ワールドレポート／パリ

三光 洋　Text by Hiroshi Sanko

フィガロ紙は同紙のバレエ批評家アリアーヌ・バヴリエ記者による「オニール八菜、水晶のバレリーナ」と題した記事を12月29日に掲載。彼女はフィガロ紙の年末特集「2023年に活躍した芸術家5人」の一人としてとり上げられ、パリ・バレエ界の現在の評価を裏書きしている。以下にオニール八菜のどういった点が評価されているのか、パヴリエ記者の記事の要点をご紹介しよう。

「来年1月8日に31歳を迎えるオニール八菜はオーレリー・デュポン前舞踊監督により＜窓際族＞になり、実力に見合わない端役ばかりに起用されていた。そうした不遇でダンサーとしての伸びが止まってしまうことが懸念されたが、杞憂だった。2022年秋に舞踊監督となったジョゼ・マルティネスが今年3月2日にマルク・モローと同時にエトワールに任命したのである。踊ったのは得意とするバランシン『バレエ・インペリアル』だった。」
「（エトワールに任命されてから）彼女は成長し続けている。2023年にはロビンズ振付『ト長調で』（『アン・ソル』）では男性を翻弄する女性を繊細に演じ、『ジゼル』のミルタではウィリの女王を冷たさ、キリアン作品では音楽にぴったりの身体ラインを見せてくれた。2024年は『白鳥の湖』のオデット/オディール、『ドンキホーテ』のキトリ、『ジゼル』での活躍が期待されている。」
「オニール八菜は水晶のようなバレリーナだ。彼女の踊りは透明感があり、細部が彫琢されている。気品あふれる美貌、最高の優雅さはヌレエフの主なパートナーだったマーゴット・フォンテーンを思わせるところがある。フォンテーンと八菜が一致するのは、二人が究極的に真率さを追求している点だ。」

八菜は師のフロランス・クレールと練習室でヌレエフとフォンテーンが踊った『白鳥の湖』のビデオを見ている。八菜はバヴリエ記者に「フォンテーンのヌレエフとの第三幕は愛情にあふれていて、見ていて泣きたくなります。」ともらしている。
八菜は「私にも欠点はあります。ザハロワやギエムのような例外的な身体の伸びや背中の柔軟性はありません。そこで、頭や腕によって感情を伝えようと試みています。動きを停止してしまわずに、それぞれのパが感受性と心を込めて踏まれるようにしています。これを実現するには集中力と情熱が必要です。」とも語る。
「私は振付のパを一切変えずに、それでいて白鳥に創意とオリジナリティを盛り込むつもりです。私の個性を刻みつけたいのです。」
「フロランス・クレールも『パが確固としたものであれば、自由な解釈の可能性は大きいのです。」と語っているが、八菜には解釈の自由が必要だ。

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