ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2011.07.11]
From Nagoya -名古屋-

少年王者舘の夕沈による懐かしくも不思議なダンスオペラ

演出・振付・出演:夕沈 ハポンフェスティバル『台風キッド』
少年王者舘
nagoya1107b04.jpg

少年王者舘の女優・ダンサー・振付家の夕沈が、自ら企画する始めてのダンス公演が鶴舞駅の高架下にあるユニークなライブハウスで開催された。93年から少年王者舘に参加している夕沈は、2000年頃より劇団の振付も担当している。今回のソロダンスプロジェクトでは共演に少年王者舘で映像を担当する浜嶋将裕とイラストレーターのヨコヤマ茂未、そして全編生演奏で特有の作品世界を創り出すのに貢献していたJaajaが参加した。
タイトル『台風キッド』の命名は少年王者舘を主宰する天野天街。これは台風を飼う少女のお話で、常識的には恐怖となるだろう台風の存在をまるでペットのように大切に籠に閉まっておくという発想が新鮮だ。自然に恐れを抱きながらも、寄り添いながら坦々と生きていた時代。そんなテーマと懐かしさも感じさせる演出は、やはり少年王者舘の世界観が色濃く残る。
 

nagoya1107b06.jpg

激しく吹きすさぶ風、木造のライブハウスには台風の音が鳴り響く。2階屋根裏部屋風の空間から夕沈が登場。右手に配置された音楽家たち(ギター、パーカッション、チェロ、歌など)が行進曲で主役の登場を後押しする。少女はひとり木の葉や鳥かごと戯れている。しばらくするとゲストの森田太朗が出現。2階に上った森田は、釣りをするかのように糸に繋がった葉っぱを階下に投げ、少女を覗き見る。少女は木の葉につられて、右往左往。見えない力によって小部屋に住む少女の世界が操られていることを想起させる印象的な場面だ。
この日のもう一人のゲスト、夕沈と同じ白のワンピース姿で現れたのは安藤鮎子。安藤は夕沈と共に手鏡で遊びはじめる。顔を眺めたかと思えば、会場の壁に向けて光のビームを発射。壁には光の輪が幾重にも重なる。そして2人の少女は一緒に踊る。腕をまっすぐに伸ばし、弧を描きながら、上下左右に空を切る。回る、跳ねる、しゃがむ。その踊りはシンプルな動きの組み合わせでまるで機械仕掛けの人形。あるときは2人で、ある時は夕沈のソロで、空間を掻き回すかのような踊りは、遊びの延長のように続いていく。
全編を通して小道具の使い方が秀逸だ。突然、壁際から落ちてくる鍋たち。雨漏りをその鍋で受け、鍋をもってくるくる回る夕沈。部屋の片隅に掛けられた鳥かごもまた光ったり、震えたりと、まるで籠や捕まった台風そのものに意思があるかのような動きをみせる。この家では台風も、鍋さえも意思をもった存在として扱われている。それはまるで「もの」に魂が宿ると考えていた日本古来の物の怪の姿か。
場面転換も目まぐるしく、おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかな音楽や、楽しく可愛らしいイラストを映し出す映像が時間軸を構成。道路に繋がった搬入口の扉を開け閉めしたり、建物の階段などの構造を利用した演出も効果的だ。身体だけが突出するわけではなく、あらゆる要素が並置されるごちゃ混ぜ感がこの作品の持ち味だろう。様々なジャンルのアーティストが対等な関係で共同することで、融和度の高いユニークな作品が出現した。
(2011年6月20日 鶴舞高架下ハポン劇場)
日替わりゲスト:安藤鮎子、森田太朗(別の日のゲスト:石丸だいこ 雪港 水元汽色)音楽:Jaaja,中西健雄

nagoya1107b01.jpg nagoya1107b02.jpg nagoya1107b03.jpg
nagoya1107b05.jpg nagoya1107b07.jpg

撮影:羽鳥直志
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。