英国ロイヤル・バレエ団公演で、見事にオーロラ姫を踊った金子扶生の舞台映像が公開される
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ワールドレポート／東京
関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi
英国ロイヤル・バレエ団
『眠れる森の美女』マリウス・プティパ：振付、アシュトン、ダウエル、ウィールドン：追加振付、モニカ・メイソン：プロダクション（ド・ヴァロワ、セルゲイエフに基づく）
© BC
英国ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』で金子扶生がオーロラ姫を踊り、世界各国の映画館に配信され大スクリーンでその舞台が放映された。日本でも英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2019/20の舞台映像が映画館でまもなく公開される予定。
昨年11月より始まった英国ロイヤル・バレエの『眠れる森の美女』公演は、最終日の2020年1月16日の舞台映像がイギリスおよびヨーロッパの各国の映画館にライヴ放映された。オーロラ姫を踊ったのは当日リラの精に配役されていた金子芙生だった。ローレン・カスバートソンの怪我のために、急遽、主役を踊ることになったのである。金子は、2013年にアコスタ版『ドン・キホーテ』で主役デビューし、その後怪我によりしばらく舞台を離れていたが、昨年11月、リース・クラークと踊ってオーロラ・デビュー。今回も世界中に配信される舞台で、この大役も見事に果たした。
プロローグのオーロラ姫の命名式では妖精たちが華やかに踊ったが、招待されなかったことを怒ったカラボス（クリステン・マクナリー）が手下を引き連れて乗り込んできて大暴れする。リラの精（ジーナ・ストーム=ジェンセン）によって騒ぎも収まって歳月が流れた。
そしていよいよ16歳のオーロラ姫の登場となる。見つめているのは試写会場のスクリーンなのだが、それでもなんだかドキドキした。舞台奥から登場した金子のオーロラ姫は溌剌として、恥じらう花のような笑顔を浮かべ、すべての観客の視線が一身に注がれる中で堂々と演じ、魅力的に踊った。金子をコーチした元プリンパルのダーシー・バッセル（英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズンの解説を務める）が、「信じられないほど落ち着いていた」とコメントしていたが、安定感のある素晴らしいオーロラ姫だった。まず、最初のヴァリエーションで音楽に良く乗って、心と身体が音楽と一体化していることがよく分かる。ローズアダージオのバランスも決まって、そのポワント・ワークの確かさを印象づけ、会場の大きな喝采をもらった。
第二幕では、フロリムント王子を踊ったフェデリコ・ボネッリが魅せた。宮廷の人たちとの野外の遊戯を終わらせ、一人になると品の良いヴァリエーションを踊って、その心のうちを垣間見せる。リラの精に導かれ、オーロラ姫の夢の中の彼女と踊り、出会いを熱望する。こうした表現をマイムと演技を交えて的確にこなす。さすがプリンシパルと思わせた。
第三幕の結婚の宴では、チャイコフスキーの名曲とともにディヴェルティスマンとグラン・パ・ド・ドゥが踊られた。ディヴェルティスマンは、長靴を履いた猫、ヤスミン・ナグディのフロリナ姫とマシュー・ボールが踊った青い鳥、赤ずきんちゃんでは着ぐるみが得意の英国ロイヤル・バレエらしく、巧みにキャラクターを見せ会場を沸かせる。
グラン・パ・ド・ドゥでは、ボネッリは大向こう受けを狙ったあざとさはまったくなく、しっかりとしたステップと揺るぎないサポートによって、金子を引き立てた。それに応えて金子は、見事なプロポーションを操って踊り、素晴らしかった。世界中の観客に、バレリーナとしてその成長ぶりをはっきりとみせた。英国ロイヤル・バレエに入団した当初から期待されていたのだが、一時、怪我で苦しんでいただけに大変喜ばしいことである。
『眠れる森の美女』というバレエは、英国ロイヤル・バレエにとって特別のバレエである。世界大戦後の1946年、ダンスホールとなっていたコヴェント・ガーデンで、マーゴ・フォンテインとロバート・ヘルプマンの主演により初めて上演したのがこのバレエである。ここから英国ロイヤル・バレエは戦後の歴史を刻み、その後も節目ごとに『眠れる森の美女』が上演されてきている。こうした特別のバレエで、日本人ダンサーが主役を務める舞台、その映像の公開が待たれる。
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