ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2009.11.10]
From Nagoya -名古屋-

観客も巻き込む地方ならではの公演

文化フォーラム春日井:踊りに行くぜ!!
吾妻琳:振付・出演『幽霊スポット』
Abe"M"ARIA×北村成美『FOUNTAIN』
美音異星人『corporeal cyborg』
んまつーポス『”Crossing over”する身体』
かすがいサボ10(テン)ダンサーズ『Countin』(振付:山田珠実)
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NPO法人JCDNが地域の劇場や制作者たちと企画する全国パフォーマンススペース間ダンス巡回プロジェクト「踊りに行くぜ!!」が今年で10年目を迎えた。巡回公演の皮切りは、同じく10周年を迎えた愛知県の春日井市にある文化フォーラム春日井だ。
2つの10周年と春日井の出荷量ナンバーワンのサボテンをかけた「サボ10(テン)ダンサーズ」による市民作品を創作すると共に、アクティングエリアを変えた観客移動型の公演にするなど、春日井初公演は、地方ならではの工夫に溢れたパフォーマンスとなった。
公共空間、交流アトリウムを半円形に観客が取り囲む。そこ に、マスクを被り、ギブスで覆われた美音異星人が登場。自作の美音マシンと呼ばれる巨大扇風機のような機械のエアコンホースが高速で回転している中、 全身ピンクの女性が不自然に移動する。(実は、彼女らは春日井市の職員だ と、アフタートークで暴露)一見、子供向けのアトラクション会場に紛れ込んでしまったのか、と思うような異様な空間が出現する。『corporeal cyborg』 と題された作品
は、身体を拘束することで新しい身体性を生み出そうという試みらしい。筋肉の構造に沿って制作・装着されたマシンとリアルな身体の対比は、サイボーグ的だが妙に人間ぽっくて、今ここにいる生身の人間が、リアルタイムで進化していくプロセスのように思えた。
 

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大学在学中に宮崎県を拠点に創作活動を始めた「んまつーポス」は、仮設舞台上で『”Crossing over”する身体』を上演。スポーツマンをもじったグループ名から想像できるように、野球やバドミントンといったスポーツ畑出身の2人組みだ。それぞれが、また時には2人が繋がりながら、次々と日常的な動きを連続的に見せていく。それはダンスというより、動きそのものを見ている、といった方が妥当かもしれない。しかしわずかな動きのズレや、トランポリンを使って可動域を広げることで、シンプルな動きを日常から非日常へと突然転換させてみせるのだ。日常の隙間を大きく広げるダンスの可能性を感じる作品だ。

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かすがいサボ10ダンサーズは、愛知県出身の山田珠実がこの地域を中心に活動をしているダンサーや、春日井に住む一般市民の計27名と共に3回のワークショップで創作した作品『Counting』を上演した。振付を合わせる際に数える「カウント」をモティーフにして、合わせるための掛け声として機能するカウントを、手段としてではなく、作品そのものに取り入れている。参加者はそれぞれに「」、「2」、「3」・・・・・「27」と、位置を移動したりポーズを変えるのに合せて自分の順番の数を叫ぶ。カウントの間(ま)は、ダンサーに任されているようで、そこには自然と参加者個人の呼吸や気持ちが反映される。
そういった意味では揃えることが主目的のカウントとは正反対ともいえる「Counting」なのだ。8歳から68歳の老若男女の参加者たちは、音や自らの声に合わせて構成されたシンプルな枠組みのなかで、自らを表現する喜びを感じていたに違いない。

大阪出身の吾妻琳が踊ったのは『幽霊スポット』。自ら踊る場を、幽霊に操られているスポットだという設定で、音楽に合わせてユラユラと不思議な動きを紡いでいく。アトリウムにある巨大な扉が突然明るくなってドアが開いたりと、アトリウムという場を生かす演出も取り入れている。タブラのリズムに合せて空間に伸びる手、電子音に反応して椅子から転げ落ちるなど、あまりにぴったりと合致したダンスと音楽は、「メタ」ダンスがはやりの今日、一見安易に思えないこともない。しかしそのすべてが効果的で、ダンスと音が一体になった作品は確かに小気味良く、優れた小作品のもつ清涼感を称えていた。

そして最後のAbe“M”ARIA×北村成美の『FOUNTAIN』は、ダブル10周年に相応しい東京と大阪の2大女性ダンサーによる超ド迫力なコラボレーションとなった。
突然の原色照明に大音量の音楽、そして空に向かって開いていく巨大なガラスの壁、そこに佇むAbe“M”ARIAと北村成美ことしげやんの強烈な身体。どれをとってド迫力だ。
彼女たちは観客に絡みつき、激しく痙攣したかと思えば、床に引っくり返ってはのた打ち回る。しげやんが照明機材をもって走れば、さらに先にAbe“M”ARIAが陣取る。観客は2人を追いかけ市民フォーラム前の暗い夜道をあっちにうろうろ、こっちにウロウロ。夜中の騒ぎと大音量に心配になりながらも、お腹を抱えて笑う観客たち。東西の2大女性ダンサーらしい見事な爆笑即興セッションだった。
(2009年10月9日 文化フォーラム春日井・交流アトリウム)

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