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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2008.08.11]
From Nagoya -名古屋-

川口節子バレエ団、太田一葉『ENCHANTMENT』ほか

 今年創立30年を迎えた川口節子バレエ団は、1年間を通して、30周年記念公演を開催中だ。今回はそのパート2となる公演で、一部内容の異なる4ステージが開催された。いずれもバレエ団の基本理念である「古典バレエの技術・伝統美の継承」と「独自の創作路線の構築」に基づきながらも、趣向を凝らした構成となっており、様々な角度からバレエを楽しむことができるように工夫されていた。

 川口の作品は、例えジュニアやベビークラス用の小品であっても、動きや演出に大人の作品顔負けのひねりが加えられており、説得力のある楽しい作品が多いのだが、今回の公演で、特に印象に残ったのが、川口節子の子女・太田一葉振付による『ENCHANTMENT』だ。

 太田一葉は多数の舞踊家を輩出しているニューヨーク州立大学ダンス科に現在留学中であるが、この作品でその成果を十分に発揮することとなった。シックな黒のレオタードに鮮やかなグリーンの短めのチュチュを纏った、コケティッシュな風貌の10数名のダンサーが満面の笑みを湛えて登場。手袋をつけた手の動きを強調させながら、笑顔とは対照的に、スピーディなジャンプで舞台を足早に横切っていく。すばやく移動しながらも、その間にたくさんの動きを入れ込んでおり、振付のヴォキャブラリーの豊富さを感じさせる。モーツアルトの『ドン・ジョヴァンニ』の歌曲にのって、様々なパフォーマンスの魅力を表現した場面が紙芝居のように展開され、それに応じて動きや構成のヴァリエーションもめまぐるしく変化する。バレエテクニックに裏打ちされた動きの奔放さはさすが母親譲りの独創性を感じさせるものだ。

 バレエ団の団員、桐村真里・桑嶋麻帆・安藤可織・河野茉衣・高木美月・太田沙樹などのダンサーたちの存在が、さらに作品の完成度を高めている。特に、桐村、桑島、安藤などのバレエもモダンも踊りこなせる柔軟な身体の存在は貴重だ。振付、ダンス共に、川口が育ててきた若き舞踊家たちの成果が、今まさに花開こうとしているのだと感じる作品でもあった。

 本公演メインとなる創作バレエ『ドレミの唄』は、1930年代のナチス統制時代の重苦しさのなか、明るく生きる家族の物語を、川口がミュージカル風に舞踊化した作品。バレエ団の子供たちから大人の団員まで、多様なキャストを上手く組み合わせて、ひとつの作品として仕上げる手腕にはいつも感心してしまうのだが、今回もサウンド・オブ・ミュージックの音楽をベースに、神聖な修道院での様子や、母親を亡くした大佐のお屋敷でのドタバタ劇、ナチスの抑圧、子供たちとともにトラップファミリーシンガーズという音楽隊を結成するまでの様子などを描き出した。

 物語をダンスだけで描くためには豊富な舞踊言語が必要だ。今回の作品では物語が複雑なため、少々説明的になりすぎたところもあったが、独自のアイデアを駆使して魅せる演出を仕掛け、川口オリジナルのエンターテイメントバレエを作り出した。
(名古屋市芸術創造センター、2008年7月20日昼公演)

川口節子バレエ団 定期公演
名古屋市芸術創造センター、2008年7月20日昼公演
「バレエコンサート」
『ENCHANTMENT』(振付:太田一葉)
桐村真里・桑嶋麻帆・安藤可織・河野茉衣・高木美月・太田沙樹・加藤亜弥・黒田あかり・山田みなみ・牧村直紀・水谷 仁
『ドン・キホーテ』(曲:ミンクス)より抜粋 第2幕より
ドルシネア姫・・・太田沙樹(20昼) 桑嶋麻帆(21昼)
『ドレミの唄』
原作:サウンド・オブ・ミュージック
選曲・振付:川口節子
マリア先生・・・(20日)川本知枝 (21日)鈴木和佳枝
トラップ大佐・・・(20日)水野陽刈 (21日)高宮直秀