ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.05.10]
From Nagoya -名古屋-

●笠井、ピエール・ダルド、上村、そして文楽による『恋人形』

 名古屋駅から名鉄の特急で35分、知多武豊駅に着く。伊勢湾の奥から足の形のように伸びた知多半島の中頃である。この武豊町町民会館ゆめたろうプラザで、ダンスと文楽の融合と銘打たれた『恋人形』の公演が行われた。

 振付・ダンスに笠井叡。パリ・オペラ座のスジェだったピエール・ダルト、上村なおか、Abe“M”ARIAが踊り、文楽人形遣いは桐竹勘十郎、語りは竹本津駒大夫というキャスト。主催はPAFA(パフォーミングアーツ・ネットワークあいち)、愛知県文化情報センターである。

 見事な文楽人形に恋した男が人形の精と愛を深めてゆき、恋を成就させるただひとつの道を見つける、という筋立てである。

 見所は、まずは上村なおかの美しい人形姿であろう。一見、能面風の冷ややかな表情がしばしば、恋に身を焦がす情念の奥深くに揺らめくほむらを鮮烈に映す。人形は屍体で魂のみが永遠にたゆたっているというが、全身全霊を現との恋に投じた凄絶さすらを感じさせた演技であった。根気よくソロダンスを素の舞台に創ってきた営為の成果だろうか。

 上村にからむピエール・ダルトもまた見事だった。もともと文楽が好きだったからか、身体くまなく神経をはりめぐらせた緊迫感溢れる演技、ダンスであった。さすがオペラ座の檜舞台で踊っていたダンサー、燃えるような恋のスピリットを明解に描いた。シンプルであったとはいえ、二人の気が会場を圧し観客を舞台に惹き込んだのは間違いない。それはつまり、笠井の振付が優れていた証左であり、文楽人形と語りが魅力的であったからである。いささか作り過ぎの観なきにしもあらずのコラボレーションを、演者たちの熱い情熱がもり立てた素敵な公演であった。
(3月27日、武豊町町民会館ゆめたろうプラザ)
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