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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.11.10]

●パリ・オペラ座バレエ団がバランシンの『ジュエルズ』

 パリ・オペラ座バレエ団では、バランシン振付『ジュエルズ』の公演が始まった。  10月28日の初日は、『デフィレ』と、昨シーズン開幕に初演されたスジェのダンサーのモノローグの『ヴェロニク・ドワノー』が『ジュエルズ』に先立って上演された。

 まず『デフィレ』は、おめでたのデルフィーヌ・ムッサンを除く13人のエトワールが行進。 女性では、マリ=アニエス・ジロー、オレリー・デュポン、アニエス・ルテステュなどに拍手が集中、男性は、一ヶ月前にエトワールに任命されたばかりのバンジャマン・ペッシュが頭に登場、 ウィルフリード・ロモリ、マチュー・ガニオがそれに続いた。 トリはマニュエル・ルグリで、久々の舞台姿に喝采は最高潮に達した。男性は8人と、女性より人数が多いが、ルグリ、マルティネズ、ペッシュなどが怪我で、この日の舞台に立てなかったのは残念だ。

 エトワール以外で、特に拍手が多かったのは、プルミエのエルヴェ・モロー、エマニュエル・ティボー、アレッシオ・カルボーネの三人が並んで行進してきた時で、 これは次期エトワールに対する観客の期待とも受け止められた。

『デフィレ』に続いては、ジェローム・ベル作の『ヴェロニク・ドワノー』の再演。構成は昨年と変わりないが、冒頭の自己紹介の台詞が若干変わり、 現在42歳のドワノーは、一週間後に引退することになっているという。つまりこれは実質上、ドワノーの引退公演となった。 観客にレヴェランスを繰り返した後、チュチュとミネラル・ウォーターを手に袖に入っていくドワノーには温かい拍手が送られた。

『ジュ エルズ』は、ラクロワの美術と衣裳により、2000年にオペラ座のレパートリーに入ったもので、今回は2年ぶりの再演。 ソリストの顔ぶれは、女性陣はほぼ前回と同じだが、男性陣は、今回初めてのパートを踊ったマチュー・ガニオとエルヴェ・モローの活躍が目覚ましかった。

幕開けの『エメラルド』(フォーレ曲)は、ソリストがレティシア・プジョルとマチュー・ガニオ、クレールマリ・オスタとカデール・ベラルビ、 エレオノラ・アッバニャートとノルウェン・ダニエルとエマニュエル・ティボーのトリオ。 優美なガニオと躍動的なティボーの踊りが好対照で、この二人からは目が離せなかった。ティボーは、後半に予定されている『ルビー』でのソロも期待される。

  二曲目の『ルビー』(ストラヴィンスキー曲)は、オレリー・デュポンが抜群のバランスとピルエットを決めれば、マリ=アニエス・ジローは大輪の華の輝きで、共に快調。 デュポンの相手役のアレッシオ・カルボーネも健闘した。

 最後の『ダイヤモンド』(チャイコフスキー曲)は、きらめくようなアニエス・ルテステュとエルヴェ・モローのカップルを芯に、コール・ド・バレエの美しさがため息を誘う。 特に最終楽章は、オペラ座ならではの華麗なアンサンブルを誇示して壮観だった。何度見ても、このパートからは、振付家の思い入れが伝わってくるようだ。 

 なお公演二日目は、『ダイヤモンド』に予定されていたジローとモローのペアが不調のため降板。代役として、ステファニー・ロンベルグとフロリアン・マニュネが登場した。 それに伴い、『ルビー』にエミリー・コゼットが起用され、クレールマリ・オスタとカルボーネとのトリオとなった。 マニュネは、春の『シンデレラ』の王子に続く大役だったが、落ち着いた風情で抜擢に応えた。ただ初日に比べると、全体にソリストが小粒になった印象は免れない。 その中で、『エメラルド』のプレリュード他をクリストフ・デュケンヌと踊ったイザベル・シアラヴォラがロマンティックこの上なく燦然と輝いていた。 初日の『ダイヤモンド』でも、手脚がすらりと伸びた優雅なシルエットが格段に際立っていたが、バランシンのバレエは、この人のようなバレリーナが踊ってこそ真価が発揮されるようだ。

 指揮はポール・コネリーで、今回も充実した演奏を繰り広げていた。