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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2010.04.12]
From Nagoya -名古屋-

伊藤キムの「今」が見られた知立市公演のダンス3作品

伊藤キムが振付「岡崎サリー2010」
伊藤キムを振付「伊藤キム まず電気を消します!」
カンパニー作品「ブチ込み、ヤミ鍋、舌ツヅミ」
パティオダンス公演2010 伊藤キムを知ろう!

愛知県出身の伊藤キムが久しぶりに出身地・知立でダンス公演を行った。近年では自らの活動を自身のクリエイションから教育へと移しており、今回もダンス公演とはいっても、彼の作品世界を見せるのではなく、彼の活動をそのままフォーカスする内容となっていた。
伊藤キム振付『岡崎サリー2010』は、10年前の『サリー』を岡崎の光が丘女子高等学校ダンス部に再振付した作品。セーラー服を身に纏ったダンサーたちは、まさに等身大の若い女子高生そのものだ。緩急の効いた動きで舞台を牽引していく。毎日共にダンスのレッスンに励む高校ダンサーたちにとって、動きをぴたりと合わせるユニゾンはお手のもの。学校ダンスで培われた身体能力と、キムのような個性的な振付がマッチした傑作に仕上がった。学校を卒業するとダンスから離れてしまう学生も多いと聞くが、こんな体験ができたら、クラブ活動を超えて、卒業もどっぷりとダンスにはまってしまうかもしれない。
『伊藤キム まず電気を消します!』は、名古屋の若手ダンスカンパニー、アフターイマージュが伊藤キムを振付けしたという稀有な企画。ベテラン振付家を若手が振付けるなんて、なかなかそう簡単にはできないだろうが、地域で精力的に活動をする若手ダンサーをバックアップしたいとのキムの好意によって実現。キムを中心にアフターイマージュの男性ダンサー4名が出演した。20代半ばの粋の良い男たちがキムと戯れる様は、やんちゃな男同士がじゃれあっているようにもみえる。はぐれ鳥のようなキムの強烈な存在感をいかし、メリハリの利いたエネルギッシュな作品を創り上げた。照明を効果的に生かしたトリエユウスケの演出もユニークで、光でキムを追い詰めたり、おちょくったりと、コンテンポラリー・ダンスになじみのない観客層もひきつける工夫が満載であった。
最後の『ブチ込み、ヤミ鍋、舌ツヅミ』は、伊藤キムの主宰する輝く未来のメンバーによる作品。ダンサーたちが呼吸をテーマに「吸う」と「吐く」を合わせながら、即興的に作品を立ち上げていったという。身体表現に真正面から取り組む姿には感心するものの、少しコンセプチュアルになりすぎた感が否めない。全体的に単調で、どこに行こうとしているのかわからず、やや迷走気味にも感じた。知立で行う公演としては、内省的過ぎたのかもしれない。ダンサーが何度も創作を繰り返し、また議論などを重なることでフィードバックをして、さらに身体表現を追及していく輝く未来の姿勢には大いに共感するし、キムの高い志についていこうとするダンサーたちにも敬意を表する。彼らの今後の活躍を期待したい。
(2010年 3月20日 知立市文化会館花しょうぶホール)

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(C)中川幸作
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。

[Act1] 伊藤キムが振付「岡崎サリー2010」
出演:光が丘女子高等学校ダンス部 振付:伊藤キム

[Act2] 伊藤キムを振付「伊藤キム まず電気を消します!」
出演:伊藤キム、afterimage 振付:afterimage

[Act3] カンパニー作品「ブチ込み、ヤミ鍋、舌ツヅミ」
出演・振付:輝く未来(伊藤キム主宰 ダンスカンパニー)