ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2008.08.11]
From Osaka -大阪-

原田高博の演出によるバレエスタジオミューズ『椿姫』

 原田高博がこの公演のために演出した『椿姫』。
 バレエ『椿姫』と聞いて、思い浮かべるのは、数々のガラなどで部分的に上演されることも多いショパンの曲にのせたジョン・ノイマイヤー版、それに昨年発表された新国立劇場の、ベルリオーズの曲を使った牧阿佐美の『椿姫』だろうか。今回の、原田演出はそれらのバレエとは違い、オペラと同じヴェルディの曲にのせて構成されていた。ヴェルディの曲を、『椿姫』に限らずに他の作品、『マクベス』や『アイーダ』、『リゴレット』、『ハムレット』といったさまざまなものも含めて原田が聴き、5ケ月かけて丁寧に組み立てた。
 全体を観て、1番に感じたのは、観客を退屈させない舞台だということ。特に1幕、2幕、物語がもちろんありながら、踊りの見せ場もふんだんにあり、楽しんでいるうちにアッという間に終わってしまった。
 2幕、田舎でアルマンと素朴で幸せなな暮らしを送るヴィオレッタ(下村由理恵)のもとに、友人ニシェット(中屋利萌子)が、愛する恋人(陳建国)と結婚する報告にやってきて華やかにお祝いする──というシーンは、この演出独自のもの。出演ダンサーたちのレベルの高いバレエテクニックの見せ場にもなり盛り上がったのとともに、娼婦としての友人が商売を辞めて愛する人と──という姿を前にして揺れるヴィオレッタの心を表すシーンにもなっていた。女性同士の感情と言えば、この他に1幕、3幕に登場する娼婦としてのライバル、美しいオランプ(田中ルリ)の存在感も印象的だった。
 そしてなにより、幕を重ねる中で、アルマン(佐々木大)とヴィオレッタが、変化してゆくのが素晴らしかった。ただ若く純粋だった青年アルマンが、幕が進むなかで、迷い、怒り、最後には大人の男っぽさ、強さをみせる。ヴィオレッタは、はすっぱな感じから、田舎生活では純情な乙女のような面をみせ、やがて広い愛を表すような存在になっていく。
 生々しいとも言える大人の愛の物語──そのシーンシーンでの微妙な心情を客席に伝えることはなかなか出来るものではないと思うが、今回の主役の2人は、その想いを観客に同時に味あわせてくれた。
(2008年6月22日 大阪厚生年金会館大ホール)

バレエスタジオミューズ『椿姫』 撮影/イングルウッド 近藤 幸博
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