ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2007.12.10]
From Osaka -大阪-

石井潤の新作『game (=遊戯・楽しみ・戯れ)』

 セーラー服に学ランから、カジュアルなウェア、スリップワンピースやタンクトップ、クラシカルなドレス、カラフルな布を巻いただけの姿に風船をたくさんつけて・・・など、など、など、衣裳だけ挙げてみても、バラエティに富んだ舞台。シーンも、コミカル、ちょっと妙、シリアス、しんみりーーと、衣裳同様にどんどん移り変わっていくーー石井潤の新作『game (=遊戯・楽しみ・戯れ)』だ。公演が行われたのは、1993年、小学校の統廃合で閉校となった元明倫小学校の建物を使った京都芸術センターの講堂だった。

 舞台の部分には人工芝が敷かれ、ブランコやベンチが置かれて、どこかの公園のよう。始まりは、ベンチで休んでいた男(安田孝)が、のそのそと起き上がり、本を片手に高村光太郎の『道程』をつぶやき出すところからだった。その言葉は、だんだんとちょっとエッチなブラックジョークに移り変わっていく。せりふを多用した構成は、小劇場演劇を思わせ、猫足のバスタブで、シャボンをまき散らしながらビショビショになって踊るさまなどは、昔のアングラ芝居も思い出させる。だが、動きのキレの良いダンサーが多く、言葉のない部分での一人一人の魅力も個性的で、確かにこの作品は、”ダンス”なんだと納得させてくれる。演劇の楽しさを加味したダンスといったところだろうか。

 テンポよくセーラー服と学ランで踊ったかと思うと、桑田充と北村俊介が竹刀を振り回す御前試合で、周囲の女性たちがよける際の妙な気合いの可笑しさを現したり。曽根知と安田孝の喧嘩ごしの踊りは、後半には絡まり合い、風船をとソフトクリームを持った少女ー石井絢子まで登場して、コミカルな上にどこかエロティックになる。
 クラシカルなドレスやスーツに身を包んだノスタルジックなシーンには、シルフィードの衣裳の妖精が登場し、この上もないほど耽美的だ。そこで、ダンサーたちは「愛」「好き」「恋」と美しい言葉を一人ずつ呟く。ふと、そこで「Sex」と呟く妖精、ドレスの淑女が「えっ?」とそちらを振り向く。ささやかな違和感の面白さ。客席とダンサーが近い会場だからこそ伝わる空気感。

 後半は、中村美佳と桑田充、北村俊介の、中村が後ろで自らの手首をもう一方で持ち、組んだ状態にさせられてのセクシーなダンスが印象的。その状態であれだけ様々な動きがこなせることもすごいが、どこか運命とでも言いたくなるものを感じさせる気迫もすごい。
 ラストは、それぞれが蝋燭を運んできて輪になり、手話で「私はあなたを愛したい」ーー「争いがなくなりますように」という平和的なメッセージを示し風のように去っていく。とても爽やかな終わり。作者の中では、平和や愛と明るいエロスは切っても切れないもののようだ。
(11月11日 京都芸術センター 講堂)