鳥取・高知・石川 三県共同制作によるバレエ『赤毛のアン』改訂/新演出版の制作発表記者会見がカナダ大使館で開かれた

ワールドレポート/東京

小野寺 悦子 Text by Etsuko Onodera

鳥取県発のオリジナルバレエとして、2024年に初演を迎えた「バレエ『赤毛のアン』」。カナダの作家モンゴメリの代表作『赤毛のアン』を題材に、指揮・音楽監督を鳥取県出身の指揮者・井田勝大が、作曲を葛西竜之介、振付・演出を元バーミンガム・ロイヤル・バレエ ファーストソリストの山本康介が手がけ、全3幕のバレエ作品に仕上げている。主演のアン・シャーリー役には元K-BALLET TOKYO プリンシパル・ソリストの小林美奈、オーディションで選ばれた現地キャストも出演。オーケストラの生演奏と共にアンの成長物語を描き、好評を博してきた。

2年ぶりの全幕上演となる今回は、改訂/新演出版としてブラッシュアップ。鳥取・高知・石川の三県共同制作により、各県で上演を行うこととなった。
アン役は初演に続き小林が三県の全公演で主演。また鳥取公演ではギルバート・ブライス役を吉田周平(スターダンサーズ・バレエ団)が、高知公演ではギルバート役を栗山廉(元K-BALLET TOKYO プリンシパル)、石川公演ではギルバートを吉田、マシュウ・カスバート役を福田圭吾(元新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト)、マリラ・カスバート役を永橋あゆみ(谷桃子バレエ団プリンシパル)が踊り、ほか各地のオーディション選抜メンバーの出演を予定している。

上演を前に、東京・赤坂の在日カナダ大使館で制作発表記者会見が開かれ、本公演主催の公益財団法人鳥取県文化振興財団理事らが経緯を紹介。続いて指揮・音楽監督の井田、作曲の葛西、振付・演出の山本、アン役の小林によるトークセッションが行われた。

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井田勝大 © 公益財団法人鳥取県文化振興財団

井田は本公演の発起人の一人。バレエ公演の指揮者として活動を続ける過程で、「バレエの側からオファーをもらうだけでなく、音楽の方からもバレエに何か影響を与えることができないか、それを考えなければならないところにきた」と本公演の発端を解説している。題材にモンゴメリ作『赤毛のアン』を選んだ理由については、「『赤毛のアン』のフィルムコンサートの指揮をしたとき、アニメの世界をもう一度見て、改めて素晴らしい物語だと感じました。それをバレエの世界でも表現できないかと考えて。アンの感情表現の豊かさはバレエで十分表現できる、バレエに向いている、と提案しました。グランドバレエを目指して作り始め、オーケストレーションを工夫して、それぞれの音色が際立つようにメロディを作ってもらっています。グランドバレエのオケは通常50人くらいですが、『赤毛のアン』は30名くらい。『赤毛のアン』ならではのオーケストレーションで楽しんでいただいています」と話している。

振付の山本は、アンらしさの表現について「ストーリーを運ぶ上ではアンがどう感じているかが大事。ステップ=言葉ではないけれど、アンはお喋りなので、細かいステップが多くなっています。感情を音にハメ込んだ振りが多くなっている」と言及。今回の改訂については、「アンは子どもの頃に両親を亡くして、いろいろなところをたらい回しにされて寂しい思いをするけれど、本当の家族以上の存在が見つかる。作品の核心はそこ。心温まる部分がもう少し出ればと思っています。人の心に共感する部分が伝わりやすいように、ワンシーンずつ手直しをして、自分なりにこだわりを持って向かっているところです。『赤毛のアン』は愛の物語で、貧しい地方の人たちが耐え忍ぶ時代のお話であり、結束した愛がキーワードだと思う。お客さまが愛を感じ、温かいものを持って劇場から出られるように頑張ります」と意気込みを語った。


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山本康介 © 公益財団法人鳥取県文化振興財団

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小林美奈 © 公益財団法人鳥取県文化振興財団

アン役の小林は、「赤毛のアンといえば美奈さんしかいない!」と井田の熱いオファーにより出演が決定。アンと似ているのでは? との質問には「少し似ている部分があると感じます」と答えている。アン役への取り組みについては、「アンの魅力は、感情表現がすごく豊かなところ。素直で、たくさんの人から愛をもらい、アン自身も成長していく。少女から少しずつ大人のアンになっていく成長物語でもあり、マシューとマリラに引き取ってもらい、そこから家族愛が生まれていく。もともと一人で寂しい気持ちを持っていたからこそ、ほんの小さな幸せをすごく大きく感じられる。周りの人たちを巻き込んで、育っているような感覚があります。思ったことをはっきり言ってしまうから失敗することもあるけれど、関わる人たちが温かく受け止めてくれる。そういうところを通して、愛でいっぱいになっている成長物語を表現したいと思っています。今回の再演では、よりたくさんの広がりができ、みなさんの想いも熱くなっているのを感じています。アンの心情やキャラクターに寄り添って、お客さまにアンの魅力をお伝えできるよう、しっかり責任を持ってやりたいと思います」と気を引き締めた。

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葛西竜之介 © 公益財団法人鳥取県文化振興財団

楽曲を手がける葛西は、劇伴音楽や広告音楽など幅広い分野で活躍する気鋭の作曲家。バレエ作品に挑んだ初演時の心境を振り返る。
「『赤毛のアン』をバレエにするということで、小説を読み直しましたが、一筋縄ではいかないなと感じました。なにしろ、主人公の性格を音楽で表現するのが難しい。キャラクターの多面性を描けたら、というところから考え始めました。バレエ作品というのは言葉がないのが特徴で、かわりに身体表現を使って作品を見せていく。その上で、音楽がシーンにおける見せ方にも大きな影響がある。井田さんにもお話をお聞きして、バレエの作品としてどういう風に音楽があるべきか、助言をいただきながら進めていきました。最終的に、アンのいろいろな面を出すために、同じメロディをずっと一つの楽器がやらないよう徹底しました。一つのメロディを聴いていても、最初はサックスで、途中からヴァイオリンになったりする。聴いている方に飽きさせない工夫の一つで、音色のパレットを常に変化し続けるよう心がけました」。
今回の改訂では、完全オリジナル楽曲に仕上げるという。その意図について「前回はアニメで使用されていた楽曲が何曲が含まれていました。アニメは数十年前に作られた作品ですが、バレエ『赤毛のアン』のために一貫した文脈を持って作り直し、今この現代に生きている私の感性を織り込んでいきます」と話した。

最後に、井田が再演への想いを述べた。
「改訂という形でまた広がりを持つことに喜びを感じています。これは私の夢でした。一つの作品が、どこかの団体にとどまるのではなく、地域でシェアし合う形で広がっていく。作品が日本中で知られていく一つのきっかけにもなるでしょう。私が初めに目論んでいたのは、「日本のバレエを世界に」というテーマ。ゆくゆくはカナダでも公演できることを望んでいます。そして、バレエ『赤毛のアン』を通して得た知見を、またさらに次の新作に結びつけていきたいという強い野望を持っています」

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© 公益財団法人鳥取県文化振興財団

公演情報

鳥取・高知・石川 共同制作バレエ
鳥取県文化振興財団プロデュース事業
改訂/新演出バレエ「赤毛のアン」全3幕

【鳥取公演】8月30日(日)とりぎん文化会館
【高知公演】11月15日(日)新来島高知重工ホール
【石川公演】12月20日(日)石川県立音楽堂

赤毛のアンInstagram
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赤毛のアンⅩ
https://x.com/ballet_anne1013

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