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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2005.06.10]
From Osaka -大阪-

●第18回こうべ全国洋舞コンクール「モダンダンス部門、創作部門」

 こうべ全国洋舞コンクールは、クラシック、モダンダンス、創作の3部門。 以前は、同日に複数部門の審査が行われていたこともあったが、その後、完全に日程を独立させ、今年は4月23,24日にモダンダンスと創作部門、5月1,3,4,5日にクラシック部門が行われた。 よって出場者は、複数部門に参加することも可能。モダンダンスと創作部門の審査が行われた神戸新聞松方ホールにも、多くのバレエダンサーやバレエ教師の姿が見られた。

 4月23日に行われたモダンダンス:シニア部門(19~30歳)には50人が出場。地元関西よりむしろ、東京や埼玉など関東、あるいは秋田、宮城などからの参加者の活躍が目立った。 作風は、いわゆる現代舞踊だけでなく、ヨーロッパのコンテンポラリー風、クラシックをベースにしたジャズダンス風など様々。 全体のレベルは高く予選(決選と同時審査)とはいえ、見ごたえがあった。

そのなかで見事、一位となったのは、『あの頃』を踊った富士奈津子(19歳/金井桃枝舞踊研究所)。 コンクール入賞の常連ともいえ、同コンクールでも一昨年にジュニア1部で2位に入賞している。初めて挑戦したシニア部門で、いきなりの優勝。 表彰式では、結果がわかった瞬間から号泣していた。「小さいときからシニア部門は、とてもレベルが高いと思っていたので、優勝という結果にびっくりしています」と本人。 「あの頃」とは、一昔前の懐かしい日本の風景。下駄履きに、つばの広い麦藁帽子という姿で登場し、伸びやかに踊った。ジュニア時代に培った優れた運動能力と独自の演劇性。 隙の全くない動きと、とぼけたような味のある表現がうまく同居していた。

第2位は、池田美佳(20歳/蔦モダンバレエ研究所)。『風紋に忘れかけた時を刻み』は、日本独自ともいえる「現代舞踊」の良さが生きた作品。 つまり叙情豊かで、しっとりとした落ち着きをもち、内に溜め込んだような情念を感じさせる。動きの安定感や、独自の間のとり方もいい。完成度の高い演技だった。

富士奈津子


金井桃枝作品
同23日に引き続き行われた創作部門には16組がエントリーした。この部門も様々なタイプのダンスが登場したが、モダンダンス部門ほどに、レベルの高さを感じなかった。 モダンダンス部門で素晴らしい作品をダンサー(生徒という場合が多い)に振付けた人たちも参加していたが、「創作」となると身構えるのか、表現がストレートすぎたり、 また逆に様々な表現を盛り込んで、整理がつかなくなってしまったり。そのなかで選ばれたのは優秀賞2作(最優秀賞は該当なし)。 『雨にまつわる話』は、金井桃枝作品。モダンダンス、シニア部門優勝の富士奈津子と小林洋壱が踊った。黒い服の男女が織り成す、雨の日の物語。 そのシーンが断片的に語られる。富士のダンスセンスがここでも生きた。いや、『あの頃』同様、彼女のダンスセンスを生かす振付だというべきか。
もう一作は前沢亜衣子作品『シンシン沁・・・・・・』。赤い傘を手にした男性(乾直樹)。女性(前沢)は、大きな(植木)鉢に入ったり。 男女の関係も、傘や鉢が何を暗示するのかもわからない。なんの脈絡もなさそう、だけどモノ(傘と鉢)と男女は不思議な関係性を保ちながらダンスが展開されていった。 やはりコンクールの常連、前沢が、肩の力をうまく抜いて作った作品だ。

24日には、まずモダンダンス・ジュニア2部(8歳~14歳)が行われた。参加者はモダンダンス部門中、最も多い73人(エントリー75人中、欠場2人)。 そのなかで、ダントツ首位となったのは、『さとうきび畑の唄』を踊った橋本奈々(12歳/マヤバレエスタジオ)。 昨年12月の秋田コンクールなどですでに優勝し、十分に踊りこんでいる感がある。誰もが知るこの曲のメロディはもちろん、イメージを生かした振付も素晴らしい。 橋本は、その内容をよく理解し、動きにメリハリをつけて踊る。コンクールということを忘れ、そのひたむきな演技に引き込まれた。

橋本奈々


林芳美
続くモダンダンス・ジュニア1部(15歳~18歳)には25人が出場。この部門も全体レベルが高かった。 1位は、『・・・もう、なわとびなんか・・・』を踊った林芳美(15歳/金井桃枝舞踊研究所)。なわとびの縄を手にした少女は、やがて、舞台に背を向けて、縄を手放す。 少女が少し大人に近づく、その時期を描いているようにも見える。『なわとび』は子ども時代のシンボルか。 回転やジャンプといったテクニックが、うまく『なわとび』の動きに取り入れられていた。同2位は『蜘蛛』を踊った新保恵(15歳)。 彼女も金井桃枝門下である。つまり、シニア1位、ジュニア1部、1・2位が金井桃枝舞踊研究所所属。そのうえ創作部門では金井自身が優秀賞を受賞したわけだ。 この快挙の理由には、先にも述べたようにダンサーの個性を生かした振付、また小道具(なわとび、帽子、傘など)使いの巧さ、そしてもちろん、技術力の確かさなどが挙げられよう。 金井自身が韓国舞踊を習得しているため、そこには、素早い回転など韓国舞踊のテクニックも上手に取り入れられていた。
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