ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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亀田 恵子 text by Keiko Kameda 
[2012.03.12]
From Nagoya -名古屋-

あいちトリエンナーレを契機に新たな展開を予感させる3つのダンス企画

『ハポンDEダンス/ダ・・ン・・スースースー』『ちくさ・ザ・ミュージアム』

愛知のダンスシーンは、ここ1、2年で新しい動きが見えはじめている。例えば、これまで主にライブハウスとして認識されていた場所で、ダンサー主導によるダンス企画が立ちあげられたり、ライブハウスのオーナー自らがミュージシャンとダンサーのコラボレーション企画を立ち上げるといった動きが生まれている。さらに比較的小規模な地域の公立劇場でも興味深い変化が生まれ始めている。これらの動きは、一見無関係のようにも見えるが、1つの共通点がみられるように思う。
愛知では2010年に『あいちトリエンナーレ2010』が開催され、美術だけでなくパフォーミング・アーツも活発に上演された。それらは大型劇場の空間に限定されることなく、街中や路上といった思いがけない場所で市民がダンスにふれる機会をつくった。さらに、あいちトリエンナーレで上演された作品の多くは美術や音楽とのコラボレーション(複合的な)作品が多かった。こうした体験から、パフォーミング・アーツに対する市民(地元で活動するダンサーや劇場関係者も含む)の意識は大きく変えられたのではないだろうか。パフォーミング・アーツの上演に対する可能性が広げられたり、コラボレーションによる関わる人の広がり(相乗効果ともいえる)への期待などである。
今回は、名古屋でこうした動きをの感じられるダンス企画を3つご紹介したい。

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『ハポンDEダンスVol.6』『ダ・・ン・・スースースーvol.8』
この2つのダンス企画は、ともにK.D.ハポン-空き地-(名古屋市中区)という場所で開催されている。この場所は画家のアトリエとしてスタートしているが、現オーナーが引き継いでからは音楽企画が多く開催されるようになり、現在に至っている。
『ハポンDEダンス』は、名古屋を拠点に活動するダンサー・鈴村由紀が「もっと気軽に作品を発表出来る場を」との想いでオーガナイズしている企画で、これまでに全6回を開催し、参加したダンサーは毎回3〜4組で約20組を数える。次回出演するダンサーについては、参加したダンサーがそれぞれ自分で探してバトンタッチする“リレー形式”で繋がれている。
シリーズ企画は、主催者のネットワークに依ることも多く、ときに枯渇を招くこともあるが、この企画では出演したダンサーがそれぞれ知り合いを紹介していくため、主催者のネットワークをこえて関わる人が広がっている。また、この企画の興味深い点はバラエティに富んだ作品が集まるところだろう。劇場では目にすることの少ない個性の強い作品や、実験的な作品、しばらくダンスから離れていたダンサーの復帰、新人ダンサーのデビューといったさまざまな作品が上演されるのだ。観客のニーズというよりは、ダンサー自らが作品づくりのために開拓した場という印象があるが、参加者に門戸が開かれているため、独りよがりな印象は薄い。『ダ・・ン・・スースースー』は、K.D.ハポンのオーナー森田太郎・自らが企画するシリーズ。森田は自らも幻燈ダンスholonのダンサーとしてパフォーマンスを行う人物であるが、オーナーとして多くの音楽企画を自らの目で見てきた人物でもある。
『ダ・・ン・・スースースー』は、彼の目(耳?)で見出したミュージシャンとダンサーがコラボレーションする場として設定されており、第8回目となった2月10日の公演では、Θz(セッズ):ひろこ×聖澤総(アナログシンセサイザー) 、黒野靖子(KURONOZ)×井藤雄一(ラップトップ)、るっち(太めパフォーマンス)×小野浩輝(エレクトロニカ)、江藤早織×金子ユキ(インド・ヴァイオリン)といったメンバーが参加した。それぞれのダンサーの魅力や個性がミュージシャンとの組み合わせによって広がったり、新たに開拓されたりといった相乗効果が大きく、充実した内容だった。『ハポンDEダンス』と『ダ・・ン・・スースースー』の出演者が重なり合うこともあり、これら2つの企画が有機的な連鎖を生みだしている点は、今後の新たな発展性を予感させる。
(2012年2月10日ほか ハポン)

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『ちくさ・ザ・ミュージアム』
愛知でのこれまでのダンス公演は(特に先鋭的な作品は)、主に愛知県芸術劇場が主流だった。だが、トリエンナーレと前後して、地域の劇場でもダンス企画が打たれるようになってきており、且つ内容も美術や音楽が絡み合う“複合的”な作品が多くなっているように思う。
『ちくさ・ザ・ミュージム』は、名古屋市千種区にある中規模劇場「千種文化小劇場(通称ちくさ座)」で主催した企画だが、“ツタをまとった円形劇場”として地域住民に親しまれている。これまでも円形劇場という独自の空間を活かし、ダンスや演劇、ライブ、能楽といったさまざまなパフォーミング・アーツが展開されてきた。今回は劇場が独自に築いてきたネットワークを活用し、3日間に渡る「お祭り」として実験的な試みを行っている。書道やボディペイント、お菓子デコレーションのような子ども向けのワークショップなどがロビーで開催され、東北復興支援のドキュメント映画上映などもあわせて行われている。
3日目にあたる2月12日には、1980円(音楽ユニット)×Kaeline(パフォーマンス)、猫足ウィローズ(七ツ寺共同スタジオに所属する市民劇団)、THE GILLY(バンド)×ヤマダサダオミ(映像)、GONNA(マリンバと和太鼓の演奏グループ)×HIEI(DJ)×倉知可英(コンテンポラリーダンス)らが熱気あるパフォーマンスをくり広げた。何れの参加者も名古屋を拠点にしたり、出身が名古屋といったメンバーで、地元アーティストの層の厚さを感じさせるものだった。1980円とKaelineの組み合わせは、昨年のアートラボあいち(トリエンナーレの流れを継承する理念の元に運用されている施設)でのコラボレーションを機に『横浜トリエンナーレ2011』の名古屋島という企画にも参加し、美術・音楽・パフォーミングアーツが交錯する存在として注目されている。会場の盛況ぶりからみて、新たな試みの第1ステップは、先ずは成功といって良いだろう。
愛知はバレエ王国として知られる地域であるが、その様子は緩やかながら変化しはじめているようだ。今後は一層こうした傾向が強くなるのではないだろうか。何れにしてもバレエを含め、ダンスに関わる場が豊かに広がっていくことは大いに喜ばしいことだと思う。今後の動向に注目していきたい。
(2012年2月11日、12日 千種文化小劇場)

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