ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2008.02.11]
From Nagoya -名古屋-

Water drops Contemporary Dance Company『POOL』

 愛知在住のコンテンポラリーダンサー夜久ゆかりが主宰するWater drops Contemporary Dance Companyの2回目の公演が開催された。このカンパニーは、第1回から、その都度ダンサーを公募して創作に取り組んでいるが、今回の公演では、コンテンポラリー以外にも、ストリートや芝居など、さらに多様な活動を展開している計21名が参加した。愛知にもこんなに沢山の新しいことにチャレンジするパフォーマーがいたのだと、大変嬉しく感じた公演であった。
 今回の作品では「場を共有することによって其処に生まれるもの・・・」、をコンセプトにして、うわさや2つの顔、実存への疑問など、心の中にある「深い水たまり」にフォーカスをしたという。作品は3部構成になっており、サブ・タイトルとキーワードに導かれた数々のオムニバース形式で進行した。

 第1部「In the room」では、5つの場面が展開。「D.」と題した山本祐実と山下恵美の静謐なコンタクトからはじまり、トリオ、ソロ、アンサンブルなど、ダンサーの経歴や持ち味を生かした振付がされている。タップダンスから発展させたMARBOのソロや、顔からカラフルな布を被った男性アンサンブルダンサーで構成された「two-face」など多様な作品が並ぶ。
 続く、第2部の「In the deepest poddle」は、6名の女性ダンサーによる小品。雨が降り続く映像を背景に、「人に左右されない」という印象的な言葉で始まるしっとりとした大人の作品だ。ラストは、上から沢山の水袋が落ちてはじけ、舞台には一面の水たまり。そこにダンサーたちが走りこんでは滑り込み、大胆なダイブを見せる。降り続く雨の映像の中、いつまでも繰り返される肢体のねじれた動きが印象的だった。続きが観てみたいと思わせる力強い作品だ。

 休憩後の第3部「In the crowd」は、総キャストが出演する「Persons」と題した2つのシーンをはじまりとして、沢山の人との関係の中で溢れ出す、様々な思いがテーマになっているようだ。テープから流れるユニークな言葉に従って動作をする21名には、みんなで同じことをしようとしている群集の心理を感じさせられた一方で、同じ動きをする人たちからは、それぞれの身体の個性もまた浮かび上がってくる。第2部とはまったく変わって、くすっ、と笑わせるような面白い言葉も散りばめて、この後半の場面では観客をあきさせない工夫も見られた。

 『POOL』では、全体を極めて多様な12の場面がゆるいテーマで連なり、身体表現であるダンスを、誰もが様々な角度から楽しめる作品となっていた。一方で、普段は同じヴォキャブラリーをもたずに活動をしている、この公演のために集まった21名のダンサーを同時に出演させるための振付家の苦労の跡も見られる。コンテンポラリーダンスを共通の基盤として学ぶ場の乏しいこの地域、困難は承知の上で、やはりそろそろ同じ言語で話をできるダンサーを育成する必要がありそうだ。
 個人的には、第2部の「In the deepest poddle」をさらに発展させて、一夜ものの作品としてみたいと思った。
(2008年1月12日 長久手町文化の家森のホール)