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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.05.10]

●シャンゼリゼ劇場でギエムの<ラッセル・マリファントの夕べ>

 昨年日本でも上演されたシルヴィ・ギエムとウィリアム・トレヴィット、マイケル・ナンのトリオによる<ラッセル・マリファントの夕べ>がようやくパリにも到来した。  公演は4月14日から18日までシャンゼリゼ劇場で行われ、題して<1two 3>。

公演は、ナンとトレヴィットのデュオ『トーション』で幕を開けた。  子供の声や爆撃音のような具体音のコラージュの中で、体をひねったり、アクロバティックな動きが繰り返される男性同士のデュオは、プレルジョカージュの『ある関係』をふと思い起こさせる。  たまたま会場にはプレルジョカージュの姿も見られたが、作品の乾いた雰囲気にどこか共通したものを感じる。 野性味あふれるデュエットは、見応えがあり、ライトが落ちると、会場から盛大な拍手がわき起こった。

『TWO』と題されたギエムのソロは、聞いてはいたが、ちょっと『ボレロ』をほうふつとさせる。 研ぎすまされたギエムの上体や腕が空間を容赦なく切り裂いていく。  ギエムが追求してきたシンプルな美しさが凝縮されたような作品だ。


 最後を飾ったトリオ『ブロークン・フォール』では、ナンとトレヴィットの間を、まるで宙を泳ぐように行き来するギエムの自由自在さに驚嘆させられた。  かなりスリリングな場面もあるが、ギエムだと絶対の安心感がある。 ギエムは踊るたびに常に新境地を切り開いてきたが、果敢な挑戦はとどまることを知らないようだ。

 作品の時間は、三つ合わせても1時間足らずだったが、非常に密度の濃い夕べで、トリオの熱演に、客席から惜しみない拍手が送られていた。

 なお会場では、3月に出版されたばかりのギエムの写真集<INVITATION>が販売されていた。日本でも発売になったことと思うので、説明は必要ないかもしれない。  未公開の写真(ほとんどジル・タピの撮影によるもの)を中心とした、ギエムの40年間の舞踊人生の集大成と言えそうな充実した内容で、80ユーロ(6月頃までは65ユーロ)というお値段といい、 4キロを越す重さ、そして本棚に納まりきれない大きさといい、すべてが破格のスケールである。

 なお、来シーズン同劇場の開幕として、9月9、10日、牧阿佐美バレエ団が来演し、ローラン・プティ振付の『ピンク・フロイド』を上演する予定だ。  出演はルシア・ラカッラ、シリル・ピエール、リエン・チャン、草刈民代、菊地研ほか。