ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2006.03.10]
From Osaka -大阪-

17団体がさまざまな作品を上演、アルティ・ブヨウ・フェスティバル公募公演

 モダンやコンテンポラリーはもちろん、クラシック・バレエや日舞などさまざまなジャンルのダンスに取り組むグループが一堂に会して、自らのジャンルに捕らわれることなく、自由な表現を観せ合ったフェスティバルである。演目を変えて3夜に渡って17演目行われ、終了後には出演者と観客にゲストを交えて、作品についてのアフタートークも行われた。私は3日間とも鑑賞した。上演順に、特に印象に残った6作品を簡単に紹介する。

 2月10日(金)。大阪のMOVE ONによる『Contacts~ひととひととの間で起こること』。構成・演出・振付は竹林典子。女性ばかりのこのグループ、始めのシーンは眼鏡をかけた女性の苦悩。美しい脚の女性が絶望したように後方に飛び降りるところまで観たときは、引きつけられつつも結構暗いトーンの作品なのかと思ったのだが、その後シーンが変わってからは一転。自転車など色々なものを使いながら、さまざまな女の子どうしの繋がりが出来ていく。女の子の可愛らしさをよく現した作品で、とても好感が持てた。アルティの可動舞台を上手く工夫して使い、場面転換も面白く、色遣いも衣裳の白を基調にセンスを感じさせた。

 次に北海道から参加したビィ・ボディ・モダンの『蜜-- Bouche de miel, Coeur de fiel』。構成・演出:坂見和子、振付と出演は共に、宮沢奈々子と伊勢谷朋子の二人。サブタイトルの“Bouche de miel, Coeur de fiel”は、フランス語のことわざで、日本語に訳すなら“外面菩薩のごとく、内面夜叉のごとく”といった意味だそう。クラシカルな人形のような長い髪、白い服の女性が、射るような眼でこちらを観ている、もうひとり後方に茶色っぽい服装の女性、舞台にポツンと赤いトゥ・シューズ---そんな幕開け。白い服の女性は片方だけピンクのトゥ・シューズを履いていて、その脚は踊れるのだけど、もう片一方は踊れない・・・見つけた赤いトゥ・シューズを履こうとするけど叶わない・・・、そんな切ない情景。バレエ好きな私としては「バレエを踊りたいけれど、好きなんだけど、上手く行かない・・・」そんな、バレエのレッスンをする人なら大半は感じたことがあるだろう気持ちを、作品を観ながら感じた。


MOVE ON

Lee Hwa-Seok DANCE PROJECT

佐々木敏惠テアトル・ド・バレエ
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

 2月11日(土)。韓国のLee Hwa-Seok DANCE PROJECTの“タバコ TOBACCO”。構成・振付はLee Hwa-Seok。幕開き暗転の中、赤い点がいくつか見える、そして場内に漂う独特の煙のにおい・・・「あっタバコの火、におい!」。照明がつくと、7人の男女が小さな二人掛けくらいのソファーに固まってタバコを吸っていた。舞台芸術においては、同じ空間を舞台と客席が共有しているからこそ感じることが出来るものが色々あると思うけれど、ダンスで“臭い”---“臭覚”を意識したのは初めて! 声を上げて笑う、奇声を発する、マイムと言った演劇的要素、ショーダンス的要素も駆使しながら、とても巧みな構成で観客をどんどん舞台にひきつけていった。黒い衣裳に赤いハイヒール、黄色人種の肌と黒髪といったはっきりした色の使い方も印象的。また動きにおいても、男性たちが座ったソファの後ろから多くの女性の脚が、まるで爬虫類でもあるかのように湧きだしてくる(・・・・と感じる動きだった)様子は衝撃。楽しませながら、ダンスでしか表せないものをとても上手く表現した作品で、視線を釘付けにするものだった。

 地元京都の舞うDance~Heidi S.Durningの『Ruby ~ Memorial』。構成・演出・振付・出演はHeidi S.Durning。阪神大震災で母を亡くした彼女が、母を思い作った作品を10年を経た今、組み立てなおしたもの。彼女はスイスと日本のハーフで、藤間流の日本舞踊とモダンダンスの両方に取り組んでいる人。静かな舞と、ギーという不快感のある音やペリコプターのような音の対比に、最初、工事現場なのか?その震災の後の?と思った。Jean-Francois Laporte の作曲の音でそれそのものではないのを後に知ったが、不快感のある音と静かな舞というのは、そういう意味を表現していたのではないか? 彼女は美しく、和服での菩薩のような姿、静かな視線にドキッとさせられるものがあった。


ビィ・ボディ・モダン

Dance~Heidi S.Durning

a-core dance arts
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

 2月12日(日)。NYから参加した、a-core dance artsの『Sound of Sand』。構成・演出は、Ayako Kurakake、Yoko Heitani、振付は、AyakoKurakakeと、Iratxe Ansa Santesteban。踊ったのは、Iratxe Ansa Santesteban、Nohemi Barriuso、それに東京からの安藤真理子、渡辺由美。ミドルイーストの女性をテーマにした共演ということ。まず、のけぞってあるく女性・・・ダンサーとしての身体能力の高さを感じた。大地の中で泣いているようななんともいえない音(砂の音?声?)の中の、全身で泣いているようなダンス。舞台の使い方の自由度、身体の使い方においても・・・。言葉で説明することが困難なものだからこそ、身体が語っている---ダンスであるからこその強いインパクトを与えてくれた作品。レベルの高さを実感した。ラスト、顔を出さなかった女性が正面に顔を見せる。そこにあたる柔らかなライト、舞台にクローズアップなんて本当はありえないのに、そこは観客の眼の中で確かにクローズアップされていた。

 このフェスティバル最後の演目は、地元、京都の佐々木敏惠テアトル・ド・バレエの『フェルメール「眠る女」より』。作・演出は前原和比古、振付が佐々木敏惠。フェルメールの名画“眠る女”に描かれた女がどんな夢をみているだろう?・・・美術館では学芸員がそう問うという、そこに着想して創られたことは興味深かった。その絵画の女を踊ったのは三浦美佐。高貴でありながら、当時タブーとされた居眠りをする女性によく挑戦していたと思う。この作品の特徴は絵の中の仮面の人物たちが出てきて共に踊ること、永井康孝を中心としたコミカルなダンスが秀逸だった。客席の笑いを誘ったのは、意外にも3日間を通してこれだけだったように思う。 他にも良い演目や良いダンサーが見受けられた。
(2月10日、11日、12日 京都府立府民ホールアルティ)