマにした倉知可英は、「つばき」をイメージして創作。全体を極力シンプルにすることで、本質だけを際立たせた粋な作品に仕上がった。貞奴の回想風景から始まり、恋、女優として貞奴、そして現在の倉知自身へと時間軸に沿って展開されている。そこを貫く縦軸は、様々な編曲で聴かせるエリック・サティーなどの音楽。そして恋人の桃介として登場するだけでなく、着物を掲げて二人羽織や黒子的な役割も果たす少年王者館のダンサー池田遼が横軸を担う。
舞台奥から登場した着物姿の倉知は、ゆっくりと中央まで進み、そこで静かに正座する。また円形劇場であるステージの周囲を歩きながら着物の中から不気味に腕を突き出す。さらに桃介と2人、ステージの周りを鬼ごっこのようにただただ駆け回る。これらすべての動きが極めて抑制された表現であるがゆえ、後半に出現する激しいダンスがより効果的に爆発する。この慎重な時間の組み立てこそがこの作品の成功の鍵となった。

最後を飾ったのは、女流洋画家として初の文化功労者の「三岸節子」をテーマにした服部由香里の作品で、「さくら」をイメージしたという。タイトルは『未完の花』。ダンサー自身が可動式のハンガーラックを操りながら空間の揺らぎを演出したり、鮮やかな黄色の大布をもって登場して空間を変容させる。鬼太鼓座の吉田敬洋による竹で創作されたパーカッションや笛の演奏、激しく点滅する照明がそこに緩急をつけ、それらをなお一層引き立たせる。あらゆる手法を用いて動乱期の女性の葛藤を描き出そうと試みるも、いささか詰め込みすぎな感も否めない。場面によっては要素をより限定することでより明瞭に見えてくるものもあったかもしれない。
どの作品も困難な時代を果敢に突き抜けた女性たちの強さや苦悩が描かれていると同時に、各振付家が思う女性像を描いていて、総じて作品としての完成度は高い。ただ、これを現代的な作品として成立させようとした場合、日本の歴史上の人物という固定観念から自由になることも必要だろう。今回の作品では、太鼓や琴、三味線を使用した音楽や、着物や布などの日本の伝統に直結するイメージにやや固執し過ぎているようにも感じた。表現する時代に寄り添うだけではなく、逆に今の時代に引き上げることで、同時代でダンスに取り組むことの意義もまた明白になるのではないだろうか。
(2012年3月17日 名古屋市千種文化小劇場)

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