ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2008.08.11]
From Osaka -大阪-

ボストン・バレエの倉永美沙と奥村康祐の『ロミオとジュリエット』

 昨年、コンサート形式の舞台で、倉永美沙と奥村康祐の『ロミオとジュリエット』のバルコニーシーンを観てから、ずっと楽しみにしていた全幕。地主薫バレエ団の20周年記念の舞台として、堤俊作指揮、関西フィルハーモニーの演奏により華やかに上演された。
 ジュリエット役の倉永美沙は、幼い頃からそのテクニックが注目されていたダンサーで、モスクワ国際バレエ・コンクール、ジャクソン国際バレエ・コンクールの金メダルをはじめ、様々な素晴らしい成績を残している。現在、ボストン・バレエで活躍する彼女のすごさは、小さな頃から天才と讃えられ続けながら、バレエへの情熱がまったく衰えないことではないかと思う。誰もが認める安定したテクニックを持つ上に、内面表現について考え抜いていることが分かるジュリエットだった。そして、ロミオ役の奥村康祐は、幼い頃からこの地主バレエでともにレッスンした幼なじみ。奥村も昨年の全日本バレエコンクールシニアの部1位を獲得するなど、今注目のダンサー、日本人には珍しい王子が似合う男性としても期待させる雰囲気をもっている。
 最初に登場する2人は、どちらもまるで子犬のように無邪気、そんな2人が舞踏会の場で出会うシーンでは、“何か得体の知れない不思議なトキメキ”に2人ともがとまどいながら惹かれ合っていくのが、ゾクッとするほど伝わってきた。
 地主薫による演出は、さまざまに移り変わる場面をスマートにスムーズにつなぎ、なめらかに物語を進めていく。脇を固めるダンサーも、地主薫自身が演じたキャピュレット夫人役はじめ、福岡雄大のティボルトの迫力、マキューシオの石崎慎の味のある演技力、ベンヴォーリオの佐藤航をはじめ、さまざまな役柄それぞれ良い味が出ていた。
 幕を重ね、徐々に大人になっていく2人の主人公。最後の墓場のシーンでは、ロミオとジュリエットが2人とも1幕とはまるで別人のように大人になっているのが感じられ、美しい悲劇に心がふるえた。
(2008年6月26日 大阪厚生年金会館大ホール)
地主薫バレエ『ロミオとジュリエット』 撮影/F.Obana