ソリスト総出演で充実のステージ、ウクライナ国立バレエ「親子で楽しむ夏休みバレエまつり」
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ワールドレポート/東京
小野寺 悦子 Text by Etsuko Onodera
ウクライナ国立バレエ
親子で楽しむ夏休みバレエまつり
ウクライナ国立バレエ「親子で楽しむ夏休みバレエまつり」が、この夏、東京国際フォーラムで上演された。「親子で楽しむ」は2006年から始まったシリーズで、4歳の子供から鑑賞が可能。クラシック・バレエの人気作品をハイライト形式で上演し、子供たちにバレエ公演の楽しさを伝える夏の恒例企画である。観客の大半が親子連れで、会場の雰囲気もどこか和やか。プログラムは幅広く、ウクライナ国立バレエのレパートリーから古典の名作まで、計8演目がラインナップされている。
今年はMCに「ヤマカイTV」で知られるYouTuber、ヤマカイ&ネレアが登場。まずは2人が舞台上で演目を解説し、作品に導入していく。チャンネル登録者数72万人を誇る人気YouTuberだけあり、会場の巻き込み方は実に巧みで、子供たちの心を早くもぎゅっと掴んでしまう。

『ゴパック』

『ゴパック』
幕開けは『ゴパック』。大輪のひまわりを背景に、民族衣裳に身を包んだダンサーが踊る、ウクライナ国立バレエの名レパートリーである。プリンシパルのヴォロディミール・クツーゾフら、男性ダンサーがこれでもかとアクロバティックな技を次々と披露し、強靱な脚力とスタミナをみせつける。一方、女性たちは軽やかなステップで、からりと明るく、陽気に踊る。民族衣装の純潔と愛らしさもあいまって、ウクライナの豊かな大地を感じさせる心温まる作品だ。
『ラ・シルフィード』第2幕よりパ・ド・ドゥには、カテリーナ・デフチャローヴァとプリンシパルのニキータ・スハルコフが出演。スハルコフは正確なポジションが際立ち、踊りは正統派。シルフィードに扮したデフチャローヴァは、大きなマイムでドラマティックに作品の世界観を描き出していた。
『人形の精』は、カテリーナ・チュピナ、オレクシィ・シュヴィドキー、ダニール・シルキンによるパ・ド・トロワ。可憐で芯の強さを感じさせるチュピナに、シュヴィドキーとシルキンの2人が扮するピエロたちとのやりとりが楽しい。ユーモアたっぷりに技を競い合い、見応えある作品に仕上げていた。
同団の『コッペリア』は、ウクライナ出身のウラジミール・マラーホフがウクライナ国立バレエ学校のために改訂振付けをしたレパートリーで、本公演のために特別に披露された。今回は第一幕が上演され、アレクサンドラ・パンチェンコとダニール・パスチュークのペアが踊っている。ウクライナのダンサーは総じてスタイルと美貌に恵まれ、子供たちの憧れるバレエの在り方を具現化したよう。客席から「綺麗!」と歓声が挙がるなど、本公演ならではの微笑ましいシーンも。両者とも今注目のファーストソリストで、今後さらなる人気が予想される。
『海賊』第2幕よりグラン・パ・ド・トロワには、エリーナ・ビドゥナ、ヴォロディミール・クツーゾフ、ダニール・シルキンが出演。キャラクターシューズでの民族風の踊りもあり面白い。クツーゾフとシルキンがここでもテクニシャンぶりを発揮。ビドゥナは伸びやかで華を感じさせ、コントロールのきいた回転も見事。

司会のヤマカイ&ネレア

『ゴパック』

『タリスマン』

『タリスマン』

『タリスマン』

『タリスマン』
『タリスマン』のグラン・パ・ド・ドゥは、カテリーナ・ミクルーハとダニール・パスチュークのファーストソリストのペア。バレエ学校時代から注目されていたミクルーハだが、ここにきて一段と飛躍した感がある。思い切りのよいステップと、手振りのニュアンスで生き生きとキャラクターを体現。愛らしい笑顔は変わらず、思わず目を奪われるダンサーだ。
『瀕死の白鳥』を踊ったのは、プリンシパルのアナスタシア・シェフチェンコ。『雪の女王』で演じた気高く冷たい女王が印象に残るが、ここではまた違った孤高の哀しみをみせる。冒頭のアームスの羽ばたきは控えめに、繊細なパ・ド・ブレで静謐な気配を放つ。凜とした気配で舞台を進む姿はまるで湖面をたゆたうかのよう。本公演後、ウクライナ政府から最高位の国家名誉称号「ウクライナ人民芸術家」が贈られている。

『瀕死の白鳥』

『瀕死の白鳥』

『瀕死の白鳥』
ラストは『ドン・キホーテ』第3幕よりよりグラン・パ・ド・ドゥ。イローナ・クラフチェンコとニキータ・スハルコフ、プリンシパル2人の競演だ。勝ち気でつんとしたクラフチェンコのキトリに対し、スハルコフは誠実な趣きのバジル。友人のヴァリエーションには、石井久美子バレエプロジェクトとのコラボレーション企画として、プロのバレリーナを目指す2人の生徒が出演。ウクライナと日本を結ぶ懸け橋というが、本公演ならではの評価すべき試みだろう。
カーテンコールではダンサーたちがフェッテ競争を繰り広げ、サービス精神もたっぷり。長く続いた来日ツアーの最終日間近にしてなお、疲れをみせず溌剌とした姿をみせる。
今回の来日公演で感じたのは、ソリストたちの著しい成長だ。寺田宜弘芸術監督の采配と、公演を重ねて身につけた真の実力、ウクライナのダンサーとしての矜持か。クオリティは総じて高く、再びの来日を楽しみにしたい。
(2026年8月9日 東京国際フォーラム)

『ドン・キホーテ』

『ドン・キホーテ』

『ドン・キホーテ』

カーテンコール

Photo:Hidemi Seto©KORANSHA(すべて)
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