ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2005.08.10]
From Nagoya -名古屋-

●第5回世界バレエ&モダンダンスコンクール スーパーガラ公演「メダリストたちの競演」

 3年に1度行われている「世界バレエ&モダンダンスコンクール」が、今年は、愛・地球博の開催期間中に合わせて、7月11日から16日まで開催された。そのオープニングとして、これまでのコンクール受賞者などの豪華な出演者によるメダリストによるガラ公演が、コンクールの舞台となる愛知県芸術劇場大ホールで華やかに繰り広げられた。

豪華キャストによる全11演目の幕開けを飾ったのは、第3回世界バレエ&モダンダンスコンクールで金賞を受賞した田中ルリと、ジャクソン・コンクールで金賞を射止め、鮮烈なデビューを飾ったラスタ・トーマスによる『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥ。音楽性が高く、流麗な動きで情緒を醸し出す田中の踊り、海賊の回転やジャンプを相変わらずの力強さでぴたりと決めたラスタ。 2人のそれぞれの踊りは期待どおりのものであったが、2人のもつこのような質感の違いが必ずしも互いの良さを活かすものではなかったことが惜しまれた。

 続く『ジゼル』は、第3回世界バレエ&モダンダンスコンクールで銅賞を受賞したヤオ・ウェイと、ヴァルナでの金賞受賞歴のあるサン・シェンイーによるパ・ド・ドゥ。少し緊張した面持ちではあったものの、清楚なジゼルと、落ち着いた演技を見せたアルブレヒトは優れたパートナーシップを見せた。

『海賊』

 新国立劇場からは、数々の公演の主役をつとめてきた志賀三佐枝と山本隆之が、2004年に牧阿佐美改訂し新制作した『ライモンダ』から第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを披露した。今回の上演をもって、志賀三佐枝は、現役の引退をするという。まだまだ踊れるのでは、と思わせるような安定した踊りであったが、最高のものだけをみせたいというプリマバレリーナの崇高な想いと引き際の潔さには、拍手を送りたい。


『Revelation』
今回、唯一モダンダンス部門の受賞者として登場したのは、第3回世界バレエ&モダンダンスコンクール金賞の平山素子。平山は、受賞したときにラウンドIIで踊った『Revelation』を踊って、最近の活動の充実ぶりを証明してみせた。このコンクールでデビューしたといってよいダンサーだけに、この作品への思い入れは一層のものだったろう。

 次の『眠れる森の美女』の第3幕の結婚の場面を踊ったのは、第3回世界バレエ&モダンダンスコンクール・シニア部門で金賞を受賞したデニス・マトヴィエンコと、この物語のようにマトヴィエンコと本当に結ばれたウクライナ国立歌劇場バレエ団のアナスタシア。本物のプリンセスとプリンスを思わせる気品にはため息すら聞こえていた。

 第1部の最後は、日本を代表する草刈民代とレモンド・レベックによる『レダと白鳥』。ローラン・プティによる振付で、2人が身体を寄せ合い、腕を広げながら首を傾げて羽ばたくさまは、白鳥さながら。草刈の情緒溢れるしなやかな肢体が生かされた優美な作品となっていた。

 第2部の最初の作品は、高円宮殿下と親交の深かったロイヤル・バレエ団のプリマ、吉田都が同じバレエ団のボネッリと共に踊った今回のための新作『DARKNESS&LIGHT』。殿下のことを思って、悲しみの中にも希望のもてる明るい作品にしたいと吉田が語っているとおり、ウイリアム・タケットの振付は、ミニマルなマイケル・ナイマンの音楽に合わせて、モダンな動きを徐々にクレッシェンドしながら、後半にはリフトを多用し、希望に向かって少しづつ進んでいく本公演趣旨に合った作品であった。

『DARKNESS&LIGHT』

『白鳥の湖』の第2幕を踊ったのは、ルシア・ラッカラとシリル・ピエールのカップル。プティのミューズというイメージが強いラッカラであるが、白鳥のアダージオのような優美な踊りもぴったりで、手脚の細かな表情が遠い客席までみえるかのように感じられる完璧なオデットだった。もちろん私生活でもパートナーであるピエールとのあうんの呼吸はいうまでもない。

 ニューヨーク・シティー・バレエの常任振付家クリストファー・ウィールダンが振付けたアブストラクト・バレエ『Liturgy』を踊ったのは、長身のマリア・コウロスキーとアルバート・エヴァンス。アルヴォ・ペルトの「ヴァイオリン、弦楽器、打楽器のためのフラトレス」の音楽にのって、ダイナミックに、そしてスピーディーに動き続ける2人の踊りは、他の作品とは対照的であり、現代の都会を象徴しているかのようであった。

『白鳥の湖』

『Liturgy』

 フォーキン振付による『シェラザード』では、イーゴリ・ゼレンスキーが俳優と見間違うほどの演技力をみせ、 また彼に憧れていたというポリーナ・セミオノワはその抜群のプロポーションを生かしたしなやかで妖艶なダンスをみせた。

 ラストを飾ったのは『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ。最も盛り上がりを見せるこの第3幕の結婚のシーンを踊ったのは、古典バレエの殿堂から現代の最高峰のダンサーのスヴェトラーナ・ザハロワとアンドレイ・ウヴァーロフ。期待どおりに優れたテクニックを十分にみせ、公演の最後を大いに盛り上げた。

 最後の特別フィナーレでは、出演者全員によるコーダが行なわれ、難しい回転やジャンプのオンパレード、観たこともない豪華なスターたちの競演に会場も沸きあがった。ただひとつ少し残念なのが、こういったガラ公演では、モダン作品が上演されることが少ないということ。クラシックとモダンの両方のコンクールをもつことが特徴でもある同コンクールであり、また世界的な流れとしてもクラッシクとコンテンポラリーの垣根がなくたってきている今日だからこそ、このような公演では、もう少しモダンの作品も盛り込んでもらえたら、さらによかったと思った。
(7月10日 愛知県芸術劇場大ホール)

『シェヘラザード』

『ドン・キホーテ』

コーダ
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