ワールドレポート／大阪・名古屋

すずな あつこ　Text by Atsuko Suzuna

瀬島五月率いるバレエカンパニーウエストジャパンの第4回公演。いつも演目の選び方にセンスがあることを感じるカンパニー。今回、"チャイコフスキー・ビル"ということで、そのタイトルだけ聞けば、チャイコフスキーの三大バレエから？？？と、一瞬、単純に想像してしまいそうになるが、やはり、良い意味でそんな単純なものではなかった。ひとつは、三大バレエの中の『眠れる森の美女』からで山本康介振付（眠れる森の美女より"オーロラの結婚"』、そして、もうひとつは、ジョージ・バランシンがチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」に振付けた『セレナーデ』。そんなタイプの違う作品を1つの公演で観られるなんて！ やはりセンスを感じる演目選びだ。また、日本では（また、特に関西では）、なかなかバランシン財団から指導者を招いての上演というのは、かなり大きなバレエ団でないと難しいのが現状だが、今回、バランシン財団からイヴ・ローソンを指導に招き、約1か月滞在してもらってリハーサルを重ねたという。瀬島は貞松・浜田バレエ団在籍中に、この『セレナーデ』のメインキャスト、ワルツガールを踊っていて、今も思い出す良い舞台だった。今回は、また違った形で、この作品と向き合ったことになりそうだ。

まず、上演されたのが、その『セレナーデ』。幕が開くと、ブルーの静謐な空間に整然と並ぶ女性ダンサーたち。凜とした空気が心地よい。
今回、ワルツガールを踊ったのは大久保沙耶、数年前までオランダ国立バレエ団で活躍していたダンサーだ。オランダ時代も恵まれた容姿を写真等で観ていたが、踊りを観られるようになったのは最近。登場から喜びが溢れるような惹きつける踊り、伸びやかで、ストーリーを感じさせるような、とても良いダンサーだと思った。
ロシアン・ガールを踊ったのは佐々木夢奈。可愛らしさを感じるルックスに強いテクニック、この役に良く合う。透明感も感じられて良かった。ダークエンジェルは瀬島で、さすがの存在感。全員がイヴ・ローソンによるオーディションでキャスティングされただけあって、役によく合っている。コール・ド・バレエも、全員が納得のレベルだった。

『セレナーデ』　撮影：文元克香（テス大阪）

後半は、山本康介振付『眠れる森の美女より"オーロラの結婚"』、3幕の結婚式にプロローグの6人の妖精のヴァリエーションも加えて、本当に煌びやかで華やか。関西で活躍するレベルの高いダンサーが集い、妖精も宝石も童話の主人公達も、適材適所で納得のレベル。
白猫と長靴猫は大久保彩香と豊永太優、ユーモアを交えた踊りが楽しい。フロリーネ姫と青い鳥は、田中利奈と八幡顕光。ネイビーに銀の衣装も美しく、穏やかで伸びやか。赤ずきんの水本千晶も表情変化がとても良かった。
そして、オーロラ姫とフロリモンド王子は瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストン。素晴らしいスタイルで気品を持った王子、そして、堂々として香り立つような魅力を感じさせるオーロラ。それぞれの輝きにうっとりとして劇場を後にした。
そして、帰途、心の底から「これ、1回公演だと絶対もったいない」と叫びたくなった。
（2022年11月27日　神戸文化ホール大ホール）

『眠れる森の美女より"オーロラの結婚"』オーロラ姫：瀬島五月、フロリモンド王子：アンドリュー・エルフィンストン
撮影：藪内優美（テス大阪）

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