初の東京公演開催! PASONA Awaji World Ballet『鶴の恩返し』が伝えたメッセージ
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ワールドレポート/東京
小野寺 悦子 Text by Etsuko Onodera
PASONA Awaji World Ballet
「with Love〜バレエ『鶴の恩返し』と和の鼓動〜」針山愛美:演出・構成・振付
PASONA Awaji World Balletが、この秋、初の東京公演を開催した。プログラムは二部構成で、第一部では『鶴の恩返し~いのちへの感謝と平和への願いを込めて~』を、第二部では「淡路島からおくる、新たな芸術の可能性」をテーマに太鼓とバレエのコラボレーションを披露した。
「PASONA Awaji World Ballet」は、パソナグループが手がける「ウクライナ支援プロジェクト」のもと発足した淡路島発のバレエ団。針山愛美とウクライナから避難してきた2名のダンサーからスタートし、現在はウクライナのバレエダンサーや指導者、さらに日本人ダンサーも加わり、計17名が在籍している。ユニークなのは、団員はダンサーであり、パソナグループの社員であるという点だ。彼らはアーティストでありながら会社員として生活を保障され、淡路島を拠点に芸術活動を続けている。
第一部で上演された『鶴の恩返し~いのちへの感謝と平和への願いを込めて~』は、お馴染みの日本民話『鶴の恩返し』を題材に、芸術監督の針山愛美が演出・構成・振付を手がけたオリジナル作。2024年6月に淡路島で初演を迎え、同年12月にはラトビア国立歌劇場で上演を、翌年4月に関西万博のオープニングを飾るなど、さまざまな形で再演を重ねてきたPASONA Awaji World Balletの代表作である。

撮影:田中亜紀

© Sotoma Mitsuki
幕開け冒頭、鶴に扮した針山らダンサーがあらわれ、続いて若き青年が傷ついた一羽の鶴を助けるところから物語は始まる。ある日青年は大けがを負うが、鶴は自分の羽根でこの世の痛みや悲しみを拭い去る不思議な帯を織りあげ、青年の怪我を治す。しかし、帯は悪者に狙われ......。
針山が扮するのは鶴の "一会" で、繊細なポワントワークと手の表情で鶴をかたどり、キャラクターを表現していく。端正なクラシックの素地が際立ち、とりわけアラベスクであらわす鶴のラインが美しい。アームスの羽ばたきも白鳥のそれとはまた違い、ゆったりとして和の趣きを感じさせる。何より目を奪われたのが、慈愛に満ちた佇まい。群舞を引き連れ、中央に立つ彼女の姿は凜として揺るぎない。それはダンサーとしての卓越した力量に加え、カンパニーのトップとしての求心力に重なって見えた。
青年 "一期" 役は倉智太朗。野性味を孕むダンサーで、舞台を大胆に横断し、役どころを颯爽と体現。テクニックに優れ、回転技ではコントロールのきいたホールドで拍手を誘う。パ・ド・ドゥでは朴訥な気配をもって針山をサポートし、物語を力強く引っ張っていた。
桜の花びらが舞い散るなか、ウクライナのダンサーたちが、色とりどりの和傘を手に踊る。彼らは総じてスタイルに恵まれ、原色の衣裳が映え、何とも鮮やか。リフトやフェッテと大技をダイナミックな身体で繰り広げ、日本の昔ながらの民話にスケール感を加味していく。避難民の支援からはじまったプロジェクトとはいうものの、難度の高い技もクリアし、日頃の研鑽を思わせる。何よりウクライナのダンサーたちの生き生きとした姿が印象的で、バレエへの情熱と純粋な踊る喜びが伝わってくるかのようだ。

撮影:田中亜紀

© T.Oshida
作中はプロジェクションマッピングを効果的に使用し、彩り豊かな世界を創出。ひらひらと舞い落ちる羽根に、降り積もる雪と、どこか懐かしい山里を背景に、風情溢れる日本の四季を新しい表現で映し出した。演出も工夫を凝らし、とりわけ障子に写る影絵で鶴が帯を織るシーンが面白い。楽曲もオリジナルで、『かごめかごめ』『夕焼け小焼け』など耳馴染みの良い童謡を随所に盛り込み郷愁を誘った。これらを全て針山が指揮し、まとめ上げた。
針山は副題に掲げた「~いのちへの感謝と平和への願いを込めて~」を鶴の帯に託し、メッセージをストレートにバレエ作品にのせる。ダンサーたちが国境も言葉の壁も超えて帯を手にし、笑顔で踊るシーンが象徴的だ。針山自身、軍事下のソ連でバレエを学び、不安定な情勢のなか踊り、明日をも知れぬ日々もあったと聞く。危機感を常に肌で感じてきただけに、その想いは真味を持って響いた。

撮影:田中亜紀

© T.Oshida
第二部は小品集で、PASONA Awaji World Ballet出演の『ドン・キホーテ』より夢の場、針山による『瀕死の白鳥』を上演。壊れそうなほど華奢な針山が、舞台にくずれゆく姿は痛々しく、白鳥の最期を切実に踊った。さらに、太鼓奏者の上田秀一郎とパソナグループが展開する淡路の太鼓集団「鼓淡」、地方創生エンターテイナーらによる生演奏に、オペラ歌手との競演まで。活気に満ちた盛りだくさんのプログラムで、満足感の高いステージとなった。
(2026年9月23日 ニッショーホール)

© T.Oshida

© Sotoma Mitsuki

撮影:田中亜紀
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