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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2005.10.10]
From Osaka -大阪-

●野間景の東洋的魅力と高岸直樹のスケールの大きな愛、野間バレエ『ジゼル』

 6年前に野間康子が演出・改訂振付をしたものをベースに、さらに自然なストーリー展開を心がけて上演された『ジゼル』。ジゼル&アルブレヒトは野間景と東京バレエ団の高岸直樹。

 高岸が舞台に現れると、そのスケールの大きさに、それだけで普通の村人ではない特別な人であることが伝わってくる。野間景も、折れそうなほど細く華奢で色白、おとなしげ。ジゼルのイメージにぴったりだ。

 ペザントは3カップル。6人にそれぞれヴァリエーション的な見せ場もある。印象に残ったのは、速い動きをテクニカルにこなした谷田奈々。バレエ教本のように美しい恵谷彰のバッチュ。そして比嘉さおりのはつらつして、ジャンプ音も静かな踊り。

 ジゼルとバチルド姫(谷藤桐子)の場面。首飾りのお礼にジゼルがバチルドの手の甲にキスしようとすると、さっと手をひくバチルド。 あとで、アルブレヒトにキスさせる(そこをジゼルが引き裂く)場面との対比で、身分の違いをくっきりと浮かび上がらせた。

 そして、狂気の場面。黒髪で正面を見据えるジゼルの姿を観ていると「あぁ、このジゼルは東洋人なんだ」とあらためてその魅力をと、どこか舞踏の世界に通じるものを感じた。驚いたのは1幕ラスト、剣を突き出すアルブレヒトにヒラリオン(山口章)は、なんと立ち向かうのだ。「刺してくれ」となる演出が一般的だが、これはこれで自然に感じられた。さまざまな舞台で山口を観たが、今回が最も魅力的だったと思う。

 2幕、幕が開く前に長めの、これまでの物語とこれからを暗示させるような演奏。ゆっくりと『ジゼル』の世界に引き込まれていった。 音楽のアレンジと指揮は稲垣宏樹。

 ミルタは長身で手足の長い西川奈央子。彼女くらい長身でないと、今回の主役2人に対するミルタの威厳は保てないだろう。アームスの柔らかみも心がけた美しいミルタだった。ドゥ・ウィリーの比嘉さおりと谷田奈々も、ゆっくりとした動きを正確にこなせるのはテクニックがあればこそ。

 さて、ジゼルとアルブレヒト。高岸の品格や踊りの質は言うまでもないし、野間の“死”の透明感のある美しさ、黒髪は本当に神秘的。2人の絵画のような美しさに魅了された。また、1幕では初々しいジゼルが2幕には母のような慈愛を感じさせていたこと、アルブレヒトの変わらぬ一途な愛が伝わったのも良かった。
(8月28日 堺市民会館大ホール)

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