パリ・オペラ座バレエ団コール・ド・バレエ昇級コンクールの結果

ワールドレポート/パリ

大村 真理子(在パリ・フリーエディター) Text by Mariko OMURA

女性の部

パリ・オペラ座バレエ団コール・ド・バレエの昇級コンクールは、女性の部が11月9日、男性の部は11月10日で開催された。今年のコンクールは既報の通りスジェは参加せず。彼らの昇級はシーズン末までにエトワール同様に任命形式で行われる。1860年から変わらず続いた形式の大きな変化となるため、あくまでも実験的な試みとしてだ。これはジョゼ・マルティネス舞踊監督が着任後すぐに団員全員と面談を行い、その際に公演とリハーサル間を縫ってコンクールの準備をすることは、ドゥミ・ソリストとして舞台に立っているスジェたちには大きな負担であることを多く耳にしたことからのアイディア。またスジェたちの仕事はステージで見る機会があるので、あえてコンクールでなくても、ということもある。来シーズン以降については今シーズンの結果次第でこれまで通りのコンクールのままか、カドリーユとコリフェのみのコンクールとなるかを決めるそうだ。なお今回のコンクールでの昇級者たちは、来年1月1日から新しい階級となる。

11月9日はコンクール会場にアニエス・ルテステュ、ノエラ・ポントワといったOBダンサーたち、エリザベット・プラテル学校長、レオノール・ボラック、リュドミラ・パリエロ、ジェルマン・ルーヴェといったエトワールたちの姿に加え、イネス・マッキントッシュやジャック・ガズォット、アントニオ・コンフォルティといったコンクールに参加しないスジェのダンサーたちの姿も見受けられた。11時30分にカドリーユのクラスから開始。今年はくじ引きの結果、アルファベットAからのスタートだった。

●カドリーユからコリフェ 5席
課題曲 マリウス・プティパ『海賊(ル・コルセール)』からfastと言われるヴァリエーション
昇級者5名と自由曲
1.Saki Kuwabara(サキ・クワバラ)/ジェローム・ロビンズ『Four Seasons』より秋のヴァリエーション
2.Camille de Bellefon(カミーユ・ドゥ・ベルフォン)/ジョージ・バランシン『ジュエルズ』よりエメラルドのファースト・ヴァリエーション
3.Seohoo Yun (セーホー・ユン)/ マリウス・プティパ『パキータ』よりEtoileのヴァリエーション
4.Elisabethe Partington (エリザベット・パーティントン)/ セルジュ・リファール『白の組曲』よりセレナード
5.Ambre Chiarcosso(アンブル・キアルコッソ)/ジョージ・バランシン『Who Cares ? 』よりEmbraceable you

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Saki Kuwabara(サキ・クワバラ)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

コリフェ 5席をめぐり、カドリーユ30名のうちコンクールに参加したのは20名だった。1/4の確率で昇級できるコンクールは上を目指すカドリーユにとっては、逃せないチャンスである。参加しなかったのは入団15年以上のダンサーたちやコンテンポラリー作品に配役されているダンサーたちだ。
1位で昇級したサキ・クワバラがパリ・オペラ座バレエ団に入団したのは2019年。その前は3年間、ボルドー国立歌劇場の団員だった。課題曲では優美ながらキレの良さがあるステップが印象的で、マスターしたテクニックを披露するだけに終わったダンサーが少なくない中で、それを超えたところで作品を楽しんでいることが感じらるパフォーマンスだった。自由曲に選んだ『Four Seasons』の秋のヴァリエーションは1つ1つの動きにストーリーをこめながら、実にのびのびと踊っていた。この素晴らしい出来栄えに誰が彼女の自由曲のコーチだったのかと気になるが、何よりも彼女自身の日頃の研鑽ぶりの結果であることは間違いない。12月はイリ・キリアン作品を踊るようなので楽しみにしよう。
2位のカミーユ・ドゥ・ベルフォンは2009年入団のダンサーである。昨年末ピナ・バウシュの『コンタクトホーフ』で独特なアリュールを発揮した彼女は、公演「ジェローム・ロビンズ」の『The Concert』でも同様に他のダンサーには出せない味わいが目を引いた。課題曲では優雅なアームスでエレガンスが踊りから放たれ、自由曲は入団14年のキャリアで自身のスタイルを作り上げたダンサーならでの魅力が感じられた。
3位のセーホー・ユンは正式入団は2017年だが、その前に臨時団員として2年を経験。この間にクラシックとコンテンポラリーの両方に重用され、実に多数の舞台数がある。課題曲ではテクニックにとらわれないゆとりを見せ、気持ち良さそうに踊った姿が印象に残った。課題曲では確固たる技術の持ち主であることを発揮した。

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Camille de Bellefon(カミーユ・ドゥ・ベルフォン)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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Seohoo Yun (セーホー・ユン)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

4位のエリザベス・パーティントンは昨年度は臨時団員として舞台にたち、2023年に外部入団コンクールの結果カドリーユとして入団。課題曲は空間を上手に使って、安定したテクニックを披露し、自由曲は芸術面では枠からはみ出さない優等生的な印象を受けたものの、それを補ってあまりある美しい腕と爪先の仕事で今後の活躍を早く見てみたいと思わせるパフォーマンスだった。どことなくマリオン・バルボーを彷彿させる笑顔が愛らしいダンサーだ。
5位のアンブル・キアルコッソ。2015年に入団し、ステージ経験は豊富なダンサーである。昨シーズン、コール・ド・バレエとして何度もステージにたった『Who Cares ? 』からのソロを自由曲に選んだのは、賢い選択だったようだ。体に刻み込まれた音楽にのせて楽しそうに踊っていた。
なお今回も昇級が叶わなかったLucie Devignes(ルーシー・ドゥヴィーニュ)は課題曲で見せた美しい腕のひろがり、自由曲『In the Middle Something Elevated』で本領発揮とばかりに見せたシャープな動きは見ごたえがあった。昨年も良いパフォーマンスを見せた彼女である。来シーズンのコンクールでの昇級を願いたい。また、コンテンポラリー作品での活躍が続くAdèle Belem(アデル・ベレム)も課題曲では久々のポワントにも関わらず余裕をみせ、また自由曲には彼女のキャラクターにフィットするアラン・ルシアン・オイエン『And...Carolyn』を選び自身の持つ芸術性を審査員に披露した。前シーズンの『コンタクトーフ』『シーニュ』のように今後も彼女の個性が生かされる作品に配役されることを祈りたい。

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Elisabethe Partington (エリザベット・パーティントン)
Photo Chris Dève

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Ambre Chiarcosso(アンブル・キアルコッソ)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

●コリフェからスジェ 3席
課題曲 ルドルフ・ヌレエフ『ライモンダ』第二幕よりライモンダのヴァリエーション
昇級者3名と自由曲
1.Nine Seropian(ニンヌ・セロピアン)/ジョージ・バランシン『Who Cares ? 』よりWho Cares ?
2.Hortense Millet-Maurin(オルタンス・ミエ=モーラン)/ピエール・ラコット『Célébration』
3.Célia Drouy(セリア・ドルゥーイ)/ モーリス・ベジャール『バクティIII』

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Nine Seropian(ニンヌ・セロピアン)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

スジェの3席を競ったコリフェは、もともとが14名と少ない級なのだが、その半分の7名だった。1位のニンヌ・セロピアンは昨年のコンクールでも健闘したのが、あいにくと昇級できず。今シーズン開幕公演でのXie Xinの『Horizon』を含め、日頃コンテンポラリー作品に配役されている彼女だが、課題曲はポワントから遠ざかっているとは感じさせないヌレエフ作品の出来栄えだった。自由曲ではブロードウェイの華やぎをリズムにのせて踊り、ダンサーとしての幅広さを披露。学校公演でもすでに強い個性を見せていた彼女は、今後どのように成長してゆくのだろうか。臨時団員を3年務めた後、彼女は2019年に入団し、2021年にスジェに上がった。
2位のオルタンス・ミエ=モーランがコリフェにあがったのは昨年で、とんとん拍子の昇級となった。確かで美しいフレンチ・スタイルの実践者である彼女らしい自由曲を選択し、課題曲ともども確実でスキのないパフォーマンスだった。昨シーズンの『マノン』ではコール・ド・バレエの中でも動きの優雅さで光っていた彼女。スジェとなり、ドゥミ・ソリストとしての活躍を早く見てみたい。なお昨年の入団年に、AROPが期待の若いダンサーに贈る賞を彼女は受賞している。
3位のセリア・ドルゥーイは2016年に入団し、2020年にコリフェに上がったダンサーである。前回はスジェが2空席しかなかったため、良いコンクールだったものの3位で昇級が叶わなかった。今回は課題曲では舞台に出た瞬間から物語を感じさせ、日頃の溌剌としたパワーを忘れさせる優美さをこめた彼女のライモンダ像は見る者を引き寄せた。2020年の公演「若いダンサーたち」では『パリの炎』、2022年の『ラ・バヤデール』ではインディアンのパ・ド・ドゥに配役されているようにエネルギッシュな踊りが魅力のダンサー。自由曲『Bakti III』ではそのパワーを振付に巧みに取り込んだ研ぎ澄まされたパフォーマンスが見事であった。なお参加者7名中、彼女だけがコンクールの準備を毎晩の公演「ジェローム・ロビンズ」と並行して行なっていたことも記しておこう。
前回のコンクールでオルタンス・ミエ=モーランとともにコリフェに上がったLuna Peigné(ルナ・ペニェ)も健闘した。とりわけ自由曲に選んだ『Four Seansons』の秋のヴァリエーションでは、輝きの軌跡をステージに残して踊る彼女の流れるような動きが見事だった。2019年に入団した彼女は2012年の公演「ローラン・プティへのオマージュ」中『ランデブー』で、花売り娘としてステージに立つだけで強い存在を感じさせたダンサーだ。昨夏は仲良しのギヨーム・ディオップとロンドンでガラに参加している。パリ・オペラ座でもせめてドゥミ・ソリストとしての踊りが早くみられるといいのだが・・。

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Hortense Millet-Maurin(オルタンス・ミエ=モーラン)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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Célia Drouy(セリア・ドルゥーイ)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

男性の部

●カドリーユからコリフェ 6席
課題曲 ジョージ・バランシン『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
昇級者6名と自由曲
1.Lorenzo Lelli(ロレンツォ・レッリ)/セルジュ・リファール『白の組曲』マズルカ
2;Théo Ghilbert(テオ・ギルベール)/ルドルフ・ヌレエフ『白鳥の湖』第3幕ロットバルトのヴァリエーション
3.Enzo Saugar(エンゾ・ソガール)/モーリス・ベジャール『火の鳥』
4.Marius Rubio(マリウス・ルビオ)/ マリウス・プティパ『エスメラルダ』
5.Rubens Simon(ルーベン・シモン)/ マニュエル・ルグリ『ドニゼッティ』
6.Alexander Maryianowski(アレクサンダー・マリアノウスキー)/ハロルド・ランダー『Etude』マズルカ

11月10日、男性の部のコンクールが11時30分から開催された。カドリーユからコリフェのコンクールには、男性カドリーユ25名から17名が参加。不参加者は昨年同様そして女性のカドリーユと同様に、在籍年数の長いダンサーおよびコンテンポラリー作品に主に配役されるダンサーたちだ。
1位で昇級を得たロレンツォ・レッリはスカラ座バレエ学校の出身で、エリザベス・パーティントンと同じく外部入団試験の結果、2023年に入団した。彼は昨年の外部入団試験では5位だったが、今年は2位での入団。そして初のコンクールの結果、早くもコリフェへと昇級である。課題曲では最後にバランスを崩すダンサーが少なくなく、彼もひやっとさせるほんの一瞬はあったものの、空間を舞う軽やかさは見る者の目に気持ちよく、手先・足先への細かい配慮もあり他者を圧する出来だった。その結果の自由曲への期待も裏切ることなく、リズミカルでメリハリの効いた『白の組曲』のマズルカを披露した。課題曲自由曲ともに、ジェルマン・ルーヴェのノーブルさとポール・マルクのようなしっかりとした体幹を感じさせるロレンツォ。プリンス役で見てみたいダンサーの久々の出現である。来年の来日ツアーにコール・ド・バレエとして参加するだろうか、と気になる。
2位のテオ・ギルベール。課題曲の『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』は小柄な身体を武器に、安定した回転とソーで最後まで弾けるように軽快に踊った。前回のコンクールで自由曲に選んでいるように自分に合う作品とわかっている彼には、これが今回の課題曲だったのは幸運だったといえる。自由曲では逆に自分の動きを見事にコントロールしている様子が見られた。今後自分が進みたい方向を彼はディレクターたちに示せたのではないだろうか。2014年にオペラ座のバレエ学校に入り、2021年に入団したダンサーだ。

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Lorenzo Lelli(ロレンツォ・レッリ)
Photo D.R.

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Théo Ghilbert(テオ・ギルベール)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

3位のエンゾ・ソガールはフランスのLe Figaro紙のオンライン版の記事で紹介された期待の若手ダンサー中でトマ・ドキール(スジェ)とともに名が挙げられているように、5月にオペラ・バスティーユでモーリス・ベジャールの『さすらう若者の歌』の赤の男役を踊る彼を見た人たちには、すでにカドリーユを超えた存在である。それだけに今回のコンクールの結果は注目されていた。課題曲は彼のお手の物のテクニック満載なので、楽々と踊り、最後の締めもきれいだった。自由曲はコール・ド・バレエとして5月に何度もステージにたった『火の鳥』からのヴァリエーション。確実な作品を選んだようだ。もう少し彼の弾ける踊りが見られる自由曲だったら、と見る方にとっては少々残念ではあったが、腕の動きが見事だった。コリフェとなり、どんな作品で彼の強い個性が生かされてゆくのか楽しみだ。
4位のマリウス・ルビオは2019年に入団して以来、毎回コンクールでは健闘していた。課題曲は最後に少しバランスを崩したが、彼ならではのエレガンスのある動きが魅力的だった。演技者としての可能性を秘めている彼は、今回の『エスメラルダ』という自由曲は良い選択をしたといえる。今後、同世代のダンサーにはない彼の不思議な味わいが生かされる作品に恵まれることを祈ろう。

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Enzo Saugar(エンゾ・ソガール)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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Marius Rubio(マリウス・ルビオ)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

5位のルーベン・シモン。オペラ座バレエ学校で3年学ぶ前に、YAGP銅賞など複数のコンクールでメダルを受賞している。入団は2021年。課題曲、自由曲ともに難易度の高いテクニックを軽々とこなしていた。
6位のアレクサンダー・マリアノウスキーはボストン・バレエ団を経由で、臨時団員としてパリ・オペラ座で踊り、2022年に入団した。長身であり、また美しいテクニックの持ち主であるゆえにステージ上で目を引くダンサーだ。ちょっとしたよろけや乱れもあったものの課題曲も自由曲も、ステージ狭しとのびのび踊る余裕が頼もしいパフォーマンスだった。
昇級はしなかったがRémi Sanger-Gassner(レミ・サンジェ=ガスネール)も健闘していた。公演「ジェームス・ロビンズ」の『The Concert』ではアントワンヌ・キルシェールと交代で配役された、はにかみ屋の若者役を公演。この役では見せられない確かなテクニックを課題曲、自由曲(ルドルフ・ヌレエフ『シンデレラ』の俳優のヴァリエーション)で豊かな音楽性とともに披露。彼もロレンツォ・レッリと同じく今年入団したダンサーの一人だ。

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Rubens Simon(ルーベン・シモン)
hoto Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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Alexander Maryianowski(アレクサンダー・マリアノウスキー)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

●コリフェからスジェ4席
課題曲 ピエール・ラコット『マルコ・スパダ』フィアンセのヴァリエーション
昇級者4名と自由曲
1.Nicola DI Vico(ニコラ・ディ・ヴィーコ)/ マニュエル・ルグリ『ドニゼッティ』
2. Chun Wing Lam(シュン・ウィン・ラム)/ジャン=ギヨーム・バール『ラ・スルス(泉)』第二幕ザイールのヴァリション
3.Alexandre Boccara(アレクサンドル・ボカラ)/ ローラン・プティ『ノートル・ダム・ドゥ・パリ』フロロのヴァリエーション
4.Mickaël LAFON(ミカエル・ラフォン)/ クリスタル・パイト『Body and Soul』アントナン・モニエのヴァリエーション

コリフェからスジェへに4名も上がれるというコンクール。参加した男性ダンサーは16名中の7名だった。カドリーユと違いコリフェとして舞台経験のある彼らは、各自各様の味とスタイルの持ち主である。自由曲は自分を知るセレクションの上、課題曲の『マルコ・スパダ』はピエール・ラコットにしては落とし穴のないヴァリエーションだったせいか、誰がスジェに上がってもおかしくないコンクールだった。
1位で上がったのはニコラ・ディ・ヴィーコだ。臨時団員として3年踊った後2021年に正式入団した彼は、この夏に東京・名古屋・大阪で開催された『ル・グランガラ2023』で来日しているのでその実力は日本のバレエファンも知るところである。日頃のステージでも見せる高いソー、エレガントな身体の使い方など彼らしさを課題曲、自由曲ともに発揮。スジェとなりドゥミ・ソリストとして配役されることも増え、観客の目を楽しませてくれることだろう。
2位のシュン・ウィン・ラムはスジェへの昇級が長く待たれていたダンサーである。
2015年に入団し、途中シリアスな怪我に見舞われたため久しく舞台から遠ざかっていた彼。課題曲は彼の踊りの繊細さを満開させるタイプの作品ではなかったが、自由曲にザイールのヴァリエーションを選んだのは自分の特性をよく知る彼らしい選択だった。

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Nicola DI Vico(ニコラ・ディ・ヴィーコ)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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Chun Wing Lam(シュン・ウィン・ラム)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

3位のアレクサンドル・ボカラは2018年に入団し、2023年からコリフェ。
昨シーズンの開幕作品だったアラン・ルシアン・オイエンの『Cri de coeur』で踊り、歌い、セリフもといった主人公役に大抜擢された彼は、その挑戦を見事に果たした。表現者としての彼の存在は振付家を刺激するらしく、今シーズンの開幕作品の1つのマリオン・モタンの創作『The Last Call』でも主人公に選ばれ、毎晩好演していた。2021年の公演「若いダンサーたち」では『Les Imdoptés』を2位で昇級したシュンと組み、見ごたえのあるステージを作り上げた彼。自由曲の『ノートル・ダム・ドゥ・パリ』では、鋭いつま先と手の平の動きで神父フロロのダークな面をダンスに巧みにこめる作戦が成功したようだ。
4位はミカエル・ラフォン。2007年に入団し、2010年にコリフェに上がった彼にとって13年ぶりの昇級だ。この結果にコンクールに参加しつづけた喜びをかみしめたことだろう。6〜7年くらい前からコール・ド・バレエで踊るクラシック作品より、クリスタル・パイト、アレクサンダー・エクマン、オハッド・ナハリン、ホフェッシュ・シェクターなどのコンテンポラリー作品に配役されることが多い。自由曲に選んだクリスタル・パイトの『Body and Soul』からのヴァリエーションでみせたのは、抒情と力のこもったパフォーマンスで本番の1シーンを見ているようだった。12月は公演¨『イリ・キリアン』の『Sechs Tänze』に配役されている。

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.Alexandre Boccara(アレクサンドル・ボカラ)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

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Mickaël LAFON(ミカエル・ラフォン)
Photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

11月9・10日のコンクールの審査員は以下の通り。
パリ・オペラ座総裁 Alexander Neef
パリ・オペラ座バレエ団舞踊監督: Jose Martinez
パリ・オペラ座バレエ団バレエマスター: Sablina Mallem
フリーランス・バレエマスター:Marina Gielgud
エストニア国立バレエ団芸術監督: Linnar Looris
予備バレエマスター: Charlotte Chapellier
バレエ団審査メンバー: Arthus Raveau, Hugo Marchand, Francesco Mura, Clémence Gross, Charline Giezendanner
予備: Roxane Stojanov, Jean-Baptiste Chavignier

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