ワールドレポート／東京

関口 紘一　Text by Koichi Sekiguchi

昨年の「2021」は大阪のみの開催だったため、東京開催が待望されていた「堀内元 Ballet Future 2022」（Ballet ×Jazz）が開催された。あらゆる舞台芸術が新型コロナ禍の影響を受け続けている中、ヒューストン・バレエのプリンシパル、加治屋百合子、そして昨年に続いてジャズピアニストの桑原あいのトリオをゲストに迎え、東京開催が実現した。
演目構成は昨年の大阪公演とほぼ同じだが、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』に代わって『タンランテラ』（塩谷綾菜×池田武志）が上演された。

開幕は＜バランシン・バレエ＞のテクニックをフィーチャーして、堀内元が構成した『バランチヴァーゼ』（音楽・バッハ）。速いテンポで流麗だが、軽快で機能的ですっきりとまとめられたヴァリエーションが、ソロとデュオで女性ダンサー5人（矢野まどか、藤原もえ、藤井彩嘉、橋谷美香、佐々木夢奈）と男性ダンサー2人（豊永太優、上村崇人）により踊られた。いずれ劣らぬソリストであり、堀内元公演にはしばしば参加しているメンバー的なダンサーたちも多く、安定感のあるステージだった。
続いて感情表現を見せる『ル・サンティモン』（音楽・バッハ）が続いて上演され、バレエで表現を作る場合に、気持ちを込める、ということがどのように舞台に現れるのか、そこを確かめることができるようにも思えた。ロングドレスの女性ダンサー、北沙彩、椿井愛実、本田千晃と男性ダンサー末原雅広、岡田あんりが踊った。
バランシン振付の『タランテラ』は、ニューヨーク・シティ・バレエ時代の堀内元の得意演目で、世界中の多く観客の喝采を浴びてきた。実際に堀内から指導を受けて、踊った塩谷綾菜は「踊ってみて、元さんのほんとうの凄さが分かった」そうだ。踊っていると手が痺れてきて、後半になると意識が朦朧としてくるほど酷しい振りだという。「あれをサラサラと踊られていた元さんは本当にすごいと思います」と言う。
塩谷と池田武志によるスターダンサーズ・バレエ団のペアだったが、塩谷は2回目、池田は初挑戦。リズム感とスピード、タイミング、音楽性などすべてがうまく連動しなければ拍手はもらえない、しかし、二人は見事に踊り切って盛大な喝采で観客に迎えられた。踊りきったダンサーたちのたちの極上の達成感と、それを真近で見終えた観客の高揚感が融合した爽快なカーテンコールとなった。

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