ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2006.08.10]
From Nagoya -名古屋-

松岡伶子バレエ団アトリエ公演

若手ダンサーの勉強の場として、毎年7月に開催されているアトリエ公演の14回目が開催された。アトリエ公演は、ゲスト振付家が、バレエ団の若手のために新作を振付けることで定評のある公演だが、今年のゲストは日本の創作バレエの草分け、石井潤。

 まず、第1部『パキータ』よりマズルカでは、中・高校生らの次代を担うバレリーナの卵たちが多数参加して、これからの成長が楽しみに思えるような荒削りだけれども若さあふれる伸び伸びとした踊りを見せた。途中、早矢仕友香と窪田弘樹のパ・ド・ドゥが入り、全体を引き締めていた。
 続く第2部は4演目、『フラワーフェスティバル』は、バレエ団の男性ダンサー大寺資二が振付けた楽しい作品。ボーイズクラスの男の子たちを活かすような工夫が随所に見られる。跳んだりはねたり、花輪のアーチを掲げてゆっくりと回ったり、小・中学生の男女のパ・ド・ドゥが、一度に何組も並ぶと、それだけで十分に可愛らしい。

 続く『眠れる森の美女』より第3幕のグラン・パ・ド・ドゥは蟹江真理子と高宮直秀がオーロラと王子を演じた。蟹江はしっかりと安定感のある踊りを見せ、次世代の存在をアピール、また『アダン組曲』では、松岡璃映による振付で、選ばれた28人の若手が、しだいに難しくなっていく振付にまっすぐに挑戦して、日ごろの練習の成果を見せた。

 石井潤の振付『今日のコンサート』は、安藤有紀、伊藤優花、加藤奈々と、大寺資二、森充生、窪田弘樹の3ペアを中心に、早くも団員たちが勢ぞろい。黒の衣裳に身を包み、ピアソラの音楽にのった小気味よいステップふんだんで、軽妙に大人の踊りをみせていく。緞帳の前の張り出しでのお茶目な動きや、それとは対照的なスピード感のある振付をかっこよく踊りきるのは、大人の団員ならではだろう。女性は女性らしく、男性は男性らしくみえてくる、お洒落でスマートな作品だった。

『今日のコンサート』

 石井の振付作品はもうひとつ、第3部の『スターバト・マーテル』。いく人もの音楽家が13世紀に生まれた「スターバト・マーテル」という聖歌に作曲をしているが、ここでは、アルヴォ・ペルトの音楽を使用し、わが子を失った聖母マリアの悲しみと祈りを情緒豊かに表現した。アメリカで活躍中、一時帰国している大岩千恵子と名古屋を代表する大寺資二が主役をつとめたのも見どころのひとつだ。


『スターバト・マーテル』
 荘厳な宗教音楽が流れる中、中央に横たわる聖母役の大岩の姿が見えてくる。身体を前かがむように屈曲したコントラクションという姿勢で苦悩を表現。天から降り注ぐ光を浴びた聖母の情感と、対比をなすようなコール・ドの整然とした動きは、そこにふっと、絵画的ともいえる静寂な瞬間を切り取ってみせる。しかし終始ダンサーのエネルギーが途絶えることはない。グレーのワンピースを纏った女たちの、立ち上がってはまた転がる、その姿は、悲しくて美しい。モダンダンスとバレエを融合した、これぞモダンバレエという作風で、松岡バレエ団の表情豊かなダンサーたちを十分に活かす作品でもあった。
(7月17日 愛知県勤労会館)