ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2007.08.10]
From Nagoya -名古屋-

松岡伶子バレエ団アトリエ公演

 若いダンサーの紹介を目的に、毎年開催されてきたアトリエ公演も今年で17回目となった。バレエ団のダンサーにとっては、コンテンポリー作品への挑戦の場ともなっており、毎年、ここで発表される新作に注目が集まっている。特に今年の振付家は、コンテンポラリー・バレエの第1人者のひとり、島崎徹だということもあって、会場には東京の評論家などの姿も見られた。

 さて、第1部では、『パキータ』より「マズルカ」、同名の音楽を使用した『アサフィエフ組曲』(振付:松岡璃映)、『白鳥の湖』第3幕より「黒鳥」のグラン・パ・ド・ドゥとクラシック・バレエの演目が続き、目にも鮮やかな色彩と、幾何学的なフォーメーションで、観客を華麗なバレエの世界へと導いた。『白鳥の湖』は、小島沙耶香と市橋万樹のペアにより踊られたが、留学しているアメリカから一時帰国中の市橋は、「黒鳥」の王子役で、高く力強いジャンプを見せ、昨年よりもひとまわりたくましくなった姿を披露した。

『白鳥の湖』


 

『卒業記念舞踏会』

 第2部『卒業記念舞踏会』(振付:大寺資二)では、バレエ団のボーイズクラスの男の子たちが大活躍、その成長の著しさを垣間見せた。この作品では、学校の卒業を祝う舞踏会での初々しい男女生徒のやりとりを華やかにそして、ちょっとコミカルに描いている。さらにこれからのバレエ団を担っていく若く美しいバレリーナの卵たちが女学生を勢ぞろいで演じるや、そこにシルフィードが登場する幻想的な場面が挿入される。シルフィード役の佐々部佳代と窪田弘樹は、安定した踊りと優雅な佇まいで好演。特に昨年のジャクソンコンクール・ジュニア部門で銀メダルを受賞した若手のホープ、佐々部はそのテクニックに加えて、女性らしい気品も感じさせた。
 

『RUN』

 そして第3部は、島崎徹振付による『RUN』。作品の冒頭から、観客の意表をつく群舞による激しいダンスが繰り広げられる。左右上下に脱力し、また容赦なく反り返る動きの反復、人間もまた動物なのだと、生命の躍動を感じさせる幕開けだ。
衝撃的な群舞から始まり、デュオ、アンサンブルと、その形態は変化するものの、タイトルどおり、ひたすら走り、最後まで全力疾走で踊り続ける。ただ動き続けることによって、一人ひとりのダンサーの身体性や動きの美しさが、はっきりとした輪郭をもって浮かび上がってくるのだ。センターを務めるのは、昨年から活動の拠点を日本に移した大岩千恵子。海外でのコンテンポラリー経験が豊富な大岩の肢体が、旋回し宙に投げ出されると、まるで身体に内包しているエネルギーが放射される瞬間に立ち会ったかのように感じられ、つと息を呑んだ。
バレエの様式美とは異なり、島崎特有の振付を踊ることは難しい。しかし、島崎が海外から帰国して初めて一緒に仕事をしたのが、このバレエ団だ。島崎はその後も数々の作品を提供しているから、ダンサー中には、彼のダンスのボキャブラリーをよく知り得ているダンサーも多いのだろう。難しい彼の動きをそれぞれのダンサーが見事に消化し、完成度の高い作品へと仕上げていた。

(愛知県勤労会館、2007年7月16日)