ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2008.04.10]
From Osaka -大阪-

貞松・浜田バレエ「ラ・プリマヴェラ~春」

 隔年毎、春に行われている貞松・浜田バレエの「ラ・プリマヴェラ~春」は、阪神大震災の翌年1996年に神戸のバレエ団として、“がんばろう神戸”を胸に始めたもので今回が7回目。今年は、第1部が古典の名場面を集めた名作コンサート、第2部はバランシンの『セレナーデ』、第3部は貞松正一郎の新作振付『ラグタイム』という構成だ。

 第1部名作コンサートの幕開け『パリの炎』は、安原梨乃と恵谷彰がともにチャーミングな魅力で観客を舞台に惹きつけた。続く『シルフィードとジェイムズ』は、大江陽子の清らかでやさしい踊り、弓場亮太と溌剌とした踊りが印象的、半井聡子と張縁睿による『メドーラとアリ』は、伸びやかで美しいラインを2人でつくるアダージオがいい。『キトリとバジル』で、若手4カップルとともに登場するのは、バレエの基礎にきちんと基づき堂々とした武藤天華のバジル、スペインの太陽の様に明るくテクニカルな廣岡奈美のキトリ、華やかにこの部のラストを盛り上げた。

『シルフィードとジェイムズ』『パリの炎』
『メドーラとアリ』『キトリとバジル』

 そして第2部の『セレナーデ』。関西のバレエ団体としては記念すべき初演となる。NYCBの元プリンシパル、ジュディス・フューゲイトを振付指導に招いての上演だ。アメリカに渡ってザ・スクール・オブ・アメリカン・バレエを創設したジョージ・バランシンが、その生徒のために振りつけた第1作。チャイコフスキーの『弦楽セレナーデ』に乗って、ブルーのライトの中で舞う長く薄いスカートの女性たちとタイツ姿の男性数人ーー透明感のある幻想的な世界に魅了される作品だった。はっきりとした筋書きはないというが、私は観るといつも、シーンシーンに、恋の喜びや三角関係の複雑さ、最後には“死”を思う。これまでいくつか観た『セレナーデ』で、それは、ぼんやりと夢のように感じることが多かったのだが、今回のソリストたちからは、よりはっきりと伝わってきた。特に2人、華やかで軽やかな踊りと恋の複雑さに歪む抑えた表情が印象的な竹中優花、そして喜びが全身に溢れるパ・ド・ドゥから、切なさや苦悩までに人間味が溢れた瀬島五月の表現は、観客席に強く迫ってきた。

『セレナーデ』『セレナーデ』『セレナーデ』

 第3部の貞松正一郎振付『ラグタイム』は、スコット・ジョブリン他の曲に振付けられた酒場での人間模様を描いた楽しい作品。いくつものカップルの恋愛模様が繰り広げられる。飄々とした店長役の川村康二と大人の憂いをもった山口益加の恋、華やかで人目を引く瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストンの恋、知性的な正木志保と優しげな芦内雄二郎の恋、大人の苦悩を思わせる貞松正一郎と、大人の女性の優しさでそれを包むような上村未香の恋ーー他にもいくつかのカップルが恋の喜びやとまどいを踊る。
 どんな年代の観客も気軽に楽しめるエンターティメント性に溢れた華やかな作品に仕上がっていた。

『ラグタイム』『ラグタイム』
(3月16日 明石市立市民会館アワーズホール大ホール)