ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2007.06.10]
From Osaka -大阪-

ちょうど20回目を迎えた「こうべ全国洋舞コンクール」

 20年、生まれた赤ちゃんが成人するのと同じ時を経た「こうべ全国洋舞コンクール」、今年も全国からのべ1463名と多くの参加者を得て行われた。クラシック決選の表彰式前には、20回目の記念として、過去第1回からの優勝者の踊りをコンパクトに編集したものが上映され、集まった教師たちを中心に懐かしさの歓声があがっていた。過去の優勝者たちは、現在、海外や国内でダンサーとして活躍する者、今年のコンクールに生徒を率いて教師としてきている者などさまざま。表彰式を待つ時間が、過去受賞ダンサーたちのその後のそれぞれの歩みに思いを巡らせる楽しい時間となった。

モダンの部
 ジュニア2部1位は『蓮の詩』を踊った田中萌子(黒沢輝夫・下田栄子モダンバレエスタジオ)。東京新聞コンクールなど他のコンクールでも多々1位を獲得している彼女、美しい髪を活かし、その髪の扱いに気をつけたのだという。
 ジュニア1部1位は『哀歌』の鷹谷美希(金田尚子舞踊研究所)。今春、北海道の旭川医科大学に入学、医師を目指し、所属の教室のある岩手から離れて思うように稽古がままならない中での受賞。どんな入り方の回転でも美しい軸を持ってこなす姿が印象的だった。
 シニア1位は『Black Dahlia』の所夏美(Roussewaltz)。170cmの長身を活かしたスケールの大きい動きが良い。作品は自作で「審査されるというよりも、ショータイムだと思って踊った」という。「言葉というものは真実を語らない、視線は本物」・・・表現したい思いを組み立て、丁寧に創られた作品。
モダンジュニア2部1位
田中 萌子 『蓮の詩』
モダンジュニア1部1位
鷹谷 美希 『哀歌』
モダン シニア1位・神戸市長賞
所 夏海 『Black Dahlia』

 創作部門には、18グループが出品。全体的なレベルは、概ね昨年より上がったように思う、きちんと練られたものが多かった。だが、残念ながら最優秀賞は出ず、優秀賞が2つ。
 ひとつ目は、リエクロダ(黒田バレエスクール)による『笑いじょうご』。創作部門で、ソロ作品は広がりが創りにくくて不利かな?と思うことがこれまでよくあった。でもこの作品は作者一人のソロ作品でありながら、“笑い”をキーワードに、観客の目を釘付けにしつづけた。構成も上手く、素直に楽しめ引き込まれた。
 ふたつ目は、野村真弓の『禁じられた遊び』、横田佳奈子と野村、2人の踊りだ。ちなみに、野村は昨年も同じ部門で同じように優秀賞を受賞している。大人や社会を象徴する存在(野村)と、子供(横田)ーー情報がありすぎる現代社会の中で、大人が子供を恐ろしい方向に変化させてしまう怖さをこめた。女性独特の感性が活かされた作品だった。
創作部門優秀賞
リエクロダ 『笑いじょうご』
創作部門優秀賞
野村 真弓 『禁じられた遊ぴ』


クラシック部門
クラシック女性ジュニア2部1位
オドノヒュー英美 
スワニルダのヴァリエーション
 特にジュニア2部(10歳~13歳)のレベルは、男女ともに年々進歩の著しさに驚くばかり。受賞者以外にも才能を感じさせる子供たちがひしめいていた。
 女性ジュニア2部1位は、スワニルダのヴァリエーションを踊ったオドノヒュー英美(MBSマリバレエスクール)。イギリス人のお父さんと日本人のお母さんとの間に生まれたハーフの彼女、明るくちょっといたずら好きのスワニルダがとてもよく似合っていた。
 男性ジュニア2部1位は、バジルのヴァリエーションを踊った仙波良成(美佳バレエスクール)。バジルはすごくかっこいいから好きだと話す彼、しっかり回ってきちんと止まれていたのが、見ていて気持ちよかった。
 女性ジュニア1部1位は、昨年のこのコンクールの2部で1位だった奥野凛(村瀬沢子バレエスタジオ)。カテゴリーで最も小さな年齢でトップに立ったことになる。踊ったのは『ライモンダ』よりヴァリエーション、あのローザンヌの課題曲にもなっている柔らかい曲だ。2部から1部になり、課題曲から自由になったらぜひ踊りたかった曲なのだと言う(このコンクールだけでなく、年少のカテゴリーにはいくつかの課題曲を定めている場合がほとんど)。このスローなメロディの中、滑らかに素晴らしく身体をコントロールした彼女、昨年より何まわりか大人になったような踊りだった。
 男性ジュニア1部1位は、『海賊』よりヴァリエーションを踊った中野吉章(エリート・バレエ・スタジオ)。これまでも、様々なコンクールで優勝など活躍した彼。パッセをおろしながらのスクリューのようなピルエットが素晴らしかった。サンフランシスコ・バレエ・スクールにスカラシップで留学し、アメリカが肌に合うと感じた様子で、アメリカでダンサーとして働きたいと眼を輝かせる。

クラシック男性ジュニア1部1位
中野 吉章 
「海賊」よりヴァリエーション
クラシック男性ジュニア2部1位
仙波 良成 
『ドン・キホーテ』よりバジルのヴァリエーション
ジュニア1部1位
奥野 凜 
『ライモンダ』よりヴァリエーション

 女性シニア1位は、『グラン・パ・クラシック』よりヴァリエーションを踊った藤本華奈(法村・友井バレエ学校)。高校卒業後、カンヌ・ロゼラ・ハイタワーに1年間留学、戻ってきての久しぶりのコンクール。とても美しい脚を持った彼女、それを活かしたくて、このヴァリエーションを選んだのだという。初夏から熊川哲也さん率いるKバレエカンパニー入団が決まっている。
 男性シニア1位は、バジルのヴァリエーションを踊った原田祥博(ソウダバレエスクール)。一昨年、昨年と2位が続いた彼の念願の1位。プロとして踊る彼だが、今年は仕事をセーブして、思い切ってテクニックの習得に力を注いでいるのだという。仕事があるとケガ出来ないし、そんな挑戦が難しくなるのだという。人間には、そうして自らの実力のアップのために使う“時”というものが必要なのかも知れない。それはどんな職業の人にもあてはまることかも知れない。
女性シニア1位 兵庫県知事賞
藤本 華奈 
「グラン・パ・クラシック」より ヴァリエーション
男性シニア1位
原田祥博


(モダン・創作部門:4月21日~22日、神戸新聞松方ホール/
クラシック部門:5月3日~6日、兵庫県立芸術文化センター)