ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津絵理 text by Eri Karatsu 
[2004.07.10]
From Nagoya -名古屋-

夏に観る『くるみ割り人形』安田美香子バレエ団公演

 この季節に『くるみ』? と思って会場に足を運んだものの、夏にみる『くるみ』も意外とこれが面白かった。12月になると、この作品ばかりが行われるので、少々食傷気味になってしまうのだが、この季節に行われると、かえって新鮮な気持ちで観ることができるようだ。

 安田美香子バレエ団の『くるみ割り人形』は、安田が牧阿佐美バレエ団時代に初めて主役デビューしたときと同じ、ジャック・カーター版。カーター版は、1978年から牧阿佐美バレエ団で上演されていたが、現在では、牧バレエ団も三谷恭三版へと変わっており、牧バレエ団でも観ることができない。これはイワーノフ版をもとにしているものの、残されていた資料だけでなく、今世紀初頭にロシアで『くるみ』の上演にかかわったスタッフやチャイコフスキーがリハーサルで話していた意見などを取り入れて製作されたものである。近年では、様々な趣向を凝らした『くるみ』が存在する中、カーター版では、子供の世界と大人の世界の対比が鮮やかに描かれているところに特徴がある。

 子どもの世界を描いたプロローグでは、クララを子供が演じ、ねずみや兵隊など、沢山の子供たちが出演する。そして大人の世界への入り口であるプロローグから第1幕、客間から雪の情景に変わるシーンでは、緞帳をおろさず、執事が絵本のページをめくるように舞台を転換させる。出演者が場面転換を行うという意外性が人気の演出である。

 久しぶりに雪の女王と金平糖の精を踊った安田は堂々とした貫禄のある踊りが、王子役をつとめた新国立劇場のソリスト陳秀介は、清潔感溢れる身のこなしに優しい王子像を映し出したような柔らかな跳躍が印象的であった。また棒キャンディー(フランス)を踊った新国立劇場ソリストのトレウバエフ・マイレンが、端正かつ力強い踊りで全体を引き締めた。(6月26日 愛知県芸術劇場大ホール)