ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2006.08.10]
From Nagoya -名古屋-

Dance Meeting Collection 2006

 コンテンポラリー・ダンスカンパニー、ヒデ・ダンス・ラボによる6回目の公演を観た。毎回参加している村越直子に加え、今年はカナダのサーシャ・イヴァノチオコと妻木律子が参加するという、主催者の意欲が汲み取れる内容となっていた。
『Noise』は、近藤夕希代、秀奈都代、飯田佳世、秀実希子による共同振付作品。タイトルから推測されるように、日常に溢れる雑音や騒音、そして心から溢れる様々な音への思いを作品化。それぞれのダンサーたちが内側に感情を秘めながらも、攻撃的な鋭い視線でそれぞれ異なる方角を眺めている冒頭の場面が印象的だ。

『落ちて転がるファンタジー』は、薄暗い部屋の中でゆっくりと動き続ける妻木律子のソロダンス。舞台の中央、淡い光の広がりにあるのは、彼女の心の心象風景。ほんの少し前進しては、立ち止まり、また後ずさる。こういったシンプルな動きの連鎖がたゆみなく繋がっているのだが、そこに無駄な動きは一切なく、その軌跡にはひとつひとつの踊りの輪郭がくっきりと浮かび上がってくる。内向きの心情は、曲げられた足首などの関節の歪みに象徴されているかのようだ。静止したすべての瞬間の身体と、それを包む空間の美しさに、真のベテランダンサーの存在の強さをみた思いだ。

 次はカナダから参加したサーシャ・イヴァノチオコ振付の『Cold Night』、
トロント・ダンス・シアターで一緒だった村越とのデュオだ。デュオといってもほとんど交わることはない2人のソロといった印象。黒の衣裳を身につけた2人の女性が淡々とそれぞれのダンスを踊り続ける。後半、2人の関係はわずかに変化。時おり、意識が交叉し、それによって動きも微妙に変化していくように見える。意識と動きの関係が浮き彫りになって興味深かった。

 最後は、主催者である秀和代の振付けた『コンタクト』。11人の女性ダンサーのほか、サックスの早川彰久が出演。冒頭、3つの黒箱から光が見えている中、群舞からデュオ、そしてソロ、また群舞と構成が次々と変化していくが、その時どきにサックスをもって早川彰久が登場する。中盤では、早川とダンサー4名が次々と即興を繰り広げ、ジャズの即興ライブ演奏のような場面があるかと思えば、後半には、ヴォイスの音楽に、サックスの音が重なっていく音に合わせて、緻密に振付された動きが展開されていく。ラストでは、下手奥から上手前に斜めのラインになったダンサーたちが、美しいアンサンブルを見せた。全体をとおして、各場面で様々なことに挑戦している、という印象だ。様々な音楽や光、時間を感じたいという作者の気持ちは伝わってきたものの、即興の挿入によって、全体の凝縮力が弱まってしまったようにも感じる。
しかし、安易な作品が増えている中で、毎回様々な試行を行い、挑戦を繰り返すという、こういった意欲的な機会に出会えることは、嬉しいことである。この会で感じた次への課題の実現を、また来年の舞台で見られることを楽しみにしたい。
(7月8日 愛知芸術文化センター・小ホール)


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