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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2016.11.10]

パリ・オペラ座バレエ団、新シーズンの幕開けはペック、フォーサイス、パイト、セガールの4作品が上演された

Ballet de l’Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団
« In Creases » Justin PECK, « Blake Works I » William FORSYTHE, « The Seasons’ Canon » Crystal PITE, « (sans titre) » Tino SEHGAL
『イン・クリーシズ』ジャスティン・ペック:振付、『ブレイク・ワークスI』ウイリアム・フォーサイス:振付、『ザ・シーズンズ・カノン』クリスタル・パイト:振付、『(無題)』ティノ・セーガル:振付

パリ・オペラ座バレエ団のシーズン最初の公演が、9月26日から10月9日までガルニエ宮で行われた。今シーズンからはオーレリー・デュポンがバレエ監督を務めているが、プログラムはバンジャマン・ミルピエ前バレエ監督が作成したものだ。
この公演は舞台での上演一時間前に、グラン・ヴェスティヴュール、グラン・フォワイエ、サロン・デュ・グラシエ、ガラリー・デュ・グラシエの四か所でティノ・セーガルが振付けた4つの作品が、若手ダンサーたちによって演じられて始まった。すでに昨シーズンに、ボリス・シャルマッツが行ったのと同じ試みである。

pari1611a_01.jpg 『イン・クリーシズ』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

舞台で上演された4つの作品のうち最初に演じられたのは3月にガルニエ宮で世界初演があった、アメリカの若手振付家ジャスティン・ペックの『イン・クリーシズ』だった。
舞台後方に置かれた二台のピアノによるフィリップ・グラスの音楽をバックに男性4人、女性4人が踊った。幾何学模様がダンサーたちによって形作られる、明快に構成されたネオクラシックの作品は見た目に心地良い。オニール 八菜の元気な姿も見られた。充実していた昨シーズンに勝るいっそうの活躍を、今シーズンもまた見せてもらいたいものだ。
これに続いたのは7月に世界初演があったフォーサイスの『ブレイク・ワークスI』だった。英国のポップ音楽の作曲家ジェームス・ブレイクのアルバム「The Color in Anything」から選ばれた7曲を使い、パ・ド・ドゥが二つあるクラシックな振付だがヒップホップも取り入れられている。この舞台で勢いが感じられたジェルマン・ルーヴェは、11月4日に行われた年次昇級試験でプルミエ・ダンスールに昇格している。女性ではレオノール・ボーラックがなめらかな動きを見せ、リュドミラ・パリエロに闊達さが感じられた。

pari1611a_02.jpg 『ブレイク・ワークスI』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_06.jpg 『ブレイク・ワークスI』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_03.jpg 『ブレイク・ワークスI』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_04.jpg 『ブレイク・ワークスI』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_05.jpg 『ブレイク・ワークスI』(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris 
pari1611a_09.jpg 『ザ・シーズンズ・カノン』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

休憩後の後半は待望のカナダの振付家クリスタル・パイトの新作『ザ・シーズンズ・カノン』が演じられた。54人のダンサーを使った35分の規模の大きな作品で、全員が灰色っぽいズボンに上半身はほぼ裸という恰好で、首に緑色の入れ墨の様なボディメイクをして登場した。
「地球のプレートの移動にインスピレーションを得た」そうだが、雪が舞ったり、照明によって黄昏を思わせる光が射したり、鉱物界、植物界、動物界を現したヴィデオを背景に映写したりすることで、古代の儀礼を思わせるような不思議なスペクタクルを作り上げた。ヴィヴァルディの「四季」を編曲したマックス・リヒターの音楽も効果的だった。列をなしたダンサーたちが一つの巨大な「獣」が波打つように動くかと思うと、デュオやソロの部分もあったが、マリー=アニエス・ジロやリュドミラ・パリエロ、フランソワ・アリュらが個性を発揮し、観客からは大きな拍手が送られた。
最後の作品は1976年ロンドン生まれのティノ・セーガルが振付けた「無題」だった。天井の照明が点滅したり、幕が上下して舞台の一番奥を見せたりした後で、客席に点々とダンサーたちが立って、「私の動きに合わせていっしょに踊って」と観客に呼びかけた。舞台上の公演を客席の観客が見る、という原則を打ち破ろうとした試みで、ダンサーの身体が身近にあるという新しいシチュエーションが生まれたが、観客の評価は分かれた。
初日には恒例のデフィレが行われ、フィガロ紙のアリアーヌ・バヴリエによれば、「フランソワ・アリュ、ユゴー・マルシャン、オニール 八菜、レオノール・ボーラックに特に大きな拍手が送られた」という。この人気のプルミエール・ダンスールの中から間もなく新たなエトワールが誕生するかもしれない。
(2016年10月9日マチネ ガルニエ宮)

pari1611a_07.jpg 『ザ・シーズンズ・カノン』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_08.jpg 『ザ・シーズンズ・カノン』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_10.jpg 『ザ・シーズンズ・カノン』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_11.jpg 『ザ・シーズンズ・カノン』
(C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris
pari1611a_12.jpg 『ザ・シーズンズ・カノン』 (C) Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

『イン・クリーシズ』
音楽 フィリップ・グラス
振付 ジャスティン・ペック
照明 マーク・スタンレー
ピアノ エレナ・ボネ ヴェッセラ・ヴェロフスカ
ダンサー ヴァランティーヌ・コラサント オニール 八菜 イダ・ヴィキンコスキ オーバーヌ・フィルベール ヴァンサン・シャイエ マルク・モロー ダニエル・ストークス アレクサンドル・ガス
『ブレイク・ワークスI』
音楽 ジェームス・ブレイク
振付 ウイリアム・フォーサイス(2016年7月4日 パリオペラ座バレエ団により初演)
衣装 ウイリアム・フォーサイス ドロテ・マーグ
照明 ウイリアム・フォーサイス タニヤ・ルール
音声エンジニア ニールズ・ランツ
(音楽は録音を使用)
ダンサー 
Forest Fire リュドミラ・パリエロ レオノール・ボーラック ロクサーヌ・ストヤノフ、他
Put that away マリオン・ゴーチエ・ド・シャマセ カロリーヌ・オズモン パブロ・ラガサ
Color in anything レオノール・ボーラック フランソワ・アリュ
I hope my life リュドミラ・パリエロ レオノール・ボーラック ユゴー・マルシャン ジェルマン・ルーヴェと全員
Waves know shores シルヴィア・サン=マルタン シモン・ヴァラストロ マクシム・トマ、他
Two men down ユゴー・マルシャン ジェルマン・ルーヴェ ジェレミー=ルー・ケール グレゴリー・ガイヤール パブロ・ラガサ ポール・マルク マクシム・トマとその他全員
Forever リュドミラ・パリエロ
『ザ・シーズンズ・カノン』(世界初演)
音楽 マックス・リヒター(音楽は録音を使用)
振付 クリスタル・パイト
装置 ジェイ・ゴーワー・テイラー
衣装 ナンシー・ブライアント
照明 トム・ヴィッサー
ダンサー マリー=アニエス・ジロ エヴ・グリンツテン エレオノール・ゲリノー リュドミラ・パリエロ アリス・ルナヴァン フランソワ・アリュ アレッシオ・カルボーネ ヴァンサン・シャイエ アドリアン・クヴェ アレクサンドル・ガス アクセル・イボ マルク・モロー ダニエル・ストークス他
「(無題)」世界初演
音楽 アリ・ベンジャミン・マイヤーズ
振付 ティノ・セーガル
音声エンジニア トーマス・リン
ダンサー カロリーヌ・バンス アレクソンドラ・カルディナル ロクサーヌ・ストヤノフ ヴィクトワール・アンクティル アネモーヌ・アルノー ジュリア・コーガン、他