1幕のジゼルを踊ったのはデヴォン・トイシャー（Devon Teuscher）、アルブレヒトを踊ったのはアラン・ベル（Aran Bell）。アランが小さいころ、バレエコンクールを舞台にした『ファースト・ポジション』という映画で注目を浴びましたが、今は背がスラリと伸びて立派な体格になり、あの小さな少年がABTのプリンシパルとして立派に踊っている姿をみると、思わず感激してしまいました。デヴォンのジゼルは美しいのですが、アルブレヒトへの恋心と恥じらい、アルブレヒトを目の前にしたときの繊細な感情などどいった表現に物足りなさを感じました。
ペザントを踊ったジミ・コーカー（Zimmi Coker）とジェイク・ロクサンダー（Jake Roxander）は、他の演目でもソリストに配役されていることなどから期待の若手だと思います。２人とも足のラインが美しく、またはつらつとした若者らしく、見ているこちらも元気をもらうような踊りでした。

目を惹いたのは2幕のジゼルを踊ったキャサリン・ハーリン（Catherine Hurlin）。とてもしなやかかつ強く、スピード感と躍動感がありながら、長い首と細い腕が見せる柔らかな動きがジゼルの精霊の雰囲気を際立たせました。彼女の『ジゼル』全幕をぜひ観てみたいと思いました。ただリハーサルではオーケストラのテンポがかなり速く、彼女はもっと良さを魅せられたと思うので本番は踊りとテンポが合うことを願います。
アルブレヒトのダニエル・カマルゴ（Danicel Camargo）は、シュツットガルト・バレエ団のプリンシパルをへて、ABTではゲストプリンシパルとして出演しています。ヴァリエーションの素晴らしい跳躍、ダブルカブリオールにキレのある回転を見せました。パ・ド・ドゥ後半のアルブレヒトの見せどころのアントシャ・シスでは、本当に倒れるまで踊り続けるつもりだったのか、とても多くのジャンプを続けました。本当に限界が来て倒れこんだのか、演技だったのか分からないような倒れ方で会場が湧きました。