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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2005.11.10]
From Nagoya -名古屋-

●松岡伶子バレエ団公演『石の花』

 松岡伶子バレエ団が、ロシアの創作バレエ『石の花』を上演した。今回は、1989年の初演以来3回目、また93年には名古屋市芸術賞を受賞している作品とあって、この公演のために、バレエ・インターナショナル・インディアナポリスに所属している大岩千恵子を呼び寄せ、最高の条件を整えて再演に臨んだようだ。8日の配役は、銅山の女王に大岩千恵子、カテリーナに河合佑香、ダニーラにキリル・メルニコフ。

バレエ作品『石の花』は1954年にいくつかのロシアの民話をもとに、プロコフィエフとラブロフスキーが台本を執筆し、プロコフィエフのバレエ音楽としては最後の作品である。

石工ダニーラは、孔雀石に生きた花を刻むことを夢見て、日夜制作に励んでいる。突然石の花を制作中に、嫌われ者のセヴェリヤンらが侵入し、石の花を取り上げようとするが、ダニーラは応じない。ダニーラが不思議な声に誘われて山の方へ行くと、そこには銅山の女王。地下の銅山の女王のところにある石の花を見て、その秘密を欲しいと、女王を追うダニーラ。一方でセヴェリヤンは、美しいカテリーナにつきまとうが、カテリーナは果敢にもセヴェリヤンを退治して、地下にいったまま戻ってこないダニーラを探しにいく。火の精に導かれたカテリーナは、銅山までやってくる。地下では、石の花をようやく完成させたダニーラだが、彼を地上に返したくない女王は、ダニーラを石のように動けなくしてしまう。しかし人間の愛が石に負けることはない。助けにきたカテリーナの愛で、2人は地上に戻り、祝福の宴で幕が閉じる。

今回なんといっても抜群の安定感と表現力を見せたのが、銅山の女王役の大岩千恵子である。現在所属のバレエ団を自ら説得して、今回の出演にこぎつけたというほどの思い入れの強い役だとのことで、ダニーラを地下へと誘引する、魅惑的だが孤独な女王を見事に演じた。ダニーラとのパ・ド・ドゥでは、長い四肢でダニーラの身体に執拗に絡みつき、銅山の女王の本来の姿・トカゲの化身であることを髣髴とさせる演技力をみせ、大岩の海外での充実ぶりを物語った。ダニーラ役のキリル・メルニコフはキーロフ・バレエ団出身のベテランで、若いダンサーのような勢いこそないものの、ダニーラになりきって演技から動きを導き出す、そんな自然な表現に好感がもてた。カテリーナの河合佑香は、ローザンヌ賞を受賞するなど、若くから頭角を現したバレリーナである。いつみても若々しく愛らしい。ただひたすらにダニーラを愛し、心配するひたむきさが彼女の容姿にぴったりだ。いくつになっても純な少女役ができるのは強みであるが、自らの役を規定せず、幅広い演技を期待したい年齢にもなってきた。カテリーナにつきまとうセヴェリヤンを演じたのが、愛知県出身で新国立バレエ団所属の市川透。市川は全身で悪役になりきり、キャラクターの演技力を地元の観客に見せつけた。

層の厚い松岡バレエ団ならではの見所が、団員によるアンサンブル。地下の銅山に現れる様々な精霊を表現するコール・ドでは、総タイツ姿の一糸乱れぬ幾何学的な動きで、また地上の村でのロシアの民族色溢れるジプシーなどのエスニック・ダンスでは、情緒豊かに作品を盛り上げた。松岡玲子バレエ団は、豊富なダンサーと適材適所に招いたゲストたちで、珍しいロシア創作バレエの世界を再現してみせた。ナターシャ・ボリシャコーワ、ワジム・グリャーエフの演出・振付。竹本泰蔵指揮のセントラル愛知交響楽団が好演。
(10月8日、愛知県芸術劇場大ホール)