ワールドレポート／京都

関口 紘一　Text by Koichi Sekiguchi

有馬龍子記念京都バレエ団が、第1回 Kyoto Ballet Gala Specialを開催した。新型コロナ禍で思うような公演が開けない中、京都バレエ専門学校卒業生とカンパニーに縁のあるダンサーたちが集って、デフィレで始まりフィナーレで幕を閉じる華やかな舞台を繰り広げた。パリ・オペラ座バレエ団との長い交流の歴史を持つ京都バレエ団らしい、クラシック・バレエの王道が見えるプログラムである。
まずはブルノンヴィルにより1858年にデンマーク・ロイヤル・バレエで初演された『ゼンツァーノの花祭り』のグラン・パ・ド・ドゥ。パリ・オペラ座バレエ団のエリック・カミーヨが京都バレエ団に振付けた『眠れる森の美女』では、主役のオーロラ姫を踊ったキャリアを持つ北野優香（京都バレエ団）。そしてコンクールで多くの輝かしい入賞歴をもつ長谷川元志（神澤千景バレエ教室）が踊った。明るく華やかにガラ・パフォーマンスの幕開けにふさわしい踊りで観客の目を惹きつけた。続いて『ライモンダ』3幕より。Royal Ballet School of Antweepを卒業し、近年の都民バレエフェスなどでも活躍している佐々木夢奈（佐々木美智子バレエ団）と、やはりカミーヨ振付『眠れる森の美女』でデジレ王子を踊った鷲尾佳凛（京都バレエ団）が踊った。女性の気品と愛の深さを格調高く現そうとする姿勢をくっきりと描いた舞台だった。

『ラ・シルフィード』第2幕より は、シュツットガルト・バレエなどに留学経験があり、エリック・カミーヨの薫陶も受けた前澤芽依（京都バレエ団）とパリ・オペラ座バレエ団で契約ダンサーとして踊るなど、近年目覚ましい活躍をみせる二山治雄が踊った。なんといっても軽快で楽しいステップが舞台狭しと弾み、会場全体がスペースさえあったらすぐにでも踊りたくなるような明るい雰囲気に包まれた。前澤芽依と二山治雄はともに白鳥バレエ学園でバレエを習っているからか、信頼感ある息の合ったステップを披露していた。京都バレエ団のダンサーたちもともに踊る喜びに溢れたステップを弾ませて盛り上がり、会場の大きな喝采を受けていた。

休憩後はピエール・ラコット振付『ラ・ヴィヴァンディエール』で幕が開いた。ヴィヴァンディエールとは、軍隊に付き従っている酒を売る女たちのこと。ここでもまた、京都バレエ団得意のステップの軽やかさが際立った。「お酒を飲む」、と思い浮かべただけですでに心が軽くなり「踊りだしたくなる！」そんな心が浮き立つような気持ちを、ステップが巧みに現していておもしろかった。1976年にラコットが復元したというパ・ド・シスも軽やかに踊られた。京都バレエ専門学校を卒業し、今はスターダンサーズ・バレエ団ジュニア カンパニーで活躍する梅本悠羽とヴェテラン実力派ダンサー恵谷彰（恵谷バレエ スタジオ）、そして京都バレエ団のダンサーたちが踊った。

『海賊』第1幕よりグラン・パ・ド・ドゥは、奴隷として売りに出されたギュルナーラと奴隷商人ランケデムの踊り。光永百花（京都バレエ専門学校卒）と石田亮一の牧阿佐美バレヱ団からゲスト出演の二人が踊った。スタイルが良く美貌の光永百花と手足が長く小顔の石田亮一がすっきりしたクールなラインを見せ、落ち着いて踊った。二人の関係と気持ちが良く見える、なかなか良いパートナーシップだった。
最後は『THE MAN I LOVE』を山本隆之（新国立劇場オノラブルダンサー）と藤川雅子（京都バレエ団）が大都会の夜景を背景に瀟洒に踊って、第1回 Kyoto Ballet Gala Specialは幕を下ろした。
（2022年2月19日　ロームシアター京都 サウスホール）

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