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唐津 絵理 text by Eri Karatsu  
[2008.03.10]
From Nagoya -名古屋-

「名古屋シティバレエ団による第24回中部にバレエを育てる会」

1980年の発足以来、中部地方の新人の発掘と若手バレリーナの育成を目的として開催されている「中部にバレエを育てる会」が例年どおり行われた。今年は出演団体も増え、2日で8つのバレエ団が共演。また、バレエ団の合同で上演されるメインプログラムとしては、ワレリー・コフトン振付による『ファウスト』が両日にわたって上演された。

佐々智恵子バレエ団成瀬ひろみバレエスタジオ

 佐々智恵子バレエ団による『マスカレード』は、バレエ団の尾上千洋による振付。バレエ団のプリマ宮原あゆみを中心として、踊り子たちの舞台の表と裏をストーリー性たっぷりに描いた作品。すらりとした肢体の宮原の洗練された佇まいが印象的だった。
 成瀬ひろみバレエスタジオは、子どもから大人まで参加し『ハレルヤ』と『花のワルツ』を上演。元気いっぱいの『ハレルヤ』と、夢いっぱいの『花のワルツ』で、バレエの2つの魅力を示す。シンプルな振付ながら、巧みな構成力でみせた。
 竹内外恵バレエ教室の『スケーターズ・ワルツ』は、同名の音楽や雪の映像を使用して、舞台上にスケートリンクが広がっていくような演出ではじまった。真っ白な衣裳に身を包んだ下村芝布と高宮直秀のパ・ド・ドゥを核に、17名のコール・ドによるバレエ・ブランが花を添え、華やかな氷の舞を演じて見せた。
 市川せつ子バレエ団による『シンフォ二ア』は、バレエ団を主宰する近江貞実による振付。バレエ団のプリマ望月あや子と13名のアンサンブルが黒の衣裳で様々なフォームを形づくっていく。バレエのパを多用しながらも、それを換骨奪胎して、美しくも現代的な作品を創り出した。

竹内外恵バレエ教室市川せつ子バレエ団

『ファウスト』
 メインプログラムは、故・ワレリー・コフトンによる振付作品『ファウスト』。今年は、一般公募での出演者オーディションも開催したようで、開かれた中部のバレエ界を印象づけた。17日の配役は、主役に越智久美子とワディム・ソロマハ、ソリストには、青木里沙、下村芝布、藤村香織、そして様々なバレエ団による14名のコール・ドが出演した。

『ファウスト』はゲーテの原作による戯曲だが、この作品ではグノーのオペラ曲の美しい調べにバレエが歩み寄るかたちで振りがつけられており、特定の配役などの表記は見られない。しかし、越智久美子は、ファウストを幻想の世界に迷いこませたマルグリート役と想像させる美しい娘役として登場。また初演では中学生の越智友則が演じたという少年役を(魂と引き換えに若さを手に入れた若者ファウストとみうけられる)本公演では久野直哉が踊った。アダージオでの越智久美子とワディム・ソロマハの息の合った踊りは、力強く流麗。筋骨隆々としたソロマハの力強いリフト、越智久美子は得意とするパを次々と決めてテクニシャンぶりを披露。久野直哉は少年とは思えぬほどの不思議な存在感で、作品世界に溶け込み、またワルツを踊った他のダンサーたちも、合同とは思えぬほど一体感があった。これらは再振付を担当した越智久美子の指導力の成果といえるのだろう。
 公演一日目の他の演目は、由子バレエアートスクール『Spring』、越智インターナショナルバレエ『ハーレムの花園』、市岡バレエ団『マーチ』、小山みどりバレエ団『愛の哀しみと悦び』。
(名古屋市芸術創造センター 2008年2月17日)

『ファウスト』

越智久美子、ワディム・ソロマハ

越智久美子、ワディム・ソロマハ