ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2005.06.10]
From Nagoya -名古屋-

●カリブ海から日本へ「キューバの熱い風」

 キューバで著名な舞踊団、ナルシソ・メディア・ダンスカンパニーの公演が愛知県芸術劇場小ホールで開催された。 東京でも開催されていて、先月号で佐々木さんがレビューを執筆されているが、個人的にも大変印象的な公演だったので、愛知公演も触れさせていただきたい。

ナルシソ・メディアは、97年に埼玉で開催された国際創作舞踊コンクール大賞等を受賞し、日本でも話題となっている国際的な舞踊団だ。 しかし、そんな前情報も地方ではなかなか伝わりにくいらしく、客席がまばらな会場で上演するダンサーたちが気の毒に感じたのであるが、 しだいにダンサーたちのエネルギッシュな踊りに引き込まれ、圧倒されていくのは私たち観客の方であった。

 最初の作品『カーニバル創世記』は、キューバの伝統舞踊から、アメリカのモダンダンス、ヨーロッパ的なダンスシアター、コンタクトなど、ダンスの様々な技法を取り入れ、人間の総体に迫ろうとした意欲作。
 2作目は、カフカの変身に基づいた『メタモルフォーシス(変身)』。ドラム缶のような筒の中にはいった男性ダンサーたちが、筒から、もぞもぞと顔を出すところから作品は始まる。 合計で筒の中に入っているダンサーは3人。彼らがまるでひとつの生き物のように3つの身体のぞかせているが、筒が倒れないようにするには絶妙なタイミングとバランス、そして強靭な筋力が必要だ。 さなぎのように這い出した3人は、しだいに筒を転がし、その上をジャンプで乗り越え、少しずつクレッシェンドして、ダンスのダイミズムへと駆け上がる。 ダンスのパワーが凝縮されたような完成度の高い作品だった。



 最後の『ボディー・ミュージック』では、ダンスと音楽がひとつであることを感じさせる貴重な時空間を体験することができた。 様々な民族楽器をもったダンサーたちは、楽器を身体に打ちつけながら、音楽を奏でていく。 その質は高く、民族芸能において、ダンスと音楽が同等であるように、彼らはみな、民族芸能の伝統を感じさせる音楽性を身につけていた。

 音楽が段々と盛りあがっていったところで、観客も呼ばれ、劇場にいるすべての人が、自然のうちに大団円を作った。 フラットな劇場空間に大きな輪になって広がったすべての観客が簡単な身振りをまねし、歌をうたい、音楽を奏でる。 劇場にいる誰もが、民族芸能から始まりながらも、民族を超えることのできる舞踊の本質を感じていたに違いない。 伝統と現代の時空の狭間にいるような不思議な感覚に身をゆだねるように、気づいたら、私もその輪の中で踊っていた。
(2005年4月29日 愛知県芸術劇場小ホール)