ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2007.09.10]
From Osaka -大阪-

テンチコワとパケットをゲストに招いた有馬龍子バレエ団『白鳥の湖』

 当初、パリ・オペラ座からオデット&オディールにエミリー・コゼット、王子にカール・パケット、ロッドバルトにミカエル・ドナールを招く予定で進められていた有馬龍子バレエ団の『白鳥の湖』。この5月5日にエミリー・コゼットがエトワールに任命されたこともあって、とても良いタイミングと思えたのだが、7月に彼女が怪我、急遽、シュツットガルト・バレエのプリンシパル、エレーナ・テンチコワを代役に迎えることになった。
 ブルメイステル版を元に安達哲治が再振付。監修の薄井憲二はヴォルフガングとして舞台にも立っており、老家庭教師というこの役柄がとてもよく合っていた。
 このヴァージョンは、花を摘む乙女が、ロッドバルトのマントに包まれ、白鳥に変えられてしまうプロローグからはじまる。3幕の舞踏会の場面では、スペインだけでなく、ナポリもチャルダッシュもマズルカも、すべてのディベルティスマンが王子を攻めたてるように展開された。
 ロッドバルトの存在感が大きな演出である上に、さすがにミカエル・ドナール、マントを効果的に使い、客席に迫る迫力はすごい、観ている私自身までマントにのみ込まれてしまいそうな気にさえなる。
 もちろん、王子のカール・パケットは、品位を持った悩む姿も美しく、バレエとしてのパも正確で大きな迫力もあり、ステキ。
 そして、エレーナ・テンチコワ。ロシアのワガノワ・バレエ学校を卒業し、キーロフで活躍した後、ドイツに渡った彼女、ロシア・ワガノワ育ちの白鳥!---ということを、一目見て実感する。アラベスクの手の先から飛んでいってしまいそうな、柔らかで情感たっぷりのオデットのアダージオ、また黒いチュチュに白い肌、紅い口紅のオディールは、王子の手を強く掴む迫力もすごく、惹きこまれた。
 他にも印象に残ったダンサーは多く、道化の末原雅弘は、テクニックがしっかりしていて、楽しい演技も良かったし、1幕のパ・ド・トロワは、吉岡ちとせ、福谷葉子、陳秀介という、このバレエ団育ちのダンサーたちで、滑らかで丁寧な踊りのトーンがよく合っていた。3羽の白鳥など、白鳥たちの中にも注目したいダンサーが何人かいた。

 ところで、もともと王子とオデット&オディールは、違う生き物---少なくとも彼女が人間に戻るまでは。そう考えると、今回の舞台、パリ・オペラ座育ちの王子と、ワガノワ・バレエ学校卒業のオデット&オディールというのは、踊り方に違った香りがあって、偶然の産物とはいえとても良かったのではないか、そんな気がした。

 

(8月11日、京都会館第1ホール)