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桜井多佳子 text by Takako Sakurai 
[2008.02.11]
From Osaka -大阪-

法村友井バレエ団『お嬢さんとならず者』ほか

 法村友井バレエ団が12月24日、兵庫県尼崎市のアルカイックホールで第6回アルカイック定期公演を行った。『くるみ割り人形』第2幕、『パ・ド・カトル』、『お嬢さんとならず者』というボリュームたっぷりのプログラムは、クリスマス・シーズンの定期公演で「『くるみ割り人形』以外の作品も見たい!」という観客側からの希望に応えたという。ヴァラエティに富み、同バレエ団の個性が表れた内容だった。

 室尾由紀子の金平糖の精、今村泰典の王子を中心にした華やかな『くるみ割り人形』第2幕、山森トヨミ、上田麻子らによるクラシカルな『パ・ド・カトル』。その後に上演された『お嬢さんとならず者』は、現在、世界でも上演されることが珍しい名作だ。
 20世紀初頭、風紀の乱れたロシアのある町を舞台にした、清純な女性教師と不良少年との悲恋物語。マヤコフスキー原作で、バレエ台本はベリスキー、振付はボヤルスキー、音楽はショスタコーヴィチのバレエ曲から編まれている。1962年にロシアのマールイ・バレエ(現在、日本でレニングラード国立バレエとして公演しているバレエ団)が初演し、その後、モスクワ、ノボシビルスクなどソ連(当時)各地で上演された。レニングラード国立バレエでは、20年ほど上演されていないが、ベテランダンサーや古くからの観客からは、再演を望む声もあがっているようだ。

『パ・ド・カトル』『お嬢さんとならず者』

 ストーリーはわかりやすく、ドラマ展開を見守る面白さは十分。主人公たちの踊りだけでなく、酒場のダンサーたちの踊りなどダンスシーンも豊富にある。さらに、ショスタコーヴィチの音楽が、ジャズ風あり、また不協和音を駆使したり、民謡風であったりと変化に富んでいる(今回は指揮の守山俊吾が一部、CDから楽譜を起こしたそうだ。演奏は千里フィルハーモニア・大阪)。法村友井バレエ団団長の法村牧緒は、ロシアでこの作品を見て、その後、同バレエ団のレパートリーに取り入れた。ソ連時代の「幻の名作」が関西で上演されている、というわけである。
 お嬢さん=女性教師エレーナ役の高田万里は、清楚な雰囲気がこの役に良く合う。不良少年ゲンナジー役の法村圭緒は、若者の鬱々(うつうつ)とした気持ちの爆発を、ジャンプや回転などテクニックで表現。乱暴で行儀も悪いが、その心根は実は優しい少年を、等身大で描いていた。心の触れ合いや、互いに惹かれあう心のわずかな動きも、高田&法村ペアが丁寧に描き、つかの間の恋は観客の気持ちも暖かくした。だからこそ、ギャングにあっけなく殺されるラストが哀れだった。同バレエ団が誇るべきレパートリー、再演を繰り返して欲しい。
(12月24日、兵庫県尼崎市 アルカイックホール)

『お嬢さんとならず者』