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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.08.10]

●好評のサンフランシスコ・バレエ団の野外公演

 <ダンスの夏>フェスティヴァルの第1弾が、サンフランシスコ・バレエ団を招いて、マレ地区の国立古文書館の中庭を会場に7月5日から23日まで開催された。プログラムはミックス・プロ2本と『ドン・キホーテ』で、約2000席の会場は連日満員の盛況だった。

 サンフランシスコ・バレエ団は、ヘルギ・トマッソンが芸術監督に就任して今年でちょうど20周年。1987年に初来日した際もバランシン、ロビンスなど の他、当時まだ日本ではそれほど知られていなかったフォーサイス振付の『ニュー・スリープ』を紹介するなど、近現代のレパートリーの充実ぶりを感じさせた が、今回も近年ガルニエに来演した時に紹介されなかった作品を携え、カンパニーの現在の魅力を余すところなく伝えてくれた。

 第1プログラムは、この フェスティヴァルのために、ポール・テイラー、ラー・ルボヴィッチ、クリストファー・ウィールドンの3人が振付けた世界初演の新作が3本も並んだ。テイ ラーがR・シュトラウスの音楽に振付けた『スプリング・ラウンズ』は、ソリストのクリスティン・ロングと、モンテカルロ・バレエ団から移籍したパスカル・ モラットを若いコール・ド・バレエが囲む形で、軽快かつ健康的な滑り出し。

次のルボヴィッチ作品『エレメンタル・ブルベック』は、ジャズのブルベック・カルテットのサウンドに乗せた、躍動的で力強い作品。ソロを踊ったゴンザロ・ガルシアが抜群のリズム感で際立っていたのをはじめ、スピーディーなアンサンブルが楽しめ、大喝采を浴びた。

『エレメンタル・ブルベック』

 


『カテルナリー』
 最後は、ウィールドンの、四季をテーマにした『カテルナリー』。
プリンシパル総出演のサービスで、冬(ケージ曲)のヤンヤン・タン&ダミアン・スミス、春(バッハ曲)のロルナ・フェイホ&ホアン・ボアダ、夏(ペルト 曲)のミュリエル・マフル&ユーリ・ポーソホフ、秋(S・マッケー)のカティタ・ワルド&ピエール=フランソワ・ヴィラノバと多国籍のスターたちが妙技を 競った。

なお、開演は22時近くで、途中で小雨がぱらついたり、かなりの冷え込み。15度近くまで気温が下がった7、8日の第2プロは中止となり、後日、振替公演が行われた。


 次の第2プログラムは、バランシンとトマッソン作品の夕べ。バランシンの『スクエア・ダンス』(ヴィヴァルディ、コレッリ曲)で幕を開け、ソリストのホ アン・ボアダが安定したテクニックで貫禄づいたのに目を見張った。続くトマッソン振付『7 FOR EIGHT』(バッハ曲、2004年初演)は、8人のダンサーのための7楽章で構成されたもので、男女とも黒の衣裳で、バランシン風のスピード感溢れる動 きを展開するのが心地よい。特に男性の踊りに大技の見せ場がふんだんにももうけられ、第5楽章のモラットが、バリシニコフをほうふつとさせる小気味よいソ ロで気を吐いた。

 3番目の『コンチェルト・グロッソ』(コッレリ/ジェミニアニ曲、2003年)もトマッソンの振付。これはニコラ・ブランを中心にした男性のみ5人によ る作品で、こちらも跳躍や回転といったテクニックがめまぐるしく披露され、見せ場にこと欠かない。今年からソリストになった山本帆介がダイナミックで目を 引いた。

 最後は、バランシン振付『フー・ケアーズ?』(ガーシュウィン曲)。からりとして、いかにもアメリカン。フェッテで盛り上げたクリスティン・ロングをはじめ、軽快なコール・ド・バレエが壮観だった。
 カンパニーの躍動的な持ち味を生かしたこのプロも、選曲が成功した。なお両プロの客席では、ABTのアンヘル・コレーラやマニュエル・ルグリの姿を見かけた。

 サンフランシスコ・バレエの『ドン・キホーテ』は、トマッソンとポーソホフの共同演出、振付で、2003年に初演された。クレジットによれば装置と衣裳 は、デンマーク王立バレエ団のものだそう。2幕仕立ててマイムは少なく、まるでミュージカルを見るように、次から次へと踊りが繰り広げられていくのがアメ リカ的といえようか。

 最終日にキトリを踊ったティナ・ルブランはベテランで、小柄だが達者なテクニックで沸かせた。バジルはスペイン人のガルシアで、役にはまり、技も荒削り ながら、ダイナミックで人気を集めた。ジプシーの長を演じた山本帆介、森の女王のヤンヤン・タン、メルセデスのミュリエル・マフルなどソリストもそろって いたが、とりわけオペラ座バレエ学校出身のマフルは、長身の見事なプロポーションとオペラ座仕込みのスタイルで、別格といった感じ。

 カンパニーのダンサーの国籍はおよそ12カ国にまたがるというが、これだけ多彩なダンサーたちを擁するカンパニーを、監督のトマッソンはよくまとめている。フェスティヴァルの第1回は好評のうちに幕を閉じ、次回への期待をふくらませてくれた。