マリインスキー・バレエで活躍するヤーナ・パネヴァ、グジェレフ暸舞ほかが華やかに踊った日本国際バレエフェスティバル

ワールドレポート/東京

針山 真実 Text by MAMI HARIYAMA

日本国際バレエフェスティバル

「ガラコンサート」

8月6日、「世界で活躍するダンサーと、未来を担う若き才能の共演」と題し、川崎市のカルッツかわさきで、日本国際バレエフェスティバル主催による特別公演「ガラコンサート」が開催された。

日本国際バレエフェスティバルは、奈良国際バレエ工房から2018年に事業を引き継ぎ、神奈川県へ拠点を移転。より国際的な活動へと発展させることを目指し、以降、毎年夏にフェスティバルを開催している。
夏のフェスティバル期間だけでなく、海外との交流を深めながら、海外から講師を招いたワークショップなども実施。また、定期的に留学生を世界各地のバレエ学校へ送り出すなど、若いダンサーたちの育成に力を入れている。

今年は8月3日から6日まで、さまざまなジャンルからエントリーできるコンクールが開催され、国内外から多くの若きダンサーたちが川崎に集まった。
そして最終日、「世界で活躍するダンサーたちによる舞台芸術を、これからの舞台を担う若い世代に届けたい」という同団体の思いから、日本国際バレエフェスティバル特別公演「ガラコンサート」が行われた。
コンサート前半は、主にコンクール期間中に審査員によって選抜された「未来のスターダンサー」と呼ばれる若手ダンサーたちが登場した。
選抜されたダンサーたちだけあって、どの踊りからもそれぞれの将来性を感じることができた。審査員に選ばれプロダンサーと同じ舞台に立つという大きな経験に、少し緊張した様子を見せるダンサーもいたが、この舞台で得た経験はきっとこれからの糧になっていくのだろう。

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鈴木類 © Mariko Matsubayashi

小学3年生の鈴木類は、『パリの炎』の男性ヴァリエーションを披露。小さな身体にもしっかりと気持ちを込め、力強く、役になりきった踊りで会場を沸かせた。終演後、観客の投票によって決まるオーディエンス賞も獲得した。
中学3年生の今井希英、『コッペリア』よりスワニルダのヴァリエーションを踊った。美しい足のラインと丁寧な踊り方が印象的で、これまで目にしたスワニルダとはまた違った、高度な振付もしっかりと自分のものにしていた。
高校生の竹内友希は『ハレルキナーダ』のヴァリエーションを披露。細かなところまで隙がなく、しっかりと踊り込まれていることが伝わってくる。見せるべきポイントをきちんと押さえた踊りで印象に残った。

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今井希英 © Mariko Matsubayashi

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竹内友希 © Mariko Matsubayashi

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坂東 怜 © Mariko Matsubayashi

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和本 悠汰 © Mariko Matsubayashi

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木村綾乃、飯田慧 © Mariko Matsubayashi

若きダンサーたちの踊りを楽しんだ後、プロフェッショナルダンサーが登場すると、やはり舞台の空気が変わる。その差は格段に大きく、経験を積んだダンサーだからこそ生まれる表現力を改めて感じさせられた。
ワシントン・バレエで活躍する木村綾乃と飯田慧は、『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥを披露。
霊となったジゼルを演じる木村の柔らかさ、清楚で今にも消えてしまいそうな空気感は、経験を重ねたダンサーだからこそ表現できるものだろう。飯田による安定したサポートによって、木村の美しさもさらに際立っていた。
会場全体が静けさに包まれ、思わずため息が漏れるようなデュエットだった。
続いて、ポーランド国立バレエで活躍する小森世楽と、マリインスキー・バレエで活躍するグジェレフ暸舞による『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥ。
小森とグジェレフはともにドイツのジョン・クランコ・スクールの卒業生。二人は身長や体格のバランスもよく、舞台上での姿がとてもよく似合っていた。
小森が見せるラインは強く美しく、ヴァリエーションではダイナミックなジャンプも印象的。グジェレフも躍動感あふれる踊りを見せ、ジャンプの高さだけでも客席から拍手が起こるほどだった。力強く、見応えのあるアリを演じた。
チェコ国立ブルノ・バレエで活躍する葉安那と磯村凛は、『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥを披露。
二人からは終始楽しそうな雰囲気が伝わってきた。キトリとバジルの仲睦まじさに加え、二人の息の合ったパートナーシップも魅力的で、見ているこちらまで自然と笑顔になる。
葉のテクニックは正確で力強く、バランスや安定感も抜群。磯村も軽やかにテクニックを披露し、会場を大いに楽しませた。
ガラ・コンサートのゲスト出演者の中で唯一コンテンポラリーダンスを踊ったのは永森彩乃。国際的な振付家として活動しているポール・ジュリウスの作品「Echos of Her」を披露した。永森はフリーランスダンサーとして活動しているが、動きの滑らかさ、力の強弱、間の使い方、表現力、感情まで生徒たちとは圧倒的な違いで彼女が作り出す空間の中に引き込まれた。
『シンデレラ』のパ・ド・ドゥを踊ったのは、サラトフ・オペラ・バレエ・シアターで活躍する柴垣未羽と廣瀬晃太朗。
サラトフ版の振付ということで、これまで見る機会のなかった作品だったが、随所に多くのリフトやパートナリングが盛り込まれており、まずその高度な技術に感心させられた。コンクールに出場した若手ダンサーたちにとっても、大きな刺激になったのではないだろうか。
柴垣はとても美しいダンサーで、高い位置までリフトされても、その姿勢とラインの美しさに目が奪われる。
このパ・ド・ドゥにはヴァリエーションやコーダはなく、二人は息つく間もなく踊り続ける。最後まで息の合ったパフォーマンスを見せ、強い印象を残した。

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小森世楽、グジェレフ瞭舞 © Mariko Matsubayashi

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グジェレフ 瞭舞 © Mariko Matsubayashi

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葉 安那、磯村 凛 © Mariko Matsubayashi

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永森彩乃 © Mariko Matsubayashi

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柴垣未羽、廣瀬晃太朗. © Mariko Matsubayashi

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柴垣未羽、廣瀬晃太朗 © Mariko Matsubayashi

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山田ことみ、パク・ユンジェ © Mariko Matsubayashi

今回嬉しかったのは、今年も来日したパク・ユンジェの姿を見ることができたことだ。
ローザンヌ国際バレエコンクールで金賞を受賞したパク・ユンジェと、アメリカン・バレエ・シアターから帰国し、一時活動を休止していた山田ことみが「パリの炎」のグラン・パ・ド・ドゥを披露した。
二人が登場すると、客席から大きな拍手が湧き起こった。生き生きとした躍動感にあふれる二人の踊りは、見ている人の心まで明るくしてくれるようだった。
ユンジェは昨年からさらにパワーアップした技術を見せ、まだ17歳とは思えない踊りに圧倒された。
一方の山田も、アメリカン・バレエ・シアターで活躍した実力を存分に発揮。活動を休止していたことをまったく感じさせない安定した踊りを見せ、ユンジェに引けを取らない存在感と、観客を惹きつける魅せ方は健在だった。

ゲスト出演の最後を飾ったのは、マリインスキー・バレエで活躍し、今年のモスクワ国際バレエコンクールでも金賞を受賞したヤーナ・パネヴァと、グジェレフ暸舞による「黒鳥」のグラン・パ・ド・ドゥ。
ヤーナの長い手足は踊りをさらに華やかに見せ、登場した瞬間から目を奪われる。
普段はグジェレフとのペアを組む機会はそれほど多くないそうだが、二人ともさすがマリインスキー・バレエで認められている期待の若手だけあり、作品の役柄にしっかりと入り込み、それぞれの魅力を存分に発揮していた。
さらに、二人からはロシアで培われた魅せ方、迫力、そして確かなテクニックが感じられ、期待していた客席からは大きな歓声と拍手が湧き起こった。

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パク・ユンジェ © Mariko Matsubayashi

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山田 ことみ © Mariko Matsubayashi

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ヤーナ・パネヴァ、グジェレフ瞭舞 © Mariko Matsubayashi

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ヤーナ・パネヴァ、グジェレフ瞭舞 © Mariko Matsubayashi

コンサートの最後は、出演者全員によるフィナーレ。
コンクールに出場した希望者、「未来のスターダンサー」に選ばれた若手たち、そしてゲストダンサーが全員舞台に立ち、ともに一つの作品を作り上げた。
小学生からプロフェッショナルダンサーまで、幅広い世代が同じ舞台に立つ姿は、このフェスティバルならではの光景だろう。
最後に出演者全員が列になり、華やかにポーズを決めると、会場からはこの日一番ともいえる大きな拍手が送られた。
今回、「未来のスターダンサー」に選ばれなかったダンサーたちにとっても、世界で活躍するプロダンサーの舞台を間近で見たこと、そして同じ舞台に立った経験は、これから新たな目標を見つけるきっかけになるのではないだろうか。
これからが楽しみな若手ダンサーたち、そして、それぞれの魅力を存分に発揮したプロフェッショナルダンサーたち、世代を超えた共演によって、それぞれの現在地と、これから先の可能性の両方を感じることができる、充実したガラコンサートだった。

日本国際バレエフェスティバルでは、このコンサートの配信も予定しているという。会場で見た数々の見応えあるパフォーマンスを、もう一度映像で楽しめる機会にも期待したい。
(2026年8月6日 カルツかわさき ホール)

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© Mariko Matsubayashi

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© Suu Tanaka

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