ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2008.11.10]
From Osaka -大阪-

宮下靖子バレエ団、ブラジル凱旋公演

 宮下靖子バレエ学園の「大人のためのバレエ教室発表会」と併催された公演。
 せっかくなので、先に行われた「大人ーー発表会」も拝見した。最近、多くの教室で熱心にレッスンに取り組む大人の生徒が多いが、この教室も盛り上がっている様子。なかでも、今回良いなと思ったのは、60歳を越えた方のために団長の宮下喜久子がオリジナルで振付けた作品が2つ上演されていたこと。年齢を経れば、身体の動きは思うようにならなくなっていくとしても、人生経験から想いを込めた踊りができる可能性は高い。プロとして踊るのなら、身体の衰えに合わせた引き際があるのかも知れないが、自分の楽しみのためならそうではないだろう。そんな生徒がやりがいを持てるのは、教室として素敵なことだなと思った。

 続いてのブラジル凱旋公演。9月7日にブラジル・サンパウロで開催された日本移民100周年記念事業「京都文化・産業フェア」に出演した3演目の上演だ。もともと、このブラジル公演をすることになった背景には、バレエ団の代表で音楽監督でもある宮下和夫が1998年から翌年に掛けて、アマゾン川中流にある港町マナウスに4度滞在したということがある。

 1つ目の演目は『マナウス組曲』。そのマナウス滞在時に宮下が作曲した7曲の組曲に、コンテンポラリーで注目を浴びる北村成美が振付けた。舞台上で宮下自身がピアノ演奏するなか、朝の光のようだったり、夕暮れだったりと場が移り変わっていく。即興的なコミカルな動きのシーンがあるかと思えば、イスに座ったままの水野宏子の上半身だけの穏やかな優しい雰囲気のソロ。聞けばこの練習期間に、水野は足のケガをしてしまい、こういった振付になったとか……。それが、観る方にとっては、とてもインパクトのあるものになっていて、その前の大人の方々の発表会の部とも、事情はまったく違うものの、“色々な状態のなかでのダンス”──という意味で通じるものがあるように感じられ、“おかれた状況のなかで、どう表現するのか”というということを、ふと考えさせてくれた。

 2つ目は『O.F.パ・ド・ドゥ』。深川秀夫が大塚礼子と一緒に踊るために創ったという、蝶々の女性に若者が恋をして結ばれるコミカルで可愛い作品。原美香と吉田旭が2人ともチャーミングな魅力で楽しませてくれた。
 ラストは深川秀夫振付の『グラズノフ・スィート』。ストーリーはないけれど、それぞれの女性ダンサーの想いが、観客に伝わってくる私の大好きな作品だ。中心を踊った鈴木祐子は、憂いを感じさせる大人の魅力、プリマの迫力をみせ、他のソリストたちも魅力的なそれぞれの個性をみせて、全体に以前以上にこのバレエ団の実力が上がっているのが実感できて観応えがあった。
(2008年9月28日 京都市呉竹文化センター)