ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2008.08.11]
From Nagoya -名古屋-

アフターイマージュ『冗談じゃない、俺たちにはまたメタンハイドレートガスがある』

 5年前に愛知県在住の19歳の男の子ばかりで結成された、アフターイマージュの4回目の公演が小ホールにて開催された。振付は主宰の服部哲郎、演出はトリエユウスケ。振付と演出が分かれているところはこのカンパニーを大きく特徴づけていることのひとつだろう。もともと高校演劇出身だということもあって、演出的な目線を大切にしているのだと思う。振付家がダンサーや自身の身体にフォーカスをすることによって、近視眼的になり過ぎるところを、演出家の存在によって、より客観的に、ある意味観客と同じ目線に立って作品を俯瞰することができるからだ。今回の作品でも、演出に助けられていたところが多々あった。

 会場は四方に客席が作られ、どこからでも観られるようになっている。だから当然、作品の演出も、振付も360度から観られることを意識して創作されていたに違いない。

 冒頭、ムーヴィングライトやサーチライトの光の中に飛び込むように、一昔前のサイケな若者を想起させる派手な柄物のシャツに黒パンツの若者たちが、多方から走り出て激しく踊っては、また走って消えていく。ダンスミュージックの爆音の中、走っては踊るという繰り返しの後、うって変わっての静寂。無音の中でダンサーどおしの呼吸を感じながら、互いの身体にもたれたり、押し返したりとコンタクト的な動きを重ねていく。このように身体で勝負をするか、と思わせた後は、ジャズミュージックの流れる中、組み体操を思わせるような無機質な踊りや、納豆を食べながらの伸びーるマイムなど、ユニークな動きをCMのように短編で並べて、客席の笑いを誘うことにも余念がない。音楽もクラシックから中島みゆきまでと観客をあきさせることないよう工夫されている。

 真面目なダンスする身体と、笑いも誘うような、そのままでも十分に惹きつけられる自然な身体の魅力、彼らはこの2つの身体の落差を狙おうをしているのだろうか。確かに、激しくあるいはゆっくりと真面目に踊った後の、かすかな笑いの時間は心地よいし、それによって心が開かれた観客は彼らにシンパシーを覚えることになるだろう。ただそこまでは予定調和の世界だ。仕掛けの問題ともいえるからだ。

がしかし、どこからでも観られることを可能とする身体にはそれなりの強度が必要だ。強靭な身体と笑える身体、巷で活躍中のコンテンポラリーダンスカンパニーは、どちらかひとつで勝負しているのであるから、それを2つ一度に求めようというのは何という無謀な企てか。

 でもまだまだ24歳。時間はたっぷりとある。もしこの無謀とも思える企てを謙虚に実行していくことができたとしたら、それはもう10年後が楽しみである。
(愛知県芸術劇場小ホール、2008年7月18日)

アフターイマージュ『冗談じゃない、俺たちにはまたメタンハイドレートガスがある』
愛知県芸術劇場小ホール、2008年7月18日 
振付・構成:服部哲郎
演出・構成:トリエユウスケ
出演:岩船雅之、上田勇介、釈迦、堀江善弘、松竹亭ごみ箱、龍、服部哲郎