ワールドレポート／その他

香月 圭　text by Kei Kazuki

アメリカでスタートしたYAGPは、今や日本をはじめ世界各地で予選やガラ・コンサートなどが開催されるまでに発展している。今後、アメリカ以外で行われる予選については、グローバルな国際バレエコンクールという意味合いを持たせた新名称「ユースグランプリ Youth Grand Prix (YGP）＋国名」が使われる旨、事務局より発表された。日本予選は今回より「ユースグランプリ・ジャパン」となった。

YGP2022日本予選は2021年10月19日〜24日あましん・アルカイックホール／オクトホールで行われた。参加者たちは会場で日本在住のゲスト講師（ダーナ・バクンチク、アレクサンドル・ブーベル、柿崎 麻莉子、小㞍 健太、マイケル・シャノン、竹内 春美）によるワークショップを受け、舞台で演技を披露した。

ソロ（クラシック、コンテンポラリー部門）、アンサンブルのほか、会場での審査に参加せず、スカラシップの審査にのみエントリーするバーチャル・スカラシップ・オーディションも行われた。今回、YGPに参加できる年齢は9歳〜20歳（バーチャル・スカラシップ・オーディションは9歳〜21歳まで）で、新型コロナウイルス感染拡大によりカンパニーへの就職活動が困難となっているシニア参加者の救済のため、前回同様、年齢制限が引き上げられた。また、シニア女性の予選審査では、昨年同様、チャイコフスキーの『白鳥の湖』第1幕よりワルツ、『眠れる森の美女』第1幕よりワルツ、『くるみ割り人形』第2幕より花のワルツの各曲について、それぞれ5つのセクションに分けて5人が順番に踊ることにより、プロフェッショナル・ダンサーとしての将来性、音楽性、体のライン、他のダンサーとの協調性や順応性など多角的な視点を見極めるための審査が行われた。

参加者数は、クラシックの部のプリコンペティティブ部門（9〜11歳）では女子158名、男子13名、ジュニア部門（12〜14歳）では女子328名、男子32名、シニア部門（15〜20歳）では女子172名、男子29名だった。コンテンポラリーの部の参加者はプリコンペティティブ部門では35名、ジュニア129名、シニア73名だった。アンサンブル部門は13組の出場となった。バーチャル・スカラシップ・オーディション部門は59名がエントリーした。

クラシック部門予選、コンテンポラリー部門、アンサンブル部門の審査は、関係者向けで限定的に公開（有料映像配信もされた）、23日・24日のクラシック部門決選は一般公開され、YouTubeでも無料配信された。YAGP芸術監督／共同創設者ラリッサとゲナディ・サヴァリエフ夫妻はじめ、4大陸12カ国のバレエスクール校長・芸術監督などを中心とする審査員は、コロナ禍のためオンラインで参加者の演技を見守り、採点する形となった。

表彰式はオンラインにて行われ、各部門の結果や各バレエスクールのスカラシップやバレエ団の研修についても発表された。今年もコロナ禍の中での開催ではあったが、審査員メンバーからは参加者のコンディションは良好でレベルも非常に高かったという感想が多くきかれた。踊りに打ち込む姿勢、そしてダンスを楽しむ様子が画面からも伝わり、スカラシップをより多くの参加者に届けたいという声も多かった。審査員の一人、ジェイソン・ビーチーは「毎年レベルは上がっているが、今年は特にコンテンポラリーで飛躍的な進歩が見られた」と感想を述べた。審査員のティム・アルマースは、「それぞれの審査員の好みは千差万別であり、ユース・グランプリは広い視野からの評価と可能性を与えてくれる場です」と今回のコンクールを振り返った。オンライン審査の利点として、世界各地からより多くの審査員に参加してもらうことが容易になったこと、動画審査の際、気になった部分を繰り返して見られるため、審査の精度がより高くなることが挙げられた。また、各セクションの審査後にはオンライン・ミーティングで審査員の意見交換やフィードバックがスムーズに行われたという。

次回のユースグランプリ・ジャパン2023日本予選は2022年10月18日(火)〜10月23日(日)あましんアルカイックホール、アルカイックホール・オクトでの開催が予定されている。

【審査員】
◎オスロ国立芸術大学（ノルウェー） 教授、クラシック・バレエ学部長：ティム・アルマース
◎サンフランシスコ・バレエ・スクール (アメリカ) 校長：パトリック・アルマン
◎ドレスデン・パルッカ・ダンス大学（ドイツ） 学長：ジェイソン・ビーチー
◎バーゼル劇場バレエ・スクール（スイス） 芸術監督：アマンダ・ベネット
◎ミュンヘン国立バレエ・アカデミー (ドイツ) 校長：ヤン・ブルックス
◎カンヌ・ムージャン・ロゼラ・ハイタワー国立高等ダンス・センター (フランス) 芸術監督：パオラ・カンタルポ
◎英国ロイヤル・バレエ・スクール (イギリス) アーティスティック・マネージャー：ホセ・カラヨル
◎イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール (イギリス) 芸術監督：ヴィヴィアナ・デュランテ
◎アントワープ王立バレエ・スクール（ベルギー） 副芸術監督：ケヴィン・ドゥールワエル
◎ジョフリー・アカデミー・オブ・ダンス (アメリカ) コンサバトリー&プリ・プロフェッショナル・プログラム 主任：キャレン・エリス・ウエンツ
◎ヨーロピアン・スクール・オブ・バレエ（オランダ） 創設者／校長：ジャン・イヴ・エスキュール
◎マリインスキー劇場バレエ (ロシア) 芸術監督：ユーリ・ファテーエフ
◎アントワープ王立バレエ・スクール (ベルギー) 芸術監督：カーティス・フォーリー
◎アルバータ・バレエ・スクール（カナダ） トレイニー・プログラム ディレクター：アラム・マヌキアン
◎モナコ王立プリンセス・グレース・アカデミー（モナコ） 芸術監督：ルカ・マサラ
◎シュツットガルト・バレエ ジョン・クランコ・スクール（ドイツ） 校長：タデウス・マタチ
◎チューリッヒ・ダンス・アカデミー（スイス） 校長：オリヴァー・マッツ
◎オランダ国立バレエアカデミー (オランダ) 芸術監督／オランダ国立バレエ ジュニア・カンパニー (オランダ) アーティスティック・コーディネーター：アーンスト・マイスナー
◎オーストラリアン・バレエ・スクール（オーストラリア） 校長：リサ・パヴァ―ン
◎トニー賞候補女優、元アルビン・エイリー ダンサー、ダンス教師：カリーン・プランタディット
◎英国ロイヤル・バレエ・スクール（イギリス） 芸術監督：クリストファー・パウニー
◎ベルリン国立バレエ学校（ドイツ） 芸術監督：マレク・ルーズィツキー
◎元ドレスデン・ゼンパーオペラ プリンシパル：竹島 由美子

●ユースグランプリ・ジャパン公式サイト
https://yagp.org/japan/index.html

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