ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2016.10.11]

カナダの先鋭なダンス・グループ、ザ・ホーリー・ボディ・タトゥのサイズの異なる台を使ったユニークなダンス

The Holy Body Tatoo ザ・ホーリー・ボディ・タトゥ
“monumental” by Dana Gingras & Noam Gagnon
『モニュメンタル』ダナ・ジングラス&ノアム・ガグノン:振付

今年のBAMネクスト・ウェーブ・フェスティバルに招聘されたザ・ホーリー・ボディ・タトゥの『モニュメンタル』の公演が、9月16、17日にBAM Howard Gilman Opera Houseで上演されました。
出演ダンサーは11名で、これはダンスと一言で言えないほど、前衛的な作品でした。出演ダンサーたちは、鍛え上げられたダンサーらしい肉体でした。始まってしばらくすると、きっと理解できない様子で、席を立って出ていった観客も何名かいました。ニューヨークの観客は特に、観劇している作品が好きではないことが分かってくると、すぐに席を立って出て行く人が多く、好きではないのに無理して最後まで観るほうが時間の無駄だと考えるのでしょう。
BAMには世界中から斬新なダンスカンパニーがたくさん招聘されるので、興味深く、楽しみにしています。

ny1610d_01.jpg Photos:「Monumental」(C) Jack Vartoogian

ザ・ホーリー・ボディ・タトゥは、カナダのモントリオールを拠点としているダナ・ジングラス(Dana Gingras)とノアム・ガゴン(Noam Gagon)が、1993年に作ったカンパニーで、カナダのダンス界の様相を変えて、ステージ、映画などで数々の賞を受賞しました。1996年には、the Dora Mavor Moore Awardのザ・ベスト・アンサンブル・パフォーマンスを受賞。カナダをはじめ世界中で公演してきました。ピナ・バウシュの招待でドイツのヴッパタールのEin Festにも出演しました。さすがピナ・バウシュは、このようなカンパニーが好きだったのだろうなと、よく分かる気がします。

この作品のプロデュースはアニマルズ・オブ・ディスティンクション(Animals of Distinction(AOD))です。AODはザ・ホーリー・ボディ・タトゥのサテライト・カンパニーとして2006年に作られました。
この『モニュメンタル』は、2005年にオタワのナショナル・アーツ・センターでプロデュースされた作品で、オリジナルヴァージョンは2005年2月初演です。このプロジェクトが2005年から、11年の時を経て、今年2016年に再演されました。

ダナ・ジングラス(Dana Gingras)は、振付家、映像作家、パフォーマー、教師として25年間、活動。ノアム・ガゴン(Noam Gagon)は振付家で、2006年にカナダのバンクーバーで作ったVision Impureで芸術監督をしています。ガゴンはこのVision Impure中で、制作、振付、パフォーマンスをフルレングス作品で行っています。様々なアーティストたちとコラボレーションしており、ザ・ホーリー・ボディ・タトゥでは16年間、副芸術監督を務めています。

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この公演はバンドの生演奏つきでしたので、録音とは違って音楽的にも素晴らしかったです。バンドのGodspeed You !  Black Emperorは90年代初頭頃から3名で始め多くのショーや録音で演奏してきました。そして、トリオから、大所帯のバンドへと変えていきました。
舞台後方で大所帯のバンドが生演奏しており、後ろには映像が映し出され、舞台前半部分でダンサーたちが踊りました。
舞台前半には、少しずつ高さの違う同じ縦横サイズの四角柱のような台がダンサーの人数分置かれていました。その四角柱の上の部分は正方形で、縦横の幅は50cmくらいありましたが、ダンサーたちはそれぞれその小さな台の上に立ち、動いて表現していました。脚はあまり動かせないため、ほとんどが、上半身を激しく使って踊っており、特に重心を取っている側の足はあまり動かさずに、全身を使って踊りました。かなり長い間、ダンサーたちはその台の上で動いていましたが、途中から一人ずつ、また数名で、時々床の上に下り始めました。
だんだんと数名ずつ床の上に立って踊り始め、やがて全員が床に立って踊りました。寝そべったり、座ったり、立ち上がったり、上下に大く幅を使って動きました。
激しい感情、苦しみの感情を表現したような踊りが多かったです。
途中、舞台の照明が消え、3人のダンサーがじっと立ったままで、強く発光するサーチライトを手に持って、動かしました。
客席に光を当てたり、劇場の壁や天井にもライトを当てていました。ぐるっと同じ方向へライトを当てていき、それを繰り返したり、舞台後方のもう何も無いところにもライトを当てていったりしました。面白いアイデア、演出でした。
休憩なしの1時間25分ほどの作品で、台の上で長く踊り続けるという、制約がある中でのダンス作品でしたので、一味違っていて面白かったです。独自性を追求した作品で、個性があって良かったです。
(2016年9月17日夜 BAM Howard Gilman Opera House)

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ny1610d_10.jpg Photos:「Monumental」(C) Jack Vartoogian