ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2006.09.10]
From Osaka -大阪-

関西拠点のプロダンサーを中心に MRBバレエスーパーガラ

 関西で、所属を超えてこれだけ多くのダンサーが共に舞台に立つ機会は、今のところこの公演以外にはないのではないだろうか? 今年も海外や東京で活躍する人を含め、多くのダンサーたちが集った。プロデュースは自らも踊ったMRB主宰の松田敏子。

 渡辺美咲と恵谷彰の、正確なテクニックと少年少女のような可愛らしさの『パリの炎』のグラン・パ・ド・ドゥで幕開け。続く『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥは、主催のMRB所属の川東まりこと沖潮隆之、川東は踊りの形がとても美しい、欲を言えば、もう少しジゼルの複雑な想い、そこからくる情感が出せれば、もっと素晴らしかったのではないかと思う。
『アルレキナーダ』よりヴァリエーションの福田圭吾は、人を惹きつけるものを持ったダンサー。『白鳥の湖』よりパ・ド・トロワを、美羽礼加、的場涼香、ヴラディク・ヴラディミロヴィッチ。美羽と的場は双子のようによく合う、テクニックに注目されることの多い二人だが、回転はスピーディなもののアダージオなど概ね基本を意識した丁寧さで好感が持てた。

 そして、芸術監督の漆原宏樹がショパンの曲に振りつけた『スケルツォ』、さまざまな所属のダンサーが共に出演、育ったメソッドによって、少しずつ踊りの雰囲気が違うのは興味深い。続いて同じ漆原振付の『タチアナ&エフゲニー』よりパ・ド・ドゥを、成澤淑榮とイルギス・ガリムーリンが。こんなドラマ性のある演目が入るのはとても良い、大人の重厚感ある表現を観せてもらった。
『くるみ割り人形』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥは竹中優花と桑田充、お姫様がぴったりの竹中、『くるみ割り人形』全幕も踊っているだけに安心して楽しめる。『海賊』第1幕よりパ・ド・エスクラーブは福谷葉子と梶原将仁、梶原は奴隷商人の役をイキイキと、福谷は美しい人、奴隷の悲しさの表現が目立ったが、もっと複雑な思いを表現してくれたら更によかっただろう。
『シルビア』よりバリエーションを福岡雄大、彼はチューリッヒ・バレエで活躍中、この1年でとても成長した。テクニックはもちろん、上品で優しげな雰囲気が出ているのが良い。
 1幕のラストは田中ルリと山本隆之の『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥ、田中はスタイルよく美しい足を活かして、山本もさすがのノーブルさ。二人を観ていると、表現と品位が何より大切なのがよく分かる。


「眠れる森の美女」

「JOY」

「シンデレラ」
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 第二部は、漆原がヴィヴァルディの曲に振付けた群舞『JOY』から。女の子の可愛らしさを活かした作品だった。続いての『海賊』第2幕よりグラン・パ・ド・ドゥは、MRB所属の柳原麻子と英国ロイヤル・バレエの平野亮一。柳原は華やな魅力で回転のテクニックも高度、平野も踊る楽しさが前面に出てノビノビと、もう少し踊りがこなれるともっと良くなりそうだ。
 そして、主宰の松田敏子と法村圭緒の『シンデレラ』よりグラン・パ・ド・ドゥ。プロコフィエフの曲、振付はアダジオと男性ヴァリエーションが法村牧緒、女性ヴァリエーションが漆原、コーダは漆原+法村牧緒。星空の下での二人の踊りは童話そのものの可愛らしさ、夢見る少女の世界が舞台上に現れていた。
 次の『Shinkirow』は、石川愉貴が川井郁子の曲に振付けたもの。アジア、東洋の思想を西洋の舞踊で現すという創作の方向は興味深い。踊ったのは振付者の石川と谷吹知早斗、伊藤志保、内藤夕紀をはじめとするアートバレエ難波津のダンサーたち。基礎がしっかりしたダンサーが多く、激しい動きの中になめらかさも。『サタネラ』よりグラン・パ・ド・ドゥは西田佑子と、今年、国内やアメリカのジャクソンなど各コンクールで数々受賞の大貫真幹。二人とも丁寧な技術に楽しげな演技が良い。


「多重人格」

「エスメラルダ」

「ドン・キホーテ」
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 矢上恵子振付の『多重人格』は、10年ほど前の作品をアレンジしたもの。以前は、主の矢上恵子の周りのそれぞれの感情(?)を現す4人は女性だったが、今回は梶原将仁、恵谷彰、福岡雄大、福田圭吾と男性たち。振付は全て新しく、踊れるダンサーたちが、それぞれ違った個性の踊りを見せ、とても見応えのある良いものに仕上がっていた。
『エスメラルダ』よりグラン・パ・ド・ドゥは宮内真理子と貞松正一郎、キャリアを積んだ二人の、観せることをよく知った大人の演技としっかりした踊り。
 ラストは野間景と高岸直樹による『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ、今年、コンクール受賞が相次ぐ廣岡奈美が、友人のヴァリエーションで華を添えた。長身のカップル、美しいスタイルで、華やかさの中にも品の良さを漂わせて素敵な踊りに仕上がっていた。実はこの舞台の前日、野間景の父であり、野間バレエ団の理事長として尽力した野間亨がガンのため死去している。そんな時ながら立派に踊りきった姿を、空から亨氏は誇らしげに眺めていたのではないだろうか。
(8月6日 グランキューブ大阪)